第02話 扉の向こう…
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私は、レム先生から信じられない事を聞かされた。
まあ、でも、私は信じられないとは、思わない。
だって、ダイバは私の目の前に現れたのだから……。
そうだ、私はリュウを心配して病院まで来たんだ。
この事はリュウにばれないようにしなきゃ。
ばれるかもしれないけれど……。
306号室の病室扉を開けるリズ。
「リュウ、大丈夫?」
「あ、リズ。来てくれたんだ」
「当然でしょ。クラスメイトなんだし」
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「あのね。ダイバとのかかわりの事を話しておきたいって」
「え?話したくない事は話さないで……」
「ううん!リュウならきっと話しても大丈夫だって、思うんだ。」
リズは悲しい顔をして、僕に話し始めた。
「私とダイバは、小さいころからの幼なじみだったんだ」
―――。
私とダイバは、いつも一緒だった。小さいころから家も近かったし。
私とダイバは約束したの。
「オレと、リズ。2人でさ一緒に魔法使いになってさ。一緒に世界を旅しようってのはどうかな?」
「一緒に!?いいの、私なんかで」
「ああ、2人で、世界地図を描こう」
「うん!」
オレンジ色に染まった夕日に照らされた草原。
2人は小指と小指で指切りをする。
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―――。
「それで、2人は一緒に?」
僕はリズに聞くと、
「でも、私が10歳を迎えて、町からの“おきて”によって私は、独り立ちをしなければならなかった」
「そんな“おきて”があるの?」
僕は驚いた。10歳だなんて。そんなころから独り立ちだなんて。まだ、親と離れたくない時なのに。
「でも、私は、もともとお母さんの知り合いの寮を紹介されたから別に、全く知らない所じゃなかったし。」
「そうだったんだ」
「ダイバはその時にはいなかったんだ。勝手に独り立ちしたって聞かされたから。私は全く居場所は知らなかった」
リズは制服の右胸ポケットから1枚の紙切れを広げる。
そこには、魔法学校入学許可願いだった。
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実は、全地方共通で、12歳を過ぎたら、魔法学校入学許可願いが届けられて、自分の意思があれば、入学金が無くても試験に受ける事が出来る。
でも、僕はその時は、自分の意思なんて全くなかった。
「だから、私、勝手に学校に入学したんだ。ダイバもきっと入学しているはずだと思っていたけど。」
「思っていたけど?」
「ダイバは入学なんてしていなかった。むしろ、ダイバは敵の軍隊にやられたって噂も流れていたけど」
「……。」
僕はただ、黙っているしかなかった。リズは悲しい心の声を、今、話しているのに……。
「ダイバにね。裏切られた時、人は簡単には信じちゃいけない!って心に強く誓ったんだけど、リュウに出会ってから、ちょっと変わってきたかな?」
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「……僕なんか、ダメだよ」
「ダメなんかじゃないよ!」
「僕は、理由は分からないけど、皆から避けられていたんだ」
「避けられていた?」
僕は、リズに全てを話した。
僕は、何が原因なのか分からないけど、皆から避けられてきた。だから、小学校は最初の3カ月だけ登校して、後はひきこもりになってた。
でも、僕のおじいちゃんが8歳になった時に、天国に行ってしまい、おじいちゃんは、僕に言ってくれたんだ。
学校に行かなければ一生あのままだと言うこと。そして、そのままでは未来の扉の先は開けないと。
でも、その言葉がおじいちゃんとの最後の会話だった。
今となっては、謝りたい思い出となっているけど。
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「だから。僕は、皆と一緒に上手くやっていけるのか不安だし、この先の学校生活も不安で仕方が無いんだ」
「……リュウ」
「生意気だよね……今まで学校なんか行かなかった僕が、今頃になって行きたいって思うのも」
「ううん。そういう事って大事だと思う!」
「そうかな?……僕、このまま病院に居たいって思うんだ」
「リュウ君はこのままでいいのかな?」
僕の病室から扉を開けたのは、校長先生だった。
僕とリズは校長先生が来た事に驚く。
「私は、どうしても君が学校に来てほしいのだよ」
「どうして、校長先生は僕を入学させたのですか?」
僕は、校長先生に思い切って質問をしてみた。
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「正直に話さなければならなければいけないとは思っていたが。ちょうど、リズ君も一緒だから2人に伝えておこうと思う。」
そして、あれから僕は3日間病院で入院していた。
その2日後に学校が再開された。
僕は学校生徒たちには、事故にあったという形で話が通り、ダイバという男に重傷を負った事は秘密と言う形になった。
そして、学校が再開した。僕は1-D教室の扉の前で立ち止まる。
僕は、何食わぬ顔で堂々と皆の前に姿を現していいのだろうか?
