第01話 魔法学校へ!
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荒れた天候の中。
とある工場。
2人の男性が睨みあっている。
激しく空を鳴り響かせる雷。
「お前が、俺の親父を殺したのか……」
若い男性が老人の男性に向かって言った。
すると、老人の男性は
「だったら、どうするつもりなのだ?…まさか、俺を倒すとでも?」
老人は両手から黒い炎を呼び出す。
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「俺は、組織を裏切ったお前を許せない!…たとえ、お前が国王だったとしてもな!」
若い男性も両手に白い炎を呼びだす。
激しく地面に打ち付ける雨とともに、黒と白の炎が工場内に燃え広がる。
そのあと、老人の男性は若い男性の胸ポケットに入っている六角形の宝石を盗んでいく。
若い男性は必死に力を振り絞り老人の腕を掴む。
「……その宝石、どうする、つもりなんだ?」
区切り区切りで言う。
「お前には関係ない事だ」
老人の男性は若い男性の掴んだ腕を振りほどく。
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老人はその場を去っていく。
「貴様には、関係のない事だ…」
そう言って。
若い男性はそのまま息を引き取る……。
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――――その事件から数ヵ月後。
少年、リュウは、試験の合格発表会に来ていた。
僕は、思う。
なぜ今、世界は魔法と言う物を学ばなくてはいけないのか?
それは、話せば長くなるけれど。
何も知らないままこの先を読んでも意味不明だよね。
今、僕たちがいる時は、西暦1705年。
そして、魔法と言う技術が生まれたのがそれよりも約50年前と言われている。
そう言えば、もともと人々を守るために魔法が作られたっておじいちゃんが言ってたっけ?
あ、僕のおじいちゃんは僕が小さいころに天国にいったってお母さんが言ってた。
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僕はお母さんと二人暮らし。
僕らが住んでいる町。と、言ってもそこまで大都市ってわけでもない。
ケセードって所。まあ、小都市って感じかな?
で、今、僕が試験を受けた魔法学校はケセードを含む地方、グラード・フォレン地方では有名な魔法学校。
シフェンジュ・コールメ魔術学校。略してシフェコって呼ばれてる。
でも、僕には不安材料がある。
それは実技試験だ。勉強は出来てもね。実技が出来なければ……。
そんな不安を抱きながら合格した受験番号の掲示板を見に行く。
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試験を受けた人の中には、ものすごく強そうな人もたくさんいる。
中には筋肉がムキムキしてたり、目つきが恐そうな人だったり、
僕みたいな人間がいても、おかしくないのかな?
……受験番号は24670。掲示板には1番からあるから、
やはり相当な人数が受けに来ていたみたいだと。
番号を一番上の方を見ていくと、
掲示板には24601番から掲示されている場所があった。
24661…、62、64、68、69、70……。
え。あった。あった?
あえて、睨まれそうだったから、心の中で喜んだ。
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ところが、僕が受かってから、まさかこんな事件に巻き込まれるなんて、
今はまだ思ってもいなかった。
それから授業最初の日。
クラス分けが発表されていた。
クラスは1-AからJまでの10クラス。
別に上下関係はなさそう…。
僕はDクラスだった。
よくよく考えると、僕はどうして魔法学校に受かったのだろう?
なんか、それが自分の心の中では納得できなかった。
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きっと、皆はちゃんと筆記と実技の両方を基準を満たしているのに……。
そんな事を考えて思っているのは、僕だけでは無かった。
―――。
校長先生の机を強く叩きつける副校長がいた。
「なぜですか!?なぜ受験番号24670番の合格を許可したのですか!!」
副校長先生が校長先生に言う。
「なぜ、キミはそんな風に思うんだね?」
校長先生は冷静に言った。
「…筆記試験は確かにほかの受験生よりも優秀でしたよ。そりゃあ。でも、実技試験は他の受験生よりも基準以下ですよ?そんな筆記試験が優秀だったからって……」
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「私はそんな事では入学を許可させない事はお前にも理解出来るだろう?」
校長先生は椅子から席を立ち、窓の外を眺めながら言う。すると副校長もおとなしくなったのか
「ええ。それはあなたのそばで働いていますからね。それくらい分かりますよ。でも、それと、これとは?」
「私は賭けてみたかったのだよ。あの子の精霊に……」
校長先生は副校長先生に思っていたことを話す。
「あの子の精霊?まさか、あの子は!?」
「ああ、やつらが欲しがるわずか一握りしかいない光の精霊の持ち主だ」
校長先生は外を睨む目で見つける。
「それと、分かっていると思いますが、あの子は、“一応”合格者と言う立場の扱いですよ。変な事をしたら首ですからね」
最後に校長先生は言う。
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副校長先生は、失礼します。そう言って部屋を出る。
副校長は心の中で『なんで同じ扱いをしなくてはいけないのだ?』そう、つぶやいた。
そのころ、最初の授業が間もなく始まろうとしていた。
僕は指定された席に着く。
僕の席は結構後ろの方みたいだ。
4列に並んだ机。2人座りみたいだ。
席は1列6×2=12席。12×4=48人が座れる。
そして、僕の、隣は……女?机に名前が刻まれているが、その名前が……“リズ”?
