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幼少編  作者: 豆タン9
7/12

亀裂

この物語はイジメや病気を助長および馬鹿にする目的ではありません。この話はイジメを含む一部作者の体験を織り交ぜたフィクションです。精神的に不安定な方や気分を害す方、感情的になりやすい方などは閲覧を控えてください。




登場人物




早川イサム(勇)


一卵性双生児の兄。弟より小柄で気弱な面もあるが努力家。父のサッカーに憧れる。




早川マサル(勝)


一卵性双生児の弟。明るくて素直な活発な少年。気弱な兄を支える優しい子。いつも兄と勘違いされている。




早川ソウスケ(宗佑)


双子の父親。サッカーJ2リーグのプロ選手。




早川ヨウコ(陽子)


双子の母親。フリーのカメラマン。取材の時に宗佑と出会い結婚。双子を出産している。

今は専業主婦をしている。

兄弟でも仲の良い兄弟とそうで無い兄弟がどうしても世の中には存在してしまう。考え方の相違や歳の差様々な要因が絡むと思うがこの双子達は前者だろう。支える者と支えられる者、助けるものと救われる者。どういった形であれつり合っていれば崩れる事のないバランス。その崩壊の糸口は思いのほか近くに存在している。

 

週一だったサッカースクールに比べ、ほぼ毎日学校の放課後行われるスポーツ少年団ではフィジカルの成長が段違い変わっていた。日々筋肉痛になり擦り傷だらけの息子達を見る度に陽子思う。洗濯物が多過ぎる…と。


夫である宗佑の物だけでも多いと思っていたのに、成長真っ盛りの息子二人が毎日泥だらけで帰って来るだけで母親からすれば地獄である。唯一の救いは兄イサムのオネショ癖が三年生になって治っている事。


イサムには妊娠の時から心配させら生れっぱなしで気が休まる時が無かった。心臓の手術の時も突然胸を押さえて苦しむ息子を抱えて病院に行った日の事もつい昨日の様に思い出す。そんな事をイサムの小さなパンツを畳みながら思い返していた。

 

4月も半ば、サッカー大会出場メンバーの発表が出された。大会は低学年(一、二年生主体)、中学年(四年生以下)、高学年(六年生以下)の三部門有り、古備こびスポーツ少年団は入団は三年生からなので中学年と高学年の二部門出場となる。双子が選ばれたかと言う話だがイサムが高学年の部にマサルは中学年の部でメンバーに選ばれた。


イサムは五、六年生の中に一人三年生で選出されてはいるが補欠、マサルは三、四年生の中でレギュラーと互いにベンチ入りと言う素晴らしい結果を残したのだが、マサルは少し不満だった。

『レギュラー』と言う事より高学年の部に選出されなかった事だった。


監督曰く、高学年の部は体力が必要という言葉がマサルには引っかかっていた。兄の選出だ。目の前で兄を支え手を引き繋いで来たからこそイサムの成長はマサル自身認めている。だが、『体力』はと言う説明は納得出来ない、イサムとの差を感じなかったからだ。


引っ込み思案で自分を出せなかったイサムが今では積極的に自分をアピール出来ている。今でも母親に嬉しそうにメンバー入りを話している。その姿にマサルは少し苛つきを覚えた。イサムが悪い訳ではない、頭では理解している。ぶつけようのない怒りの矛先は自分へと向かっていた。


「イサム、マサル。お風呂早く入りなさいよ」

「はぁい、直ぐ行く。まーくん行こ」

マサルの気持ちを察する事が出来ないイサムはマサルに笑顔でお風呂に誘う。


机に向かい本を読むフリをしていたマサルはイサムに気が付かれない様に、

「うん」

と笑顔で振り返った。

 

翌日マサルのクラスでもスポーツ少年団の話題が飛び交っていた。と言うのもマサル達の小学校地区のスポーツ少年団はプロ選手を多く輩出している上にサッカー名門高校の六芸館りくげいかん高校への入学の近道になるからだ。


その噂を流しているのが同じスポ少に所属する日高流星ひだかりゅうせいと言うクラスメイトだった。よくおしゃべりする子で三年生のクラス替えで初めていっしょになった子だがすぐにマサルも打ち解けていた。


彼も中学年の部でマサルと同じくレギュラーを得ているそのため自慢も兼ねてマサル達の事も話ていた。教室に先生が入ってくると席を離れていた生徒達は慌てて席に着く。


その日のマサルは一日中、憂鬱な気持ちになり授業の半分も頭に入ってこなかった。その日の放課後の練習も身に入らずミスを連発し監督から早めに上がって休む様に指示されていた。

 

着替えてイサムに声だけ掛けて帰ろうとしたが、五、六年生に囲まれて楽しそうにプレーしている兄を見て声も掛けれず帰宅してしまった。

「ただいま」

いつもより早めの帰宅と元気のない声に陽子も戸惑い、イサムがいない事にも違和感を覚えた。

「まーくんだけ?いっくんは?」

「監督が今日早めに帰って休めって…」

息子の元気のない声で陽子も慌ててマサルのおでこに手を当てる。熱が無い事は確認できたが明らかに様子がおかしい。


陽子はマサルをそっと抱きしめ、

「何があったの?お母さんに教えて」

マサルの小さな身体が震え出し溜まっていた全てを吐き出すようにマサルは大きな声で泣き出した。そんなマサルを泣き止むまで陽子は優しく抱きしめた。


落ちついてから事情を聴くとイサムに対する嫉妬心を抱いた自分を責めていたのだ。物分かりよく強い子だと勝手に思い込んでいた陽子はマサルの事を何もわかってやれて無かった事を反省した。


この子もイサム同様たった8年しか生きていない、まだ幼い少年なのだと。何時間マサルを抱いていたのだろうか、玄関からイサムの「ただいま」と言う声がした。

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