13:お説教と戦後処理
陽の光に照らされて銀色に光輝いていた帝国の船は、今や無数の空洞と灰煙に包まれて、見る影を無くしていた。
そして、今こちらの船に帝国の船の兵士6人が縛り上げられていた。
最後の悪あがきに白兵船を挑んでくるかと思われたが、敵は大人しく降参した。
悪あがきをして、無駄な兵を浪費しないということは、彼らの指揮官であるリグレットと名乗った女は優秀な指揮官だと俺は思った。
「さて、こいつらどうするか・・・・・・」
レッグストロング船長がそう口を開くと、船員の男たちは口々に声をあげた。
「このまま深空に放り込んでやりましょうぜ!」
「そうだそうだこいつらのせいで、こっちの浮玉もいかれちまったんだから」
「人買いに売りさばいちまいましょう。性根の腐ったやつらでも修理費ぐらいの金にはなりますぜ」
「へへへ、よく見ると隊長さんは別嬪さんじゃねえか、じゅるる」
「あら、こっちの男の子なんかプリプリして美味しそうね♪」
・・・・・・今更ながら、どっちが悪党か分からなくなってきたぜ。
というかオスピーだろ最後の絶対。
「くっ、貴様等のような賊の慰みものになるぐらいなら死んだ方がマシだ!」
リグレットが顔を歪めながら、俺たちの方を睨んだ。
本当に舌でも噛みそうな勢いだ。
「ふむ・・・・・・。おい、マコト。お前の意見を聞かせろ」
キャプテンがそういうと、敵味方両方から視線が一斉に俺に向けられた。
「いや、こっちに話を降らないでくれよキャプテン」
「何言ってやがる。お前のおかげであの劣勢の状況から勝てたんだ。貢献者に褒美をやるってのが船長としての義務ってもんだ。がははは」
キャプテンは、ドヤ顔で豪快に笑った。
俺からすれば、別に勝てただけで満足だし、面倒事を回されたとしか思えない。
「貴様が・・・、貴様のせいで・・・」
リグレットと敵兵さん方がまるで親の敵を見るかのように俺を睨んでくる。
いや、確かにあんた方からすれば、敵なんですがね。
「う~ん。と言われても、どうしたもんか」
そう言いながら、俺はリグレットを見る。
確かにさっき船員の誰かが言っていたように、近くで見るとリグレットが美人であることがよく分かる。
灰色の髪も色は濃くなくどちらかというと陽の光に反射していて銀色に近く、目は鋭く尖っているが、この目で流し目とかされたら、きっと魅了されてしまうに違いないと思えるほど、綺麗なスカイブルーの瞳。肌も白く、頬も縛られているせいか上気してうっすらと赤みがさしている。船と船の間まで通るほどの声量が出るとは思えないほど、口は小さく可愛らしい。
体も軽装甲冑に隠されているが、甲冑からのぞく四肢は、引き締まっているが、筋肉質ではなく、女性らしい柔らかそうだった。何を考えているのか、もじもじと居心地が悪そうにさっきから、体をよじっていると、余計に色っぽさが・・・・・・
バキッ!!