男性ではなさそう。
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「あ、キミが私の隣の席の人だね?」
すごく優しい声が聞こえた。
やはり、女の子の声だ。
「え?もしかして…リズさん?」
「リズさん…ってさん付はいいよ。リズで!ね。リュウ」
リズさん…あ、いや。リズは笑顔でそう言ってくれた。
「あ。その。リズ。…これからよろしく」
僕はそう言った。
「うん。なんか、恐そうな人じゃなくて良かった。だって、恐そうな人だったら、気まずいもの」
そうリズは言った。
でも、リズって人は、ものすごい心の悩みを抱えていた。
僕は、全くそのことなんて知らなかったし、思いもつかなかった。
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そう。私リズは、他の学校から来た転校生みたいなもの。
私は、幼馴染からの親友、ダイバに裏切られた……。
魔法学校に入学してから、私はいつも、攻撃の的にされていた。
ダイバに言われた言葉。今でも、大人になっても、忘れられないあの言葉。
【お前みたいな弱い存在は、強きものが生き残るための……“死骸だ!!”】
私は、もう、誰も信じないって決めたのに!!
どうしてなの?
リュウを見ると、そうは思わなくなる……。
なんで?なんでなの!?
私は、この学校で生まれ変わるって誓ったんだ!
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「ねえ。リズ。大丈夫?……すごい汗かいているけど?……具合悪いのかな」
僕は、ものすごい青い顔したリズが心配だった。
「あ、ううん。大丈夫。こんな学校に入れる事の緊張感かな?」
私は、そう答えは。本当は嬉しかったのに。
学校のチャイムが聞こえる。
間もなく授業が始まろうとしている。
そう、僕と、そして隣で知り合ったリズと2人の史上最悪の物語が
いま、ページがめくられようとしている。
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最初の授業の先生は、優しそうな女教師。マーメイ先生。
黒板に白いチョークで『ほうきに乗る』と、書く。
「はい。皆さんにはまず、魔法を覚えていく前に、ほうきに乗れるようになってもらいます!」
教室中がザワザワと騒ぐ。
「はい。みんな、静かにして。これから1人、練習用のほうきを渡します。5日間で乗れるようになってね♪」
そう、マーメイ先生は言う。
授業が終わったとたん、皆、乗れない。乗れない。と騒ぎだす。
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教室中はほうきに乗った皆が壁にぶつかってばっかりの騒動の声で響き渡る。
「こっちに来ないでよ!」
「俺の方に来るなよ!」
「壁にぶつかる!」
僕も頑張ってみるけど……。
「うわっ!」
さかさまになってしまう……。
でも、隣にいるリズは……
「おーー!気持ちいい!」
上手に乗りこなしていた。
皆、リズを見て、羨ましそうに見ていた。
僕は、5日間で上手く乗れるようになるのかな?
