第四羽:うさぎは茶色の寝床を探す。
さっさと歩けと言わんばかりに、俺の手を引いて先を歩いて行く。
あの嫌悪感のある匂いとは逆方向に。
「どうした?そっちになにか居たのか?」
「気のせいかも・・・・」
「言ってみろって。万が一のことを考えてな?」
その場所から、視線を外しオニーサンへと向いた。
俺の口を開くのを待っていたオニーサンは催促する目で見てくる。だけど、俺の口は開かなかった。
数秒後、オニーサンは俺に興味を無くしたのか、掴んでいた手を離し、さっきのように歩いて行った。その後を、俺は慌ててついていくが、この歩き慣れていない場所のためかオニーサンと俺との距離は広がっていく。
オニーサンは俺の居る場所が分かっているのか、後ろを見ずに止まって俺を待ってくれた。
「・・・この辺りにポイントが・・・」
景色は変わらず、ただの緑のところでガサガサと探していた。何かを。
オニーサンの行動を見ながら、太い幹のとこへ腰をかけた。
「おいおい。ケイも座ってないで、手伝えよ。これが無いと、これからを生きていけねえんだからな」
そういっては手を草の中に突っ込んでガサガサし始めた。俺もオニーサンに習って、草むらの中に手を入れた。
今更だが、俺は何を探せば?と疑問に思い、オニーサンに話しかけようとした。
俺は後ろを振り向いた。
そのオニーサンは、いなくなっていた。
ささあぁ。と風が緑を揺らし、俺の髪も揺らした。
「ケイ!そこで立ってないで、こっちに来い!今から、ここのルールとか教えてやるから」
草むらからオニーサンの顔がひょっこりと現れた。表情は深刻で眉間にしわを寄せたものと違って、陽気で何かイタズラをしでかそうとしている顔だった。
オニーサンの顔が引っ込んだところに、四角い穴が不自然にも開いていた。その穴からオニーサンの陽気な鼻歌が少し漏れてきた。曲は分からないけど、なんか聞いていると少し古くさかった。
中に入るとゆらゆら揺れる蝋燭の光がオニーサンと茶色い壁と天井を照らしていた。
「やっと来たか。ま、辛気臭い話になるから上手いもん食いながらにしようぜ。上手いって言っても、ケイがいつも食べてるやつよりかは劣っているけど」
ホイと緩い半円を描いて俺の元へ投げ渡された、カロリーメイトぽいスティック状の食べ物。その食べ物を見た途端、そういえば今まで何も食べてないし飲んでなかったことに気が付いた。手元にあるカロリーメイトぽい物を見下ろすと、喉が異常に乾いてくる。
「・・・たしか、水は・・・と、あった、あった。ほい、これもな・・・腹はきっと壊れないはずだから」
「・・・ありが、と」
「・・どーいたしまして。でだ、まずここの土地について話すな。ここは世界各国から切り離された孤島で、広さは東京ドーム2~3個分と・・・結構な広さなんだよ。そして、本題。この孤島で何をしているのか。分かるか?ヒントは武器を使用できる、ということ」
オニーサンの問いに、ただ首を傾げるしかない。
オニーサンの話では、ここは島と武器を使用する人がいるとしか分からない。この島で何をしているのかということは分からない。
閉鎖的な島、そして俺が持っていた銃と関連されるもの。閉鎖的な島、銃。閉鎖的な島、じゅう。へいさてきなしま、じゅう。
「・・・だよなー。まず、ここで行われているのは『サバイバルゲーム』。このサバイバルゲームは、ケイが知っているようなものじゃなくて・・・・あれだな。一種の戦争だ。選ばれたやつと犯罪者たちが殺しあう、マジ死のサバイバルゲームだ。って、変な顔すんなよ。言っとくけどな、お前もここに居る限りは・・・人を殺す ことになるんだからな?」
「・・・ひと、をコロス・・・」
「ああ。今までにケイみたいなやつに出会ったけど、お前みたいな本当に何も知らされてないのを見るのは初めてだな。とりあえず、今日は寝ろ。そしたら、明日は嫌でも歩かせてやるから」
「分かった。・・・」
「なんだよ?顔に何かついてたか?」
オニーサンは顔を指して聞いてくる、俺は首を横に振って答えた。なんだよっと促してくるが、俺はそれを無視して眠りに着くために横になった。
無視かよ、と突っ込みを受けるが、それは俺の耳から脳に届くまでにいたらなかった。
俺の脳はオニーサンが俺を撃たないことについて考えないようにと避けていた。
知ると恐ろしいのだと感じていたに違いない。
「啓太くん、君はいつまで生きれるかな?」
「ムリだろ。あの男は仲間殺しのうさぎだぞ」
「そうかな?意外とあの男は啓太くんを守るかも」
「・・・ないな。おい、さっさと戻るぞ。あいつが心配だ」
「なによー。あの子はこのイカれたゲームに参加してから負け知らずなんだから、簡単には死なないわよ」
2人の様子を木の影から見ていた、男と女。
黒い影に隠れていて、何も見えないところにいた。ただ声だけが小さく聞こえた。
女が口を閉ざすと、そこから何も音がしなくなった。
彼らはどこかに去ったようだ。