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クズが顔をしかめる話

「ハッハッハ、結論は和解だ」

 クズの問いかけに対して、タキシード男は即答した。

「ハァ? 和解だと?」

 当然、スウェット男に対して良くない印象を抱いているクズにとって、その結論をスンナリと飲み込めるはずがない。クズは続ける。

「何で? 俺とお前(タキシード男)は、被害者のはずだろう? ソレをどうして、和解なんてしてソイツ(スウェット男)の罪を許さなきゃならねえんだよ!」

「ホホウ、罪とは?」

 クズが捲し立てる中、タキシード男がツッコむ。

「先ず、窃盗罪! これはいくら俺でも分かる! 泥棒は、犯罪だぞ!」

「ハッハッハ、その盗まれた側が、『そんなこと無いよ』って言ってるんだぞ?」

「じ、じゃあ、傷害! 傷害罪! それか殺人未遂! 俺は殺されかけたし! てか、殺人! 現に爺さんも殺されちまったじゃないか!」

「それも、証拠不十分だな。現場はすべて私がキレイに片付けちゃったから」

「ウ、ウゥ……」

 クズは黙って俯いた。しかし、すぐに何かを思いついた様子でパッと顔を上げる。

「ア、悪の組織ってのは、国家に対する反逆罪なんじゃないのか?」

 その問いには、スウェット男が直々に答える。

「残念ながら、ワタシは国家に対して良からぬ思想を持ったコトはない。それに、この日本と言う国には、明確に国家反逆罪という罪状が法律によって裁かれることはない。裁かれるにしても、内乱罪や騒乱罪、あるいは外患罪がソレに近いニュアンスを持っているかも知れぬが、先の貴公らとのやり取りは、そちらのタキシードの君が片付けてきてくれたからね。ワタシが罪に問われることは、まあないだろう」

「ハッハッハ、国家権力まで退散してしまったからね。まあ、これは君が眠っている合間にだけれども。これで現行犯逮捕もなくなってしまった訳だ」

 クズは話の内容は理解できなかったが、結論は理解できた。

(クソ、結局は何も起こっていなかったってことか)

「ハッハッハ、実に巧い言い回しだね。まさにその通り。今日は何も起こらなかったのさ」

 タキシード男は、クズの脳内で自動的に送受信モードになっている情報処理装置から、勝手にクズの思考を読み取った。スウェット男も同様にしてクズの思考を読み取ったようで、タキシード男に続く。

「ナルホドナルホド。何も起こっていないが起きる。なかなか貴公のユーモアセンスも馬鹿にしたモノではない。まあ、この際だ。貴公にも如何にしてワタシとタキシードの君が和解したのかを、解説してあげようじゃないか。親切に。然れば貴公も少しは納得できるのではなかろうか?」

 スウェット男はクズを見下したようにモノを言う。当然、クズはカチンときて、

「そんな話は、どうでもいい! どうせ俺を言い包めようとしてゴチャゴチャとした訳の分からん言い回しをする気だろう! どうせ結論なんて、あの糞女を使って、お前が色々と厭らしいコトをしようとして立ってコトくらいだろ? そんな下卑た、酒のツマミにもならんような妄想話はどっかに置いておけ!」

 と、言い募る。それに少し虚を突かれたスウェット男は刹那、キョトンとしたが、直ぐにニチャリと口角を上げた。

「これはこれは。ワタシの愛おしい愛玩具に向かって糞女とはね。その糞女とやらにヤラれて実際に糞尿を垂れ流したのは貴公だがね」

「うるせえ!」

「ハッハッハ、一つ聞いてはくれないかな? 君は深く係わり過ぎたんだよ。ここで事実を知らずに、変に誤解されても後々面倒臭いだろう?」

 タキシード男が、クズをなだめる。すると、クズは

「後々面倒になる?」

 と、タキシード男の思惑道理になだまった。

「ハッハッハ、先ずは、君の誤解を解く必要がある。さすがにどれほど私が温厚であろうと、何の贖罪も無しに大事なデータを盗まれたコトを見ずに流すことは出来ない。もちろん、和解をするにあたって、そちらの彼には幾らかの条件を飲んでもらったよ」

「条件?」

 タキシード男がスウェット男を無条件に許していないコトを知り、クズは少し安心する。

「アア、彼にはあの少女に使われた技術的情報を全て公開してもらうコトを条件に出した」

「ハァ?」

「要は技術の交換だ。私が発明した思考データ抽出の技術と、あの少女に使われていた様々な技術のトレードさ」

 タキシード男は揚々と喋る。クズは外観こそはそのままであったが、精神的に引き気味に構えた。ここで、スウェット男が口を挟む。

「少し悪いコトをしてしまったと言えば、こちら側が多少強引に進め過ぎたってトコロかな。フフフ、いやでも、あんな素晴らしい愛玩具製造技術を持っていて世間に出さないのはお天道様が許しても、ワタシのこのイチモツが許さないって話だよ」

 これには、タキシード男も引いたが、会話を続行させた。

「ハッハッハ、いやあしかし、私が発明したコトをどこでどうやって知ったかってのは、まだ聞いていなかったな」

「そんなのは簡単さ。要はあの定規に使った技術の応用。というか、あの定規に使った技術自体がワタシの情報収集技術の応用なんだけどね」

 スウェット男は、鼻息を荒めて、今までより余計に気持ちの悪い喋くり方で語りだした。

「あの定規ってのは、電流の流れを探知して、ソレを吸収する代物だ。これを使うコトによって、世の中の電波の流れに異常が発生したらばすぐに分かる。そしてその異常ってのが件の思考回路のデータ化だ。実物するモノを盗む術なんてのはこの世にごまんと溢れている。大事なのはいかにしてその存在を知るかどうかだ」

「悪さの武勇伝は、痛々しいぞ……」

 スウェット男の陰鬱なオーラを出しながらも得々と語る様子に、クズは顔をしかめながら口に出した。

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