そう、思っていた。
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初日の授業は、ほうきの練習で終わった。
…というよりも、午前中だけで終わりだった。
学校が終わり、下校途中。
はー。僕はため息をする。
すると、リズは、
「リュウ。大丈夫だよ。絶対乗れるって!」
そう、言うけれど。なんか、自信が無い。
「ねえ、変な事聞いても良い?」
僕はリズに言った。
「うん?何?」
リズはなぜだか笑顔で答える。
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「もしかして、魔法学校で学び済みだったりする?」
僕は、勇気を出して聞いてみた。
もちろん、怒られるって分かってたけど。
僕には、分かってしまった。
今日、授業を受けてる皆を見て、リズだけがなぜか、平気な顔をしていた。
皆は、緊張してたり、怖がってたりしてたのに。
「…リュウって、私が思ってた、通りだったね」
「…?思ってた通り……」
リズは、僕より少し前に歩き、
「私ね、人の能力とか分かるんだよね。」
「人の…能力…?」
「うん。私ね、リュウが言ってた通り、私は他の魔法学校に通ってたの」
「他の魔法学校に?」
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「うん。私ね、グラード・フォレン地方の隣の、バンフォース・イジン地方のランスロ・ヴォルテ魔術学校・通称ランヴォ。」
「違う地方から来たんだ……あ、ごめんね。なんか、やっぱり、悪かったよね。こんなこと聞いちゃって……」
「ううん。私は気にしてないよ。むしろ、不安だったんだ。私、ほかの学校から来た人間だし。皆からうらまれたり、にらまれたりするんじゃないかって」
「でも、僕の能力って?」
「ああ、それね。リュウは結構推理力が働くみたいでさ。意外なところ見てるんだよね」
「そうかもしれない」
「あ、認めちゃうんだ」
そのあと、リズと楽しい会話をしていた。
なんか、初めての学校生活。僕も不安だった。
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でも、僕は、ほどほどにするということも一緒に伝えておいた。
だって、もしかしたら、相手には悪い事とか……。
さっきみたいに聞いてしまうかもしれないから。
ちょうど、お互いの家に帰る交差点にさしかかった時だった。
「やっと、見つけたぜ!」
後ろの方から男性の声が聞こえる。
すると、リズの顔色が変わった。
「その声は……まさか!?」
リズは後ろの方を振り向く。
僕も後ろを振り向くと、
怖そうな男の人が立っていた。
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「どうして……どうしてあなたがココに!?」
リズは、右手を強く握りしめて、言った。
リズはあの男の人を知っているかのようだった。
なぜだろう。男の人はすさまじいオーラを放っていた。
僕はこの人を見たとたんに怖いと感じた。
「さあ、リズ。もう鬼ごっこは終わりにしようか」
「な…なによ」
リズは一歩ずつ後ずさりしている。
リズはこの人に何か嫌な事とかされたのかな?
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「どうして、どうして、ダイバがこんなところに!」
リズは、泣きながらそう、叫んだ。心に抱えていた不安や恐怖と一緒に。
「お前には、消えてもらわなければ、ならなくなったからだ!」
ダイバという男。腕に刻まれた紋章をリズに見せつける。
すると、リズは目を疑った。
「なんで、まさか、敵の軍事に成り上がるなんて!……信じられない……。」
「信じなくて当然だ。俺は……強くなるために、お前を裏切ったのだから」
すると、ダイバは右手をパーに広げて、呪文を唱える。
僕は心の中でつぶやいた
『この人、魔法を、もうすでに扱える……』
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《デス・ボーム》
ダイバはそう呪文を唱えると、
右手から黒紫色の球状の渦がだんだん巨大化してきて、ある程度大きくなったら自動で放たれた。
すると、リズは僕の事を突き飛ばし
リズは、両手を合わせて
《レイバレム》
両手を前に出し、青いガラスのような長方形の板みたいなもので攻撃を防ごうとする。
「あ、あれは……防御魔法?」
僕は小声で言った。
でも、リズが出した魔法は少しづつヒビが入っていき、
「あっ!」
リズがそう言った時、
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リズの魔法は細かく砕け散ってしまう。
そして、リズは遠くに吹き飛ばされてしまう。
「リズ!!」
僕はリズの事を呼ぶが、返事が無い。
すると、ダイバと言う男が、
「なんだ?お前。お前みたいな弱い奴がいてくれると、俺もいじめがいがあるってもんだ……」
そう言うと、目にも見えない速さで僕の目の前に来る。
「…!は、速い」
僕は何も言えないまま、
ダイバは速攻で新たな魔法で僕を攻撃してくる。
《ブレイブ》
ダイバは両手を剣で切るように動作をすると、
僕の体を切りつけた。
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僕は、そのままうつ伏せ状態になってしまう。
なぜだろう……、立つことができない。力が入らない。
全身に痛みが走るように。
でも、それだけじゃ無かった。
僕は自分の両手を見た。真っ赤に汚れていた。
ううん。汚れじゃない、自分自身の“血”だった。
「うそ。」僕は、疑うしかなかった。
これほど強力な魔法が、人を傷つけるように使われているなんて。
僕のおじいちゃんは小さかった頃に言っていた。
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―――
「魔法は人を傷つけるものじゃない。人を助けてあげるものに魔法が使われるべきなんだ。だから、お前もそういう心をますれないでいてほしい」
「うん。おじいちゃんとの約束だね」
「ああ、おじいとリュウの2人だけの約束だ」
おじいちゃんと僕が小さかった2人が指切りをしている
―――
おじいちゃん。平気で人を傷を付ける道具として、魔法を使っていたよ。
僕、どうしたらいいの?