僕のせいで、学校が遅れてしまった。
僕のせいで、皆に迷惑をかけてしまった。
僕のせいで、僕のせいで。
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すると、僕の後ろから方に手を載せて
「リュウ、大丈夫だったか?」
「俺たち、心配してたんだ!」
後ろから声をかけてきたのは同じクラスメイトのようだ。
「あ、自己紹介まだだったな!俺はジン。で、俺の横にいるコイツが…」
「俺はウリッド。よろしく!」
「はあ……」
僕は、ちゃんとした返事が出来なかったけど。
でも、小学校のころのような悪い人では無さそうなのは確か。
まあ、見た目はね。肝心なのは中身。僕は外見が優しそうな人でも、大人になっていくにつれて、悪い人になっていく姿を見てきた。
だけど、僕は本当の“友達”・“仲間”という人達を作りたい。
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それが、今の僕にとっての夢でもある。
そんなこんなで、僕は教室に入る事が出来た。これもジン君とウリッド君のおかげ。
すると、ジン君が僕に話しかけてきた。
「なあ、お前ってもしかして、漆黒の騎士団とかに目指してたりする?」
と、ジン君が僕に聞いてきたけど、
「え?漆黒の騎士団?何それ」
僕は、聞いたことが無いから聞き返す。
「ほら、やっぱり、目指してるのはジンだけだって」
ウリッド君が言った。
「漆黒の騎士団は、魔術師達が憧れる軍団だよ!はー。俺もあんな風になれたらいいなあ」
ジン君は頭の中できっと漆黒の騎士団になったことを想像しているのだろう?すごくうれしそうな顔をしている。
「でも、俺たちはそんな物騒なものになるために学校に学びに来てるんじゃないからさ」
ウリッド君が言った。
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「漆黒の騎士団って物騒な軍団なの?」と、僕は2人に聞いた。すると、ウリッド君は
「それがさ、今では、優秀な魔術師、いわゆる最優秀魔術師って称号を持っている人達を倒すために動き出しているって噂だからさ、今では物騒な騎士団って別名も付けられているほどなんだ」
「へえ。」
僕が言うと、ジン君は、
「違うぞ!絶対、俺たち見たな未熟者が断然強くなれる場所なんだって!」
そうジン君が言うと、
「あんたたち、そんなものどこがいいの?」
と、女の声で話しかけてきた。
眼鏡をかけた少し怖そうな人だ。腕を組み、堂々とした立ち姿は女の子では無さそうな感じに。
「あんたたちは、悪魔にでもなりたいの?」
「悪魔?何言ってるんだ、アヤメ」
話しかけてきた女の子はアヤメという女の子だった。
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「あんな軍団、人殺し大好きな溜まり場よ……」
一瞬アヤメちゃんは、ものすごく悲しく暗い顔をした。
僕は、きっと何かあったんじゃないかと思った。でも、僕はもう、人の心配をしても探らないと誓った。
そう、リズのように人の気持ちもそれぞれだから。
すると、ラム先生が教室にやってきた。
「はい。皆さん私語はそれまでにしてください。授業を始めます」
レム先生は不思議なウサギのような石像を持ってきた。でも、見た感じは白いウサギだ。
一体何を始めるんだろう?