「いてえええ!」
俺がリグレットを見ていると、いきなり鈍痛が俺のプリプリなお尻から体全体に響いた。
「さっきから何嫌らしい目で、あの女のこと見てんのよ!」
「な、何しやがるベティー・・・・・・、今まで空気みたいにしゃべらなかったくせに」
「うっさい!誰が空気だ!それより、あんたまさか変なこと考えてないでしょうね」
「変なこと?どういうことだ?」
「え、えっと・・・・・・へ、変なことと言ったら変な事よ!」
「なんだよそりゃあ」
自分のおケツを撫でながら俺は立ち上がる。
まあ、確かにひどい目に合わされたが、人間寛容な心と態度が大事だよな。平和を愛する一日本国民として、少しぐらいの平和活動しないとね。
「キャプテン」
「おうマコト。決まったか」
「ああ、許そう」
ーーっ!!ざわざわ
俺の一言が、敵味方両方に衝撃を与えたようで、皆目を点にして驚いている。
「マコト」
「なんだキャプテン」
「それでいいのか?」
「ああ」
「しかし、俺もこいつらも納得はしていない。納得させるだけの理由があるんだな?」
「いや、ない。と言うより、納得して欲しいなんて思わない」
俺は、息をゆっくり整え、言葉をつないだ。
・
「おい、確かお前リグレットだよな?」
「気安く名前を呼ぶな!」
「威勢がいいのはかまわないが、取りあえず俺の質問に答えろ」
「私は、なにを聞かれても答えるつもりはない。拷問されたとしても口は割らないぞ」
「んなことしねえよ。そんなことより、お前等はこの船のやつらが何をしたって上から聞かされたんだよ」
俺がそう聞くと、リグレットは小馬鹿にしたように笑う。
「何をだと?それは貴様等が一番よく知ってるだろうが」
「悪いな。俺はこの船に乗ってから一週間しか経ってないから、全然しらねえんだわ」
俺がそういうと、リグレットは少しだけ目を開き、すぐに眼光を強めた。
「なら気の毒なことだな。こんな悪逆非道なやつらの仲間になるなんてな」
「いいから言えよ。事と話によっては今すぐその縄をほどいてやるよ」
俺の一言に周りが騒がしくなる。
「・・・・・・いいだろう。その言葉違えるなよ」
「男に二言はねえよ」
「・・・ふん。まず、帝国領内にて無抵抗な帝国貴族に行った暴力行為に始まり、「ダウト」ーーんな!?」
「おい、ベティー。俺がさっき聞いた話とリグレットの認識にずれがあるみたいだぞ」
俺が振り返りベティーにそう聞くと、ベティーはこちらに近づいてきて、リグレットを指さしながら答える。
「嘘に決まってるでしょ!こいつらがでっちあげたのよ」
「なんだと貴様!こちらは正式な軍の公式文章であげられた報告だぞ」
「はいはい。落ちつけ二人とも、話を戻すぞ。それで他にはどんなことがあるんだ?」
「ふん。帝国軍艦への襲撃、領地内での強奪行為、帝国軍人殺害、まだまだこれだけじゃないぞ」
「嘘よ!マコトどっちを信じるのよ!」
「ベティー落ち着け。キャプテン。今までの中で見覚えがあるのはあるか?」
俺がキャプテンにそう聞くと、キャプテンは堂々とした物言いで答えた。
「貴族のクソ坊主をぶん殴った以外はねえな」
「だろうと思ったよ。ということだがリグレット殿?」
「そんなはずあるか!こちらは正式な被害報告があるんだぞ」
「その報告書とかは、どれくらいの信憑性がある?」
「そんなこと、疑いの余地などない完璧なものだ」
「いったな。その言葉違えるなよ」
俺は人差し指を立たせ、リグレットに見せる。
「ひとつ、襲撃された帝国軍艦の規模は?」
「巡洋艦3隻だ。うち1隻が船体右前方に砲撃による深刻な損傷を受けている」
「その報告になんの疑問も浮かばないのかお前?」
「なんだと!?」
俺は続けざまに中指を立たせる。
「ふたつ、強奪が行われた領地に駐屯兵かもしくはそれと同じようなものはあったか?あとは、奪われたものは」
「当たり前だ。帝国では領地には最低1小隊が配備される。奪われたのは1週間分の食料や金銭だ」
「なるほどなるほど」
俺はうなずき、最後に薬指を立たせる。
「みっつ、殺害された帝国軍人の身分は?