すると、リズは、何とか立ちあがると、僕を見て
「リ…リュウ!……大丈夫?……しっかりして」
リズは僕に近づいて言う。
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「はっ!そんな弱い奴なんて放っておけばいいんだ!」
そう、ダイバが言うとリズは、
「あなたには、死んでも理解できないでしょうね。」
「何だと!?」
「あなたには持ってない力をリュウは持ってる。そう、死んでも手に入れられない力をね」
「まだ、強がるか……だったら、これでどうだ!」
ダイバは両手を空に向けて呪文を唱える
《メテオ・ガルンドス》
空中に巨大なブラックホールみたいな渦を巻いた黒紫色をダイバはリズに向かって投げる。
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リズが、危ない。
僕は頑張って立ちあがろうとするけれど、力が入らない。
でも、このままだと、リズは…、リズは……。
僕は、頑張って立ちあがる。
そのころリズは、防御の魔法で少しでもダメージを抑えたいと考えていたけれど。
リズは心の中で『ダメ!…もう、間に合わない。……私、ダメかも……お姉ちゃん……ゴメンね。』
他の生徒たちも帰っている通学路。
巨大な爆風を見て他の生徒たちも何が起きたのだろうと、その爆風の方に人達が集まろうとしている。
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リズはゆっくり目を開ける。
「私、生きてる……?……なんで。なんで。」
すると目の前には僕が両手を広げて立っていた。
「!…リュウ?」
リズは僕に駆けつける。
「ちょっと、何してるの!?そんな攻撃まともにくらっちゃったら……」
僕はそのまま倒れこむ。
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あのときは、覚えていないけれど、僕は相当な出血だったらしい。
もう、あの時の記憶は思い出したくないけれど。
「そいつは、もう立ち上がれない」
そう、ダイバが言った後、
《マレン・ドレイン》
ダイバの両手両腕を固定する。
「そこまでだ!」
すると、2人の警官:ポリス・アクレージュが来ていた。
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ポリス・アクレージョ。いわゆる、警察と同じ。
そして、警官は話を続けた。
「ダイバ、お前を逮捕する!」
ダイバは必死に抵抗するが、
マレン・ドレインの魔法の効力が強くて、対抗できないダイバ。
リズは、連行している警官とは別のもう一人の警官に
「あの、ドクターレーシブ呼んでもらえませんか?」
リズは必死になって言う。
「ドクターレーシブを?」
その警官が見た先には僕が倒れている姿だった。
※ドクターレーシブ=救急車の事。
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「お、おい!大丈夫か?……ひどい怪我じゃないか?――ダイバにやられたのか?」
「あ、はい。……私をかばって…」
「今すぐに呼んでやるから、そのまま安静にしているんだ!」
警官は、すぐさまにドクターレーシブを呼ぶ。
僕は、すぐに駆けつけてきたドクターレーシブに乗せられた。
リズは涙目になっていた。
「どうして……どうしてあたしなんかのために―――。かばうなんて。」
リズはそのまま涙を流したまま泣いていたらしい。
一緒に付き添っていたナースが僕にこっそりと、後で教えてくれた。
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―――レフォンス・ホスピタル。
タクシーから降りる1人の女性。
病室の受付の人に聞く。
「私、リュウの母親なんですけど……病室って、どちらですか?」
「あ、はい。――306になります」
「ありがとうございます」
そういって、306号室に急ぐ女性。僕の母。ルミ。
――306号室。
病室の扉を開けるお母さん。
僕の左腕に包帯を巻かれている姿を見て、言葉を失うお母さん。
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「リュウ君の母親でしょうか?」
大人びた女性が僕の母に聞く。
「あ、はい。…あの、あなたは、もしかして」
母は、少しおびえた様子だった。
だって、母は魔法学校には一切、手を出さないってお父さんに誓ったってお母さんから聞いた。
僕のお父さんは魔法使いよりも最上級のマジカル・エルメント(魔術再行使)とよばれていた。
でも、母は、危険な仕事をすることには猛反対だった。
その話は、もう少し先に話す事にする。
「私は、シフェンジュ・コールメ魔術学校の1年担当、レイチャ・レムと申します。リュウ君は、左腕に大量出血により、緊急治療を受けていて、今は安静に眠っている」
「そうですか。」
お母さんは、ベットの横にある椅子に腰をかける。
そして、右腕の手をお母さんは両手で優しく包み込むように握る。
