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クズが蹴られる話

「フムフム、目の前にはゴミカス」

 と、少女は、マルで殺虫剤を振り掛けられた直後のハエの様に、立ち上がりたくても立ち上がれぬ、何かを考えたくても考えられぬ状態のクズを蔑む。

「フムフム、このご時世、ゴミを放るにしても金を取られる」

 少女は、クズの腹部に右足のつま先部分を充てがう。

「ジャアジャア、処分するしかないじゃナイ! フフフフフ!」

 少女は大笑いしながら右足を引いた。

「ホウラ、臭っさい臭っさい臭っさい臭っさいパンツを湿らせたままで、三途の川に逝ってラッシャーイ!」

 そして右足をクズの腹部に向かって振り下ろした。その痛みを感じているのかいないのか、蹴られたクズは

「ウーウー」

 と呻くばかりであった。それを見た少女は、

「エ? ナニナニ? 何ていってんのか分っかんナイ」

 と、続けざまにクズの腹部をガンガンと二度蹴った後、少女はとろけた表情で

「ハァ、やっぱりこの上ないワ」

 と溜息をつき、

「フフフフフフフ! やっぱり人を殺す時は何にも出来ない虫けらをジックリいたぶるに限るネ!」

 と、可憐な瞳とは対照的な言葉で笑った。

 そして少女が

「次は顔を! 顔に! 顔へといっちゃいましょウ!」

 と、それまで腹部にぶつけてきた小さな右足を、クズの頭部に照準を定めて引き上げた。

 すると、クズの口内から、少女の全体重を支えている左足の膝部分に、マルでビー玉の様な何かが噴射された。

 その物体によって左足のバランスを乱された少女は、引き上げた右足で全身のバランスを整える。一方で少女の左膝に衝突した物体はそのまま少女の膝にピッタリと張り付いたかと思うと、グニグニと伸長して、リング状に膝に纏わりついた。

「エ? 何これ?」

 突然クズの口内から飛び出してきた謎の物体に、それまで甘々に溶けていた少女の表情は一転して強張った。

 少女は物体にどうしてよいか分からぬといった視線を向けながら、

「と、とりあえず外してみよウ」

 と、右手に持った定規で物体をチョンと突いた。すると、定規が物体に張り付いてしまった。

「モウ! なんだコレハ!」

 少女は、よく分からぬ状況についつい声を荒げる。

 すると、突然

「ハッハッハ、残念だったね。世の中が何でも思い通りになると考えているようじゃあ、まだまだ蒙古斑の消えないお子チャマだってことだよ」

 と、成人男性のモノと思しき声がした。

 その声に驚いた少女はクズの顔面に視線を投げるも、クズはまだ悶えている。

 少女は周囲をキョロキョロと見渡しながら

「エ? 誰? 誰ダ?」

 と問う。すると、その声が

「ハッハッハ、残念ながら、そう易々と敵様に正体を見せないさ。だって私は大人だからね。ヒーロー戦隊みたくカッコよくパンチやらキックやらで君を倒せるならばそうしたいけど、世の中ってのはそう上手いこといかないからね」

 と、答えた。

「出て来い! 出て来い! 出て来い!」

 少女は鬼の様な恐ろしい雰囲気を纏って叫ぶ。それに対して

「ハッハッハ。いいのかな? そんなに怒号を飛ばしてちゃあ、私よりも先に警察が来るかもしれないよ。ここは平野に広がる大草原ではないんだからね」

 と、どこからか聞こえる声は少女を馬鹿にしたような調子で応じる。

「ウルサい! ウルサい! だったら出て来い!」

 少女は少しボリュームを下げながらも、沸々と怒り狂う。そして

「フーッ、フーッ」

 と、息を整えた。少し落ち着いたトコロで、少女は再び口を開いた。

「ダケド、こっちには人質がいるカラ! ホラ、ここに倒れてイル! このゴミがどうなってモ?」

「ハッハッハ、君は人質ってのがどういうモノなのか分かっているのかい?」

「ハァ? アンタは味方が殺られるのをマジマジと見ていられるタイプの人間ナノ? だったら話が合いそうネ」

「ハッハッハ、私はそんなに冷徹ではないし、猟奇的な趣味も無いよ。だけど、君はいつから彼が私の味方だと思っていたんだい?」

 謎の声の言葉を受け、少女はその美しい瞳でクズを睨みながら舌を打ち、

「このゴミクズがアンタの味方ではないとしたら、コイツはホントに何の使い道もナイ虫けら以下の生命体ネ」

 と、明るくはあるが、少女の腹の中の憎悪感を一切隠さぬ口調で言った。

「ハッハッハ、一寸の虫にも五分の魂ってね」

「ウルサい! ジャア、このゴミクズがアナタの味方ではないとしたら、この場でワタシがブッ殺しちゃっても構わないってことだよネ!」

「ハッハッハ、私は紳士だから女性に対して差別をするのはよくないと思うのだが、それでも一言だけ言わせてもらうと、一介の少女がどうやって大の大人を殺めることが出来るんだい? 見たところ、辛うじて君が持っていた凶器は足にピッタリとくっついているじゃないか」

「フフフフフ、アナタって思ったよりも頭がよろしくないのネ。抵抗しない相手を殺すくらい、この両手があれば十分じゃナイ!」

 そう言うと、少女は定規のついた左足を引きずりながら、クズに近づき、クズの首に両手を充てがった。

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