黒板に白いチョークで『属性を見極める』と書く。
皆、ザワザワと騒ぎ始める。
「はい、皆静かに。これから皆には自分が扱うことのできる魔法の属性を知ってもらいます」
すると、1人に1つのナゾの白いウサギの石像が置かれる。
皆は興味しんしん。
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すると、レム先生は教壇の上に立って、
「今から、この白いウサギの石像。いわゆる『虹色兎像』に自分の聞き手で触ってもらいます」
レム先生は、魔法の属性には≪烈火・流水・風森・地動・雷撃・斬盗≫とあると。
そして、僕とリズは校長先生から聞かされていた。
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「リュウ君は実技を、リズは筆記を確かに基準値よりも下回っていた。しかし、リュウ君と、リズ君の2人には“希望”という力を秘めていると私は見込んだんだ。だから、私は君たちを不合格にはするなと審査員に言っていたんだ。きっと、最初の魔術の授業で分かると思うよ」
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そう、あの時に言われていた。
僕と、リズは何のことなのかさっぱりわからなかったけれど。
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「ウサギに触れると、属性に応じて色が変化します。自分の属性を知った上でそれぞれのクラスに分かれて学ぶことになります。」
とレム先生は言うけれど、僕とリズの他にも、さっき声をかけてくれたジン君。ウリッド君。そしてアヤメちゃん。の所には先生はウサギの像を置かなかった。
すると、ジン君は、
「先生、なんで俺たちにはその石像を置かなかったんですか?」
「ジン君。良いところに気付きましたね?」
と、レム先生が言うと、
「良いところですか?」
と、ウリッド君が言った。
「実は、今石像を置かなかったリュウ君。リズ君。ジン君。ウリッド君。アヤメ君。以上、この5名は通常魔属に適応されないため、別プログラムでの授業となります。」
「え?私たち、皆と違う授業になるんですか?」
「ええ。あなたたちは、全く違う教室で受けてもらいます。」
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「何だよ!結局俺たちは仲間はずれかよ……」
何だろう。ウリッド君が、そうつぶやいた時、僕はその事を気にしてしまった。
結局、校長先生は“希望”って言ってきたけれど、最終的には仲間はずれにされるんだって。
僕たち5人は教室に取り残され、後の皆は、実際の魔術教室へと移動していった。
僕は、逆になんではずされたのかなんて反抗しようとは思わなかった。
だって、僕は皆とは違う。基準以下の人間には変わりない訳だし。
「まあ、でもリュウやリズと一緒のクラスだったって事でも感謝だな」
そう、ジン君が言った。
「うん。そうだね。僕もジン君やウリッド君……」
「ストップ!俺たちはもう、友達なんだから呼び捨てで構わないぜ」
「え、友達……?」
「そうだろう?もう、顔見知りなんだからさ」
本当にそうなのだろうか?顔見知りだから友達とよべる中なのだろうか?
僕は、急に怖くなった。
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「リュウ。ねえ、ジン達にも話しておかない?」
リズがそう、声をかけてくれた。僕は自分の口から3人に話した。
僕がどういう日々を送ってきたのか。
でも、3人は嫌な顔をなに一つ見せなかった。
「俺たちもそうなんだ。俺も、ウリッドも学校ではさこう見えてもいじめられてたんだ。」
と、ジンも心の中にある闇を。
「俺もさ、なんで学校なんて行かなきゃいけないんだろうってさ、行くの嫌だったことの方が多かったな」
と、ウリッドも。
「あたしも、皆から見たら強気な性格だと思われているけど、本当はいじめられるのが怖くて、強がってるだけなんだよね。ジンやウリッドに喧嘩売ってたのも、いじめられるのが嫌だったんだ」
と、アヤメも続けて言う。僕はきっとアヤメも僕と同じなのかもしれない。
「アヤメ……、大丈夫。私は、普段のアヤメで良いと思うよ?」
と、リズが言うと、アヤメも笑顔で
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「ホントに?……じゃあ、いつも通りにするね」
眼鏡をはずして、すごくうれしそうな笑顔で言うアヤメ。なんか最初に見た時とは違う。
