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クズが掻い摘む話

(つまりは、こういうコトだよ)

 タキシード男はクズの脳内に、情報を送り込んできた。

「どういう?」

 あまりの唐突さと、意味不明さに、クズは思わず口に出した。

 それに対してタキシード男も、実際に口に出して答える。

「ハッハッハ、あの君が殺めてしまった少女を思い返してみな。(一般人と比較して理解力や想像力に乏しい)君も、何か不可解に感じた点があったはずだ」

「フカカイ? な点?」

 少し難しい言葉に、その意味やニュアンスは何となしに理解しているが、それでもドギマギと首を捻りながら問い返した。

「アア、不可解な、点。あっただろう? 君にとって、腑に落ちない点。アレ、何でだろう、と思った点」

 タキシード男にここまで言われ、クズは不可解という単語の意味について、確信を持った。

「ナルナル、不可解な点だな」

 クズは腕を組み、目を瞑って改めて少女に不可解な行動は無かったかどうかを考えた。

「ウーム」

 とクズが唸っていると、スウェット男の

「タキシードの彼があれほどヒントを与えているのに、貴公はまだ分からないのか」

 という言葉が聞こえた。クズはギュッと目を閉じていた為、スウェット男がどの様な顔をしているかは見えていなかったが、それでもその一言に違和感を感じた。

(アレ? こいつ、ニチャってないぞ)

 クズは不意に目を開いた。すると、スウェット男は、目を覆う様な仕草をしながら、ピクリとも口を動かさずにクズに語りかけてきた。

(ようやく気が付いたかい? その通り。彼女がくたばっちまう直前に、件の老執事から頂いた情報処理装置だよ)

「ハァ?」

 クズは混乱した。

 少し考えただけでも、スウェット男の言う(正しくは情報として送りこんできた)コトには無理がある。例えば、クズに情報処理装置を組み込む際には、鼻から注入して一晩掛かった。しかもそれは、クズ自身に直接注入されたわけである。

 では、スウェット男はどのようにしてソレを手に入れたのか。

 老執事から情報処理装置を取り出したにせよ、まだ半日も経っておらぬ。そして、少女が老執事を殺めたのは明らかであるので、スウェット男自体は実際に老執事に出会っておらぬ。それどころか、老執事が息を引き取ってから、少女とスウェット男が落ち合う時間すら無かったであろう。事実として、老執事から最後の情報が送られてきてから、少女に出会うまでは数分しか経っていない。

 つまり、スウェット男は情報処理装置を脳内に設置するどころか、ソレを手に入れることすら不可能と言うコトになる。

 しかし、現としてスウェット男はクズに対して情報を直接脳内に送信してきている。しかも、老執事が情報を送信する際に行っていた仕草を真似している。

 益々、パニック状態に陥っているクズを、半分見かねて、半分からかいながら、タキシード男は説明し始めた。

「ハッハッハ、要は君の頭の中に入っている情報処理装置も、情報の内の一つでしかないというコトさ。と言っても、君のは簡易的についているだけだから、送発信機と言う媒体を設けてあるが、老執事の彼の場合は基が私自身であるから、余計な媒体を挟んでいないのだよ。そちらの彼(スウェット男)がコレを入手したのも、そういった訳さ」

 説明されても、イマイチ飲み込めていないクズを見て、タキシード男は続ける。

「ハッハッハ、つまり、今はやりのゲームソフトみたいなものさ。君はパッケージ版。私やそちらの彼がダウンロード版」

 ここまで噛み砕いた説明をされ、クズは組んでいた腕を解き、

「ナル! ナル!」

 と、二度、手を打った。

「そういう訳で、貴公達がコッソリと頭の中で会話をしても、破廉恥なデータをやり取りしても、ワタシにはマルで隠せない、と言うコトさ」

 スウェット男は、再び口を開き、ニチャニチャと喋った。タキシード男はソレに付け加える。

「ハッハッハ、だからこそ、ここまで私は君にも姿を見せなかったのさ。私としての情報は極力流出させたくなかったからね。あくまでも私の印象は執事の尊翁。まあ、そのせいもあって、君には泥棒まがいのコトをさせてしまったが……でも、思ったよりもスムーズに侵入して来てくれたみたいで、驚いたよ」

「フフ、まあ、俺にとっちゃ、窓から侵入するくらい訳ないさ」

 そのほかの重要な情報を差し置いて、クズは自らが誉められたトコロを掻い摘んだ。

「さて、本題に戻そうか。どうして貴公が我が家に忍び込んでからここに至るまでの僅かな時間に、話し合いが付いたかどうかについてだったか」

 理解したか否かは別として、クズが話を飲み込んだトコロで、スウェット男は話を戻した。

「例えば大学の九十分の講義であっても、情報として送れば所要時間は大幅にカットできる。貴公が我々の会話に介入してくるまでに、よほど愚図愚図した人間でなければ、十分に結論を出すことが出来るのだよ」

「フムフム」

 クズは、分かったような顔をしながら頷く。そして、

「で、その結論は?」

 と、タキシード男とスウェット男のどちらかに問うた。

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