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40 事件の真相と恐るべき秘薬。

 ★★★



  事件のあらすじについて考察しよう。

 あの日、俺と高水義正は同じ個室で話をしていた。

 その時、ほかのみんなは各自個室で待機していたことであろう。しずるに至ってはピカイチを目撃していたのだから深夜にちょっとだけ外出したようだ。

 セーフティスタッフの皆さんは判らない。


  そして、事件当日での出来事。

 俺が目覚めると喉が渇いたのでキッチンの冷蔵庫へと向かった。

 すると待っていたのは争ったかのような凄惨な光景。調理器具やらがブチまけられた床である。

 さらに、最奧にある待機室からの異臭に気付く。

 駆けつけると、そこにはーー高水義正の滅多差しにされた死体が転がっていた。

 それが第一の事件。


  次に俺は通路でキャンディさんに出会った。

 そしてもう一度だけ高水義正の死体を確認しに行くと、なくなっていた。

 地面に転がった頭部も、滅多差しにされた遺体もない。

 そして、ピカイチさんに解決してもらおうとしたけれどそれもできなかった。

 ピカイチさんが集会場で、殺されていた。

 しかも今回はバラバラ死体。

 十三の肉片になったピカイチさんと血まみれの鎧があった。

 これが第二の事件。


 そして、ここで富山しずるとバッタリ出会う。

 彼女の口から託児場で起きている事件の片鱗をみる。

 案の定、散りばめられたセーフティスタッフ六名のバラバラ死体。

 これが第三の事件である。



 ★★


「お前は、最初に俺が眠ったのを見計らって事件の準備を始めた。俺を殺さなかったのは自分のアリバイを証明してくれる人間を残しておくためだ。そしておそらく最初に眠っているピカイチさんを個室で殺害し身体をバラバラにした上で”託児場”に置いた。そのときにセーフティスタッフを何人か懐柔して協力させたんだろう」


「……なるほど」


「そしてセーフティスタッフのうち五人をバラバラにして殺した。なるべく原型を留めないよう入念に刻み込んで託児場にばらまいたんだ。そのうちの体型が近い一人を今度は”高水義正”の服を着せて包丁で滅多差しにしたんだ。ご丁寧に首まで落とした上でね」


「…………続けて」


「そして準備は整った。お前は厨房を荒らして本命である”空になった冷蔵庫”の中へと姿を隠した。そして朝になって俺の悲鳴が聞こえた後、死体で本人確認できないように隠したんだ。たぶん入れ替わりで空になった冷蔵庫にでも入れておいたのだろう。そして向かいにある”集会場”にてセーフティスタッフの遺体をばらまいた。高水義正と富山しずるにしか素顔を知らないからできる芸当だ」


「…………」


「お前は最後にまた身を隠すことで”自分を殺した上で生かすことに成功したんだ」


 シン、とした静寂が空間を占める。

 不敵に笑うこともせず、富山しずるの外見をした男は顔を下げている。

 話が終わったと言わんばかりに顔を上げると、陽気な調子で話し始めた。




「へ? なにを言ってるんだい? 僕は足が不自由だったじゃないか。本当の犯人は最後まで行方が判らなかった富山しずるで決定だよ」


 高水義正はそんなことを言う。


「いやいや、あたしじゃないって。それを言うならあんな朝方にうろうろしていたキャンディの方が怪しいじゃんか、ほらほらキャンディが犯人で決定やよ」


 富山しずるはそんなことを言う。


「おいおいおい、私にふるんじゃねーよ。そもそもダーリンを殺すなんて芸当ができるわけないだろうがよ。やっぱり殺された振りをしてたのは自殺願望があったダーリンの方なんじゃないー?」


 キャンディさんがそんなことを言う。


「おいおい、私を疑うのかいキャンディ。だいたい私みたいなヒーローがみんなを殺すなんてあり得ない。ここは裏をかいて、途中退場したパンサーを疑うべきじゃあないのか」


 ヒーロー・ピカイチが言う。


「おいおいピカイチよぉ、あんまりなんじゃねぇの? そこの坊主にボコボコにされた俺を犯人扱いなんてよ。つーかこういうときは第一発見者を疑うのが王道じゃねえかよ」


 パンサーがそんなことを言う。


「もう止めろ」


 ようやく俺が言う。


「お前、いったい何人分なんだ?」


「ぼくは、いったい何人分なんだろうな」


 頭がおかしくなる。

 目の前にいる高水義正はひとりで富山しずるとキャンディさん、ピカイチさんそして氷見ゆうのすけの声真似をし始めたのである。あまりに真に迫る神業に思わず身が震える思いであった。



「俺の声真似をするな! ぶっ飛ばすぞ」


「僕に声を真似させるな! ぶっ飛ばされるぞ』


 とにかく通じない。この”こいつ”は人間なのか。

 ケタケタと愉快そうに笑うと、胸を張って俺に向かい合った。


「どうだい、これが僕の特技だよ。”偽薬の長”の力なんだ。すごいだろう?」


「やはり、おまえも悪性新生物」


「うん、そうだよ。”偽薬・本命”を司る使者、名前はないけれど、ヒーロースターは”イカサマ”なんて呼称を採用していたね。んじゃ僕のことはイカサマって呼んでよ」


 つかみ所のないやつである。


「キミはなかなか鋭い男だよ、でもこうして富山しずるから引き離せたのはラッキーだった。あの女がいたんじゃあ話さえ聞いてもらえないからね」


「お前と話すことなんかない」


「そういきり立つなよ、トリックスター。キミにも関係のある話なんだぜ? なんたって彼女の隠している秘密について話してやろうってんだからさ」


 このとき、不謹慎にイカサマの声に少しだけ期待した。

 ほんのちょっぴりだけ耳を貸す自分が内にいた。



 ★★★

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