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幼少編  作者: 豆タン9
6/18

子の成長

この物語はイジメを助長する目的ではありません。この話はイジメを含む一部作者の体験を織り交ぜたフィクションです。精神的に不安定な方や気分を害す方、感情的になりやすい方などは閲覧を控えてください。


登場人物


早川イサム(勇)

一卵性双生児の兄。弟より小柄で気弱な面もあるが努力家。父のサッカーに憧れる。


早川マサル(勝)

一卵性双生児の弟。明るくて素直な活発な少年。気弱な兄を支える優しい子。いつも兄と勘違いされている。


早川ソウスケ(宗佑)

双子の父親。サッカーJ2リーグのプロ選手。


早川ヨウコ(陽子)

双子の母親。フリーのカメラマン。取材の時に宗佑と出会い結婚。双子を出産している。

子供の成長と言うものは、子供自身は長く、親にしてみればあっという間に過ぎている。袖巾上げした制服をほどいてもギリギリ着れるほどに双子は成長した。それもその筈もう小学三年生だ。同学年の子に比べまだまだ小柄ではあるものの今年の夏まで制服が保つかどうかわからない程に成長し、嬉しくも有り悲しい反面も有る。


「去年までは一緒にお風呂入ってくれてたのに、今は「男は男同士で入る」って悲しいこと言うのよ。私が着替えを持って入るだけでエッチ。なんて言うの、どこで覚えてくるのかしら」


向かいの伊藤ママに愚痴をこぼす陽子。

「うちは男の子いないけど女の子も中々よ。上の子の