「2等兵だ」
「・・・・・・・・・なあ」
「どうだ。お前もこいつらの悪行が分かっただろう?」
「バカだろお前」
「んな!?なんだと貴様!」
俺はリグレットの額を指で一回強く突いた。
「少しは考えてみろ。まず、巡洋艦3隻が襲撃されて1隻は深刻な被害?おかしいだろ。お前の船がどれほどのものかは知らないが、お前等の1隻相手に苦戦していたこの船が,3隻を相手にして無傷?しかも1隻にでかい被害を与えた?おかしいとは思わないのか?」
「そ、それは」
「次に、駐屯部隊がいるのに簡単に物資の強奪?しかも食料と金?俺だったらまず、敵の無力化を確認してから全部奪うわ」
「全て運び出すには時間やリスクが・・・・・・」
「そんな計算高いことを考えているやつがワザワザ全滅覚悟の敵陣強奪をやると?」
「そ、それは」
「最後に、殺害された帝国軍人が2等兵?こういっちゃなんだが、なぜ2等兵なんだ?俺だったら敵の指令官クラスのやつを狙うわ」
「・・・・・・・・・」
「おかしいよな。おかしいだろ?お前がいう報告はどこまで正確なんだ?軍艦がぶっこわれたのは、操舵ミスじゃないのか?強奪ではなく、その駐屯部隊が横領してるんじゃないのか?殺されたやつは本当に軍人だったのか?」
「うるさい!うるさいうるさいうるさい!」
俺が問いつめるとリグレットは頭を振り聞こうとしない。
しかし、俺はそれを許さない。
「いいかよく聞けよ。お前は何も間違っちゃいない。軍人が上層部の指令に従うのは当然だ。むしろ模範的な軍人と言える。しかしだ。だからと言って事実を見ようとしないでただただ命令に従うことで思考を止めるなら、それは人ではなく、ただの機械だ」
「な,何を言って……」
「例えどんなに理不尽でも、考えることを止めず、自分の信念に従って行動しろって言ってるんだ。そうしないならすぐにでも軍から抜けろ。迷惑をするのはいつだって平和に暮らしている奴らなんだから」
「お前が、お前に何が分かるというのだ!」
「別に俺自身高尚なやつとは思っちゃいねえよ。でもな、少なくとも誤解を受けたまま恨まれるのは誰だって気に食わねえに決まってる。お前等が話し合いもせずにこの船のみんなを犯罪者にしたこと。みんながお前等の裏にいる黒幕の代わりにお前等に八つ当たりしようとしていること。俺は全部気に食わねえよ」
「・・・・・・・・・・・・」
俺はリグレットから視線を外して、振り返り船のみんなを見る。
「みんな、確かにこいつらは帝国のやつらだ。帝国がこの世界で何をやっているかもベティーから聞いた。でも、みんなを犯罪者に仕立て上げたのはこいつらか?ちがうだろう?それにこいつらに何かすれば、みんなもそのどうしようもねえ野郎と同じ土俵にあがることになるんだ」
俺は拳を握りしめる。
「俺が知っているみんなは、どこの誰かもわからねえ俺を快く受け入れてくれるようなでかい器を持った本当の空の男たちだ。いきなり鉛玉一発ぶち込んでくるようなやつらだけど、ここは寛大に許してやろうぜ!」
俺がそう啖呵を切った後、皆顔を合わせてお互いを見る。
そして、最後に野太い男たちの声が船いっぱいに広がった。
「そうだ。俺たちは帝国のバカ野郎とはちげえ!」
「奪うは恥、殺しは御法度!」
「なぜなら俺たちは・・・」
「「「空の男だからな!!」」」
がははははとキャプテンのような威勢の良い笑い方で船員たちが誇らしげに胸を張った。
「心が乙女な私も男なのかしら?」
オスピー、あんたは列記とした男です。
「よしてめえら!こいつらの縄をほどけ!」
「了解船長!」
キャプテンは清々しい顔をしながら、そう命令して船員たちがリグレットたちの縄をほどいた。
拘束が解けたリグレットたちは、複雑そうな表情を浮かべながら立ち尽くす。
キャプテンはそんなリグレットたちに近づいて右手を差し出した。
「今日のところはマコトの顔を立ててやることにした。マコトに感謝するんだな」
「ふ、ふん。お前が貴族に手をあげた罪は事実だ。覚悟するんだな」
「いつでもかかってきな。返り討ちにしてやる」
二人はそう言い合って互いに握手を交わした。
これで少しでも互いを認めあうことが出きれば良いけど、まあ最初はこんなもんだろ。
俺としたことが、柄にもなくどこぞの学園都市の幻想殺しさん並の説教をしちまったぜ。
んまあよし、後は「戦後処理」だけだな!
そう思い俺は、二人に近づいて行く。
「おうなんだマコトまだ言うことがあるのか?」
「ふん。この際だ。後少しぐらいならお前の言葉に耳を貸してやる」
「そうかそうかそれじゃあ、おまえら」
俺は一呼吸入れて、
「とりあえず、脱げ」
船にまた静寂がおかりなさーいした。
俺の言葉が信じられなかったのかリグレットは口をパクパクとして言う。
「・・・・・・聞き間違えだろう。もう一度言ってくれないか?」
「とりあえず、おまえら全員、脱げ」
ざわ・・・ざわ・・・というざわめきが聞こえる。
と思ったら、すぐさま俺のおケツに再び鈍痛が走った。
「いってえええ!な、なにすんだベティー!」
「なんすんだじゃないわよ!せっかく言い雰囲気になってたのに!不覚にもあんたの言葉に少しだけ感動したのに!私の感動を返せこの変態!鬼畜!」
「ご、誤解だ!お前のような桃色頭じゃねえんだから」
「誰が桃色頭ですってえええ!」
「ちょ、ストップストップ説明するから!」
ということで、ベティーが怖いのと俺のおケツがこれ以上の鈍痛に耐えられそうにないので、駆け足で戦後処理について説明した。
確かに許すと言ったが、それは命云々とか責任の所在とかそういうもので、誤解だろうがなんだろうが、実際この船も少なからず被害が出ているので、その分の損害賠償は大事。というよりその損害賠償をすることで、本当の意味で後腐れなく許したことになる。
子供がよそ様のおもちゃを壊したなら、それを弁償するのが親の勤め。つまり、この場合帝国さんに支払ってもらうこと。どうせリグレットたちが身につけているものは、軍から支給されたものだろうし、甲冑だって売れば二束三文以上にはなるだろう。つまり何が言いたいかというと、
「それはそれ。これはこれってことだ」
「わからない。私はあんたが言っていることがわからないわ」
分からない結構!
というか、命の危険にさらされて、全く何の損もなく許されるなんて虫が良すぎるよね!僕そういうの嫌いです!
ちょっとぐらいご褒美があってもいいよね!わくわく!
「ということで、脱げ!今すぐ!」
「断る!」
「ちゃんと請求書も書くし、おまけに船も直してやるから」
「おいマコト!紙とペン持ってきたぜ!」
「おおマイカル。さすがは俺の心の友!」
というかマイカル。今まで全く出しゃばらなかったのに、エロい臭いを嗅ぎつけて登場とか・・・・・・。
あ、そういえばお前むっつりスケベだったか。納得!
「さあ!さあさあさあ!」
「止めろ!くるな!寄るな!近づくな!お前ら何とかしろ」
そういって、リグレットは自分の部下たちの方を振り返る。
そこにはすでにパンツとアンダーシャツ姿になっていた部下たちがいた。
「後は隊長だけです!」
「さあ、隊長もご一緒に!」
「みんなで脱げば恥ずかしくないですよ!」
「きさまらあああああああああああ!!」
そうして、しばらく渋っていたリグレットだが、ついにはあきらめ、屈強な空の男たちの前で公開ストリ○プを行う羽目になった。
眼福でした。
「お前、名前はなんというのだ」
「え、三島マコトだけど?」
「三島、マコトか・・・・・・。その名前、その顔覚えたからな・・・・・・ふふ、ふふふふ」
なんだろう。言葉だけなら好意を持たれていると思ってしまうが、表情と声色からとても夜道は歩けないような気がしてきた。
あの後、おいしい思いをした俺は意気揚々とリグレットたちの船を物色して、加工前の浮石が積み込まれていたので、それを材料に破損したこちらの船とリグレットたちの船の浮玉を俺の能力で修理してみた。出来てしまった。
そして、金になりそうな軍の支給品とあのでかい大砲をいただいて、ちゃんと損害賠償請求書と受領書を帝国宛の差出人俺で書いて渡した。ちなみに代筆はマイカル。
あちらの隊員たちも麗しき隊長の下着姿を見て不満なく、快く物品の引き渡しをしてくれた。ちなみに食料には手を出していない。飢え死にされても後味悪いしね。食べ物の恨みは怖いし。
帝国までの帰路の間、隊員たちが熱きパトスの赴くままにリグレットを襲わないかという懸念はあったが、着替えたあと、やり場のない怒りを隊員たちをボコボコにして瞬殺しているところを目撃して、その懸念は大空へと消えていった。リグレットさんマジでキレのある攻撃だったぜ。
そうして、リグレットたちは祖国へと戻っていった。
あんまり怒られないといいけどなーと思いながら、俺はきびすを返すと、目の前にニコニコプッツンのベティーさんがいた。ついでに手をボキボキ鳴らしてる。やっぱりストリップはやりすぎましたかね。ははは。
後は書かなくてもわかるだろう。
おあとがよろしいようで。
序章 完
まだまだ,どこからの学園都市の幻想殺しさんのようなキレのあるお説教は書けませんでしたが,まあ僕が今書ける最大限の描写でした。
後,主人公は偉そうなこと言っておきながら気分とノリで自分の信念を曲げるやつなのでご容赦を。
次回からようやく主人公はレッグストロング一行とは離れます。
乞うご期待してくれると本当に嬉しいです^^
ではでは