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「この子は、お父さんとは違って、優しい子なんです。でも、自分を変えたいって言って、魔法学校に受けることを決めたんです。」
「ほう。リュウ君はそんなことを?」
レム先生は僕のことを知ってるわけではない。と言うよりも、先生は生徒一人一人の事を知ろうとはしない。
「ええ。だけど、私は反対だったんです」
お母さんは、目に涙を少し浮かべて言った。
するとレム先生は興味深そうに
「なぜだ?」
「この子には、優しい心を持ってる。私に似たんでしょう……。でも、この子の心は、優し過ぎるんです。」
「優し過ぎる?」
「自分は悪くないのに、人をかばうんです……。どうして、どうして…」
お母さんは両手で顔を隠して涙を流す。
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「私の学校長、ホームン・モデン学校長は、そこを見込んで入学を許可されたのです」
「…校長先生が?…・…この子の性格を見て…」
「リュウ君のお母さん。ホームン学校長は、私にこう言いました」
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「私は、希望を見つけた」
「希望ですか?校長?」
「私は、何十年も生きてきた。そこで、ようやく見つけたのだ、幸せという希望を」
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「私も、信じてみたいのだ。“希望”という物を」
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月明かりが差し込む306号室。
お母さんはあの後、ずっと付き添っていた。
「ねえ、リュウ。あなたはお父さんのこと、嫌いだったよね。人を見捨てて生きてい行く事に、嫌がっていたよね。でもね、私は、あの時、怒っちゃったけど、私は、本当はすごくうれしかったの」
お母さんは小さく僕に向かって言う。
僕はその時目を開ける。
お母さんは僕が目を開けたことを驚く。
「お母さん、ごめんなさい」
僕はお母さんに謝る。心配をかけてしまったから
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「ううん。あなたまで天国に言ってしまったら、私1人ぼっちになってしまうから……。良かった。生きていて」
「僕は、今まで知らなかった。」
「……リュウ」
「僕は、この広い世界の事を知らなかった。だから自分で勝手に都合のいいことを考えていた。」
僕は、心の中に抱えていた事をお母さんに話した。
「いいえ。あなたは今まで通りでいるべきなの。さっき、レム先生がおっしゃっていたわ」
「僕が、希望なんでしょ。でも、僕は思ったんだ。僕は、100%の実力で受かったわけじゃないし。僕自身の力で手に入れたわけでもない」
「そんなことないわよ」
「もう、良いよ!無理してなぐさめようとしないで!!」
「リュウ……私は、そんなつもりで……」
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「僕は、力もない、ただの弱い人間だから……。僕は他の人間が生き残るための“えさ”なんだ」
僕は、そのあと、ただ、泣くしかなかった。僕は、皆とは違う。特別扱い。
実力で手にしたわけでもない。皆とは違う。だからこそ、皆から怨まれるだけの存在なんだって。
僕と、お母さんはお互い、涙を流して泣くしかなかった。
そして、その日の夜はとても長い夜に感じた。
―――次の日。学校では臨時休暇となっていた。
リズも心配になって僕のいる病室にお見舞いに来てくれた。
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「君がリズ君だね?」
レム先生が言った。
「あ、はい。そうですけど?もしかしてレム先生ですか?」
リズは言った。
「君に確認したい事があるんだ。」
「あ、はい」
リズはどんなことを聞かれるのか少し不安になった。
「ダイバと言う男なんだか、ポリスからの連絡で、あいつはヴァンキッシュという暗黒の組織の司令官に成り上がっていたそうだ」
レム先生は報告書を見ながらリズに伝える。
「…え?ダイバがヴァンキッシュに?」
リズは体全身が震えあがった。
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「レム先生、ヴァンキッシュって何ですか?」
リズは恐る恐る、レム先生に聞く。
「ああ、バンキッシュとは、グラード・フォレン地方に相反するバンフォース・イジン地方に存在する、敵軍国家の組織名だ」
そう言われた時、リズは恐ろしく感じた
「それって、もしかして、」
「ああ、ダイバはお前を抹殺するように、あのお方からの直々の命令で侵入してきたらしい」
「ウソでしょ、ダイバが暗黒の道を選んだっていうの……?」
人と言う人間は、恐ろしい道を平気で選んでしまう。
お金と言うエサに吊られて……
恐怖の時間は18から17に時を進む―――。
To Be Continued.....
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