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第五羽:うさぎは追われ、狩られる。

 寝心地が悪い。

 まず思ったのがそれだ。俺が転がっている場所は、土臭い場所だった。

 目を覚まし、上体を起こすとオニーサンがいなくなっていた。

「―――よる、うさぎ――。アリス―――、―――な。うさぎの――減る」

 上から何かが聞こえた。オニーサンの声ではないのは明らかだ。

 その声は女の子特有の高い声だった。

 ゆっくりと穴から顔を出すと・・・。

 そこには、白い服に白い靴を黒髪の女の子がいた。女の子と言えるのは、俺の知っている女の子たちと同じくらいに見えたからだ。

 ただ、異質なのは白い色というところだ。何も穢れの知らない色。これから染まろうとする色。

 この異質に気づいた時には、手遅れだった。

「アリスによる、うさぎ狩り。アリスよ、うさぎに食べられるな。うさぎの共喰いで褒美が減る・・・あなたはうさぎ。すべてを食べることが許されている」

「え・・・どういうこと、だ?」

 俺の目を見て言葉をつむいでいく彼女。

「聞く相手が違いますよ。あなたが聞く相手は・・・・」

 彼女が指すところを見ると、木々の葉が揺れているだけ。

「何もないじゃ・・・どこに行ったんだ?」

 彼女のほうへ振り向くと、誰も何もいなくなっていた。彼女がそこに存在をしていたことさえ無いかのように。

「お、もう起きていたのか。なんだ?変なものを見てしまった、という顔は?」

 彼女が指差した場所からオニーサンが怪訝な顔をしながら現れた。

「なんでもない。どこに?」

「ちょっとな。それよりも、説明をしたいことがあるから、いいか?」

 人差し指で俺が寝ていた場所を指す。

 そこで何を話すのだろうか。

「でだ、昨日の続きなんだが・・・このサバイバルゲームにはチームがある。そのチームは2つ。『うさぎ』と『アリス』だ」

「アリスによる、うさぎ狩り。アリスよ、うさぎに食べられるな。うさぎの共喰いで褒美が減る・・・」

「・・・どうして、そのことを知っている!?ケイ、本当にこのゲームは初めてか?」

「さっき、上であったんだよ!それを言っている女の子に!」

「その女はどんなやつだ!?」

「・・・全体的に白かった」

「そうか」

 肩を落とし、いかにも落ち込んでいる姿に俺は疑問に思ったが口を出せれるような空気じゃなかった。なぜ、そこまで落ち込むのか。あの言葉に何が隠されているのか。

「ねえ、その人に聞けって・・・言われた」

「何を?」

「その・・・アリスによる、うさぎ狩り。アリスよ・・・っていうやつの意味」

 オニーサンは数分俺を見ると、話す気になったのか重そうに口を開いた。

「その言葉通りだ。アリスはうさぎだけを狩ることができる。うさぎはアリスとうさぎを食べること・・・殺すことができる。そして、うさぎは裏で裁かられた裏の人間・・・長期懲役の犯罪者で構成されている。アリスはこのゲームの主催者たちの駒だ」

「・・・・」

「うさぎはここで人を殺すたびに懲役期限が短くなっていく。アリスは殺すたびに金がもらえれる。俺が知っているのはそこまでだ」

「・・・おれ、うさぎって言われた」

「はあ?お前みたいなのがか?まあ気にするな。アリスさえ殺さなかったら、最低命は失わねぇから」

 このサバイバルゲームが終わる、そのときまでここにいればいいのか?そうしたら、俺は生きてここから出てこれる・・・。うさぎなのか、アリスなのかは気にせずに、ここにいれば・・・。

バァン!!

 突然上から響いた。

「・・・っつ」

 オニーサンに押され、壁にぶつかった。俺の場所は出入り口から離れた壁際へと移動させられた。

「っち・・・つけられていたか」

 オニーサンは銃を取り出し、構え、出入り口の扉を少し開ける。

 すると、引き金をすぐにひいいた。

 上からは人が倒れる音が微かに聞こえた。

「ケイ、これがここで生きていくための術だ。覚えておけ」

「・・・人殺し」

「ああ、人殺しさ。だけどな、俺が殺さなかったらお前と俺は死んでいた。それでいいのか?生きていたくないのか?」

 

 出て行くオニーサンをただ見送る俺。

 人殺しについて受け入れることのできない俺。

 どうして俺はここで銃を持って、震えているのか。





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