本当に別人みたいに変わる。人って眼鏡をはずすだけで、こんなにも違うんだ。
「ところでさ、僕たち、これからどうしたらいいんだろう?」
と、僕は言った。
「そうだよね。私たち、このままって訳にもいかないだろうけど?」
「確かに、あたし達、まさか、授業受けられないってわけじゃないよね?」
リズと、アヤメが言った。すると、教室の扉は閉めてはいなかったので、先生が突然入ってきて、
「そんなわけないだろう?」
すごく怖い男の声で言う。
僕たちの制服は、紺色と黒色の2色で出来ているけれど、この先生は、本当に真っ黒。と言うか、黒い悪魔のように。
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怖い顔立ち。もう、すでに、にらまれているかのようだった。
「俺たちの担当って先生ですか?」
ウリッドが聞くと、
「お前たち2人は、授業とかまともに聞きそうにないな!」
そう指を指して言う。すると、それを聞いて
「見た目で、俺たちを判断してほしくないな」
ジンはそう言う。
すると、先生は目にも見えないスピードで、ジンの首下あたりの制服をガットつかみ、とてつもなく怖い顔をして
「そういうお前みたいな生意気そうな態度は魔法学校を学ぶ資格は無い。今すぐにでも、殺してしまっても良いんだぜ!」
ジンは先生の顔を見て怯えたのか、手先がふるえているのが分かった。というよりも、僕も皆も、それを見て震えていた。
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そして、そのまま先生は僕の方を指さして
「それと、お前、お前みたいな弱っちいやつが来ると、俺たちの学校の評判も下がるんだよな」
僕は、何も言い返せなかった。
だって、本当の事だったから。すると、リズが
「先生、言ってもいけないことだってあると思います。人が傷ついてしまうような言い方も……」
「お前みたいな、いい子ぶってる奴なんかに、俺に口出しする権利は無いな!」
「……!」
リズも、右腕を力強く握りしめている。僕には分かった。相当傷つき、頭にきてるって。
すると、先生は壇上に上がり、
「いいか、半端な気持ちで来るな!それでも来たいってやつは、俺がぶっ殺す!!」
この教室だけ嵐のような天気がやってきた感じだった。
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その夜。
今日から学生寮に泊まる事になり、僕たち5人は特別学生だから、寮も皆とは違う寮での生活になった。
もちろん、男女別々で。
僕は、テラスに出ていた。するとジンが僕に
「あいつの言ったこと気にすんなよ!」
って言ったけど、僕は、
「ううん。僕は悔しかった。」
「悔しかった?」
とジンが言うと、僕は、
「うん。あの先生に言われたとおりだったから。僕は自分を変えた言って軽い気持ちだけでこの学校に入学してきた。もちろんさっき話した通り、基準値以下の人間として。」
と、言った。でも、ジンは
「でもさ、あいつ。悪口ばっかで、絶対勉強とか教えてくれなさそうじゃん?」
「やっぱり、僕。辞退した方がいいのかな?」
僕が、言うと、
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「そんなこと言っちゃだめだぜ」
ウリッドが言ってきた。
「まだ、学校に来たばっかだし、俺たちも始まったばっかり。まだ先にも進んでないのに辞退は早すぎるって!」
と、ウリッドが言うと
「だったらさ、校長とかに言えばいいんじゃないか?」
と、ジンは案を出すが、
「そんな簡単に信じてくれると思うか?」
とウリッドは疑心暗鬼にこたえる。
でも、そんな校長先生もーーー。
「なせ、あの子たちにひどいことを言ったんだね?ボワード先生」
「あいつらのような弱い存在の人間に俺の授業を教える権利は無いですよ!」
すると、校長先生は、十字架をボワード先生の足元に出現させ、身動きできなくする。
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「ほお…。まさか校長先生が『聖火使い』だったとは?」
ボワード先生がニヤける表情で言う。
「君には使いたくなかったが、仕方が無い……」
「大丈夫ですよ。校長。こんな学校はもとから辞める気でしたから……」
そう言って、ボワード先生は校長机に向かって“退職届”を出す。
校長先生はその手紙を手に取り、
「君、本気で行っているのかね?」
「ええ。このようなお人よしな学校にいては、私の能力が腐ってしまいますからね……」
