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第五章 その弐 拒絶されればなお燃え上がる。

 トリガーハッピーエンド




 氷見ゆうのすけがルートに入界して、ひとりで行動することは初めてだった。

 いつもお節介のしずるが側にいたので、まるでアフリカの奥地に放り出された気分だったがゆうのすけはただ待てば良いだけなので簡単な仕事だといえる。


「どうやら、こっちが当たりらしい」


 『地獄の扉』を抜けると、そこは豪華なスウィートルームであった。

 キングサイズのベッドにソファー、丸テーブルに現代風のウィンザーチェア、目が痛くなるようなショッキングピンクの壁紙、西洋の趣があるクローゼット、向かいには入り口と思しき扉がひとつある。


 室内に誰もいないことを確認する。

 腰に備え付けた『ブロークンハート』の柄に右手を添えつつ、手当たり次第に部屋を物色しはじめた。もちろん細心の注意を図りつつ、ものに触れた手袋をその場に捨ててしまうくらいの徹底振りであった。


「本当に、ただのホテルの一室みたいだ」


 ベッドの下、クローゼットの中な誰かが潜んでいそうな場所もしらみつぶしに探していったが、どうやら問題ないらいしい。この部屋は完全に通過点に過ぎないのだろう。


 ゆうのすけは安心したと同時に気がかりなことを思い出す。

 この地獄の門の先が豪華絢爛なスウィートルームである様子からしずるの向かった天国の扉はおそらく地獄絵図なのだろう。そう思うと少しだけ心配になった。


 ゆうのすけはしずるの携帯を鳴らす。

 しかし、さっきまでアンテナ三本も立っていたはずなのにいつの間にか圏外になっていることに気付いた。地獄の扉を抜けた当たりで電波が途絶えたのだろうか。


「…………ここじゃあ携帯は使えないのか」



 ゆうのすけは携帯をリュックに放り込む。

 そして、ウィンザーチェアに深々と腰を下ろして天井を見上げた。動きたい気持ちはあるが、ゆうのすけの実力では帰って足手纏いになるのは目に見えていたからだ。

 ただひたすら待つ。ゆうのすけにできるのはそれだけだ。


 しかし、思った以上に早く事は進みそうである。



「もしもーし、ゆっちゃーん。迎えにきたよ」



 出口の扉から聞き覚えのある声を聞く。

 富山しずるだ。思っていたよりもずっと早い到着であったが、存外に天国の扉もただのスウィートルームだったのかもしれない。

 ゆうのすけは椅子から跳ね起きると扉の向こうに話しかけた。



「ずいぶん早い到着だったな、しずる。天国の扉はどうだった?」


「うん、まあまあやったよ。それより早くこの扉を開けてよ。話したいことが山ほどあるんやからさぁ」



 はいはい、と生返事をするゆうのすけ。

 しずるの声に急かされながら、仕方なくドアノブまで歩いて行く。今まで二度も握った竜を模した回転扉のドアノブを手に取る。もちろんしずるを招き入れる為に。



「むやみに開けてはいけない。ここでは命取りだ」



「……、……はい?」



 振り返れば、真っ白な髪の好青年が立っていた。

 藍色のパーカーにTシャツ、黒のジーンズを履いた今時の若者。

 真っ白な髪を隠すように深々と帽子を被っていた。

 ……パーカーのフードは被らないんだ。


 ここでふたつ、疑問が浮かぶ。

 なぜこの男はこの部屋にいるのだろうか。部屋には誰もいなかったし、天国の扉はひとりしか入れない作りになっているから、ゆうのすけが出るまで誰も開けることはできないのに。


 そして、なぜ声を掛けるのだろうか。

 その真意を測りかねる男の雰囲気にゆうのすけはブロークンハートを鞘から抜ききる。箒よりも短く、包丁よりも長い刀身をわざと男へと向けて構えた。


「おいおい、初対面の人間に刃物を向けるなんて感心しないな。仮にも命の恩人だっていうのに」


「あなた、誰です?」


「心配いらないよ。ボクは正義のヒーローだ」


 変な人が、出てきた。




 



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