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2:どうやらこの世界は……

それまで暗くぼんやりとした感覚から急に目にじんわりと光が差し込み,俺の頭が活動を再開する。

肌は少し冷たく,手足を動かすとあちこち硬くなってポキポキと軽く高い音がなった。

目をこすりながら周りを見ると,心地良い木の香りと寝心地の悪い堅い床の上に自分が寝ていたことが分かった。

どうやら,夢オチで終わるほどあまくない事態に巻き込まれたんだなと改めて実感する。


「ん~~~! …………さて,どうすっかねー」


取り敢えず,やることもあてもなく,かと言ってじっとしている訳にはいかない。

まずは,人に会いたい。

もし仮にここが地球のどこかなら,探せばきっと人がいるはずだ。

しかし,自分に変な能力が身についていたことが昨日分かった。


考えられる可能性は…………(演算中)…………


1.どこかの秘密結社が俺に肉体改造を施して,役に立ちそうにない能力だったので捨てた。

2.異世界にワープして,能力をゲットした。

3.長い夢を見ている。



………………


絶望した!自分の想像力の貧困さに絶望した!


まあ,考えてもしかたないことだけは分かったので,俺は壊れかけの斧を担ぎ,小屋の外に出た。

昨日は,自分の能力のショボさに愕然としたが,考え様によっては割りと便利かもしれないと思った。

材料さえあれば,イメージしたものを即時に作れるという職人泣かせな能力だし,ビックバンアッタクや元気玉といったド派手な高威力なものではないが,人としての生活を成り立たせるには持って来いの能力だと思う。



よって,当面の使い道は,サバイバルな用途にだろう。

しかし,この能力……使用回数制限とか使うとMP使うとかあるんだろうか?

試しに,昨日作った小屋を丸太に戻してみることにした。


(丸太をイメージして,……元に戻れ!!)



………………


戻らない件について。

なんということか。この能力,元の素材には戻らないという欠陥品でした。

本当にありがとうございました。

完。





って,諦めるには早いが,しかしSAN値はガリガリ減っている気がする。

ともかく,今やるべきことは,ここがどこか確かめることだ。

人を探し,道を尋ねる。

迷子の時とやることは同じだ。

ということで,俺は森を離れることにした。





「森をぬけ~て~♪ 俺はいく~よ~♪ どこまで~もどこまで~も♪」


小粋な小唄を奏でながら,俺は森を出て,草原を歩く。

浅緑の草を踏みしめ,柔らかい風の音だけが耳に届き,陽の光に照らされた道無き道を進む。

紫煙と酒気と排気の世界から一転,今いるところは身も心も浄化するような世界だった。


不思議と昨日のような気だるさは殆ど無く,むしろ少し軽いぐらいだ。

陽が昇りきった頃にようやく気づいたが,何か太陽が昔見た時よりも大きく見える。

まあ,直に太陽を見ることなんてほとんどしなくなったから,気のせいかもしれない。

丁度その疑問が浮かんだ辺りで,先の景色が無くなっていることに気付いた。

草原は果てなく続くものではないが,突然に無くなったり,別の景色が見えないのはおかしい。

気になったので,俺は歩幅を大きくし,歩く速さを上げた。




「なんじゃこりゃあ!?」


目の前に広がるのは海である。

しかし,水のある海ではない。

飛行機に乗った時に見える雲の海……「雲海」であった。


草原はまるでくり抜かれたように無くなり,足元を見れば下は底の見えない空中である。

崖の先から落ちないようにしゃがみ,俺は顔を出して自分の立っている地面がどうなっているか確認する。


はっきり見えるわけではないが,どうやらこの地面。

空に浮かんでいるようだ。



「俺はラピュタに来てしまったのか……」


そんなわけはないが,しかし,間違いなくここが,元いた自分の世界ではないことはわかった。

どうやら異世界に来たらしい。



「さてさて,どうしようか」


落ち着いているようなセリフだが,実際内心穏やかなわけがない。

え!?異世界?何これ,どういうこと。

誰がこんなところに連れてきやがったの?

馬鹿なの死ぬの?

どうしろっちゅうねん。

とこんな感じに混乱しておりますみたいな心情だ。



俺はその場に体育座りをしながら,果てない空の海を見ることにした。

正直他にすることが思い浮かびません。


「あ,鳥がいるんだ。その辺は同じなんだな」


視界の遠くに翼を羽ばたかせた生物が見えた。

間違いなく鳥だと断言できるぐらい形容が同じだった。

お,なんか知らんがこっちに来たな。

しかし,空を飛ぶにはやっぱりあの形がベストなんだな。

ああ,俺も空を飛べたらなー。こんな所に座ってないのに。

いま私の願い事が叶うならば翼がほしいです。安西先生。


そんなことを考えていると,バサバサと音が聞こえてきて,鳥が目の前まで来ていた。

………………


「ちょッ,ぎゃあああ!!」


俺の目の前に来た鳥はそれはもう,とてつもなくデカイ鳥でした。

ちょっとしたチャーター機ぐらいの大きさがあった。

え,ちょっと待って,これってもしかしなくても。

鳥の両足の爪が俺の体を掴んだ。


「餌ですねわかります!!ってぎゃあああああ!O~TA~SU~KE~」


こうして俺は巨大な鳥に掴まれて大空へ飛翔した。



追記2012年8月28日

ネタ説明

・秘密結社に~→無視っぽい仮面を被った特技がキックの方。

・ビックバンアタックや元気玉→オス!オラ孫悟空!

・SAN値→正気かどうかを表す値

・ラピュタ→必ず3回は見ましょう。

・今私の願い事は→音楽の教科書を開いてみよう。

・安西先生→バスケットマンが出てくる漫画。ちなみに作者は安西先生と体型が被ります。

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