「確かに、君は『悪魔使い』だと言う事はよーく知っている。しかし、君のような避けられた能力には行く場所なんて無いに等しい」
校長先生は必死にボワード先生を学校にとどめようと説得する。しかし、ボワード先生は
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「私は、もっと暴れる学校に行きますよ」
そう言って、十字架を力ずくで破壊し、窓のガラスを割ってそのまま空中浮遊しながら去っていく。
「なぜ、人をいじめたがるのか、私には理解出来んよ……」
校長先生は、一つの写真立てを見て、そうつぶやいた。
ーーー教室には、割れた窓から風が入ってくる。
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ーーー僕は、外のテラスに出ていた。
すると、後ろからアヤメがやってきて
「ねえ、リュウ。」
「?…何、アヤメ?」
すると、アヤメは少し間をおいてから口を開き
「リュウはさ、どうしてこの学校を受けようと思ったの?」
「え?」
僕はその質問にたいして返事をする。
「だってさ……強くなりたいとか。あいつらみたいに、軍隊に入りたい。とか。そういう感じじゃないよね。話しだと自分を変えたいって?」
「僕ね。おじいちゃんが魔術使いだったんだ」
「おじいちゃん?」
「うん。僕のおじいちゃん、マルフェードって言うんだけど……」
そういうと、アヤメの表情が180度変わり、
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「マルフェードって、魔法の生みの親でしょ?そんなすごい人の孫だったんだ!君ってすごいよ!」
「あ、ちょっと待って。勝手に、その、盛り上がらないでくれる?」
「え?なんで?すごい事だよ!?」
「でも、その魔法の生みの親でもあるおじいちゃんは、国に狙われるようになった。いつも帰ってきてた時間になっても、帰ってこなくて……。そして、結局、魔法を全て封印して天国に行っちゃった……」
「そう、なんだ。でもさ、なんで狙われたの?」
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「それが、僕にもお母さんにも知らされないまま行ったから。詳しくは知らなくて。でも、人々を守るために作ったっていつも言ってた。でも、その時はまだ、おじいちゃんが生みの親だなんて知らなかったし」
空を見上げると、そこには無数の星が輝いていた。
そして、月の光に照らされながら……。
すると、アヤメが
「あたしね、あいつら2人に話したこと覚えてる?」
「え?確か、人殺しが大好きな軍団だっけ?」
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「そう。」
そのあと、思い出したくないかのような重たい表情をして話し始めたアヤメ。
「あたしね、その漆黒の騎士団に家族全員、殺されたの」
「殺された……?」
僕は、体中が震えた。ジンとウリッドが憧れているという軍団は裏では殺し屋。
「うん。だから私は、仇を取りたくて魔法を学ぼうと決意したんだけど、」
「したんだけど…?」
「いざとなったら、怖くなってきて。あのボワードって先生が言ってた、弱い奴なんか学ぶ権利は無いってあたしはその通りかもねって。私は、仇を取りたいって強気もちがあっても、心の中は、すごく、怖いんだ。手の震えが止まらないほど。で、リュウが辞退したいって言った時、私もしたいなって思ったの」
アヤメはそんなこと言うけれど、僕は必死になって
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「ううん。アヤメは僕と違ってちゃんとした理由があるから良いよ。僕みたいに中途半端な気持ちでやってきたから、ボワード先生にも言われたんだなって。なんか、言い返せなくて。本当の事だし」
「ねえ、2人して一緒に辞任しない?今なら罰則とか無いから!?」
「うん……?。?。罰則って!?」
僕は、この学校の事を詳しくは知らない。というか、知っておかなくちゃいけないんだけどね。
「ある程度学んでからやめようとすると、そのままもう、二度と魔法を使う事ができなくなるんだよね。」
「そうなんだ」
「だから、今のうちならって」
すると、後ろから聞き覚えのない声が聞こえてきた。
「へえ、お前ら辞退するのか?」
「だ、誰?」
アヤメが声がした後ろの方を振り返る。僕も一緒に振り返ると、Dクラスだった人達だ。話した事は無いけれど、顔は覚えてる。
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「お前らがいなくなれば、標的は少なくなるな」
「標的って何のこと!?」
「お前ら聞かされてないのか?」
そう言うと、もう一人の男の子が、
「バトルロワイヤルだよ。今から上級生に上がるために、見殺しが始まるんだ」
「ちょっと、待って!!見殺しって何?」
僕は言った。すると、続けてアヤメも
「そうよ。仲間を作るってこの先も必要な事でしょう?」
「は!?何言ってるんだよ。お前らバカだろう?上級生に上がるためにはクラスメイトとか関係ない!自分が生き残るためには、上にはい上がるためには、弱者を踏み台にしていかなくちゃイケないってことだよ!」
「お前らは、勝手に仲間ごっこでもやってな」
2人は、高笑いをしてこの場を去っていく。
すると、リズが慌てた様子でこっちに走ってくる。
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「ちょっと、リュウ。アヤメ。大変!」
「どうしたの?」
あんな話を聞かされた後だ。すごく、不快な気持ちだった。
「今、クルドーム先生っていう上級生の先生が学校の改新で、バトルロワイヤル形式に変更するって!」
すると、アヤメがすごく不機嫌な様子で
「知ってる!」
「どうしたのアヤメ、そんなに怒って?」
「僕たちも、さっき上級生から聞かされたんだ……弱者を踏み台にして上にはい上がらなきゃいけないって……」
「うそ。上級生たち、情報来るの早っ!」
リズが驚いていると、眠たそうな顔をしてジンとウリッドがやってくる。
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「どうしたんだ?みんなしてさ。お前ら、眠れないのか?」
ジンが言うと、ウリッドが
「なんか、この階が騒がしい感じがしてたけどさ?」
と言うと、リズが形式が変更になったこと等を話した。
ジンと、ウリッドは深刻な顔をして下を見つめた。
「うそだろう……?」と、ジンが言い。
「まさか、この学校が方針を変えられてしまうとは」
「ねえ、ウリッドはこの学校の事とか詳しいの?」
僕は言った。
「まあ、少しだけなら。たしか、この学校は唯一“協絆聖法学”っていう珍しい方針だったって言う話だ」
とウリッドが話す。
「協絆聖法学?」
と、僕とリズが一緒に言う。
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「ああ、たしか、普通の学校は教師は生徒の事を良く見ていなくて、いじめや差別などに気付きにくいけど、この学校は全くその事件が起きない珍し過ぎて恐ろしいって言われていたこともあったよね」
「へえ、私知らなかった」とアヤメが言うと、
「俺はそれを知ってココを選んだ」
と、ジンが恥ずかしそうに言う。
「え、あんたは強そうだから、別にいじめられても殴り返すでしょ?」
と、アヤメが強気で言う。
すると、ジンは
「いじめられた奴にしか分からないんだよ!……心についた一生残る傷ってやつを!」
ジンは怖い顔をして怒鳴りつける。
この場所に思い空気が漂う。
「もう、皆傷ついた人同士がけんかしてどうするのよ?」
リズが言う。
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「ところで、リズは何かあったんですか?」
ウリッドは聞く。
「え?」
「いや、皆心を傷つけられているのに、リズは?」
ウリッドが言うと、
「私は、幼馴染に裏切られたの。」
「裏切られた?」
「私が小さいころの幼なじみがいつの間にか、敵軍に成り上がってた……。私は人として信じられなくなってた」
「リズ…私、リズの事誤解してたのかも」
と、アヤメが言った。
「アヤメ?」
「私、皆と仲良くやっていけるのかな?皆から声をかけてもらえるなんて思ってなかった」
「アヤメも、リズも、リュウも、ウリッドも、皆同じって事だよ」
とジンが言うけど
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「ジン、なんか上手い事言ってるけど、皆お前の発言で驚いていたんだからな」
「あ、ゴメン!」
「もう、良いよ。私もゴメン」
ジンとアヤメはお互いに謝り、手と手を握り握手する。
「じゃあ、ココで終わりにしよう。私たちも寝ないと、上級生に何言われるか分からないから」
僕たちは、お互いに協力し合うことを約束して、それぞれ寮に戻って言った。
でも、僕には不安材料があった。
なぜだろう?こんなことを校長先生が許すとは考えられない。
僕とリズは基準値以下の生徒。それでも、可能性を信じてこの学校の入学を許可してくれた。
でも、僕は力もないし、今、この学校にいることで恐怖を感じている。
やっぱり、間違っていたのかもしれない。ううん。間違っていた。
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僕は不安で寮の中を歩いていた。
ものすごく薄暗い中で、明かりもろうそくに灯された火が寂しげに燃えている。
すると、僕はいつの間にか下の玄関に来ていた。
「ここは、玄関だ。もう、すごいところまで来ちゃった……」
すると、僕は一つの扉を見つけた。
なんでだろう?夜もう11時から12時に針がさそうとしている時刻だった。
「ここは?」
僕はすごい見た目が重たそうな扉を見つけた。
勝手には言ってはいけないけれど、すごくその向こうから殺気のような気配を感じた。
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すると、僕の足元に黄色い六芒星が描かれた魔方陣が現れ僕の右手が勝手に動きその扉のノブを開けようとする。
「え?ちょっと、なんで勝手に!」
すると、その扉が開き、僕の体は勝手に入り、勝手にその扉が閉まってしまう。
僕はただ、あせっていた。勝手に入ってしまい、絶対教師になにか罰せられると思った。
しかも、勝手に入ったあげく、その扉が開かなくなってしまった!
でも、窓から激しく打ち付ける雨と雷の光で僕の後ろに人影がある事に気付く。
僕は、その姿を見て言葉を失った。
僕は、その場から動けなくなった。
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「……校長……先生?」
声をかけても返事が無い。
僕は、校長先生のそばに行くと、
ゆっくりと腕が垂れ下がる。
僕は、恐怖のあまり頭が真っ白になった。
校長先生は赤い血だらけの姿で壁に座っている。
僕は、その場に正座姿で、両手を床に付けて震えていた。
今、目の前の光景が信じられなかった。
なんで、校長先生が殺されなければならなかったのか。
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すると、隣の図書室からレム先生がやってきて、
「え、リュウ君!?ちょっとどうしてここに?」
すると、僕は、
「まさか、レム先生が校長先生を殺したんですか!?」
「ちょっと、待って!リュウ君。私が来た頃にはもう、すでに……」
「じゃあ、誰が?」
するとレム先生は
「たぶん、この学校の教師だと思うの。唯一この学校だけが協絆聖法学の方針だから、たぶん、その方針を破りたくて怨んでいるんだと思う。私は、校長先生から怨まれている人達を数多く見てきたから……」
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「僕は、どうしたら、いんですか?」
「大丈夫。リュウ君は退学扱いとかにはならないから。他の先生でも勝手には出来ないわ。だって、校長先生はそのことを予測していたみたいだったから」
レム先生はそう言うと、僕に一枚の手紙を手渡した。
「これは?」
僕はその手紙を開いてみると、校長先生からの直筆で書かれていた。
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ーーー
リュウ君へ。
きっと君はこの学校に不安・恐怖を感じているだろうが、
どうか 逃げないでほしい
私は、絶対君なら犯人を探してくれると信じている
どうか、私の思いを胸に
学校を生き延びてほしい。
きっと助けてくれる人も現れるはずだから
お願いだ、必ず5人と生き延びてほしい
ーーー
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「校長先生」
僕は手紙を読んで、悲しくなり、目に涙を浮かべた。
「どんなことが書いてあるのか、私には分からないけれど」
レム先生は言った。
「レム先生。校長先生は僕とリズとジン、ウリッド、アヤメの5人が一緒に協力することをもう、とっくに描いていたんですね」
僕は言う。
「校長先生は、君たちが試験に受けに来る前から、こう言ってたの“きっと私が希望とする5人が試験に受けにくるはずだ”ってそして、レム君。“希望の5人”に力を貸してやってほしい。って、ね」
「レム先生、僕、決めました!僕、勇気を出してこの学校で頑張って生き残ります!!」
僕は、そう心の中で強く決心した。
恐怖の時間は17から16に時を進む―――。
To Be Continued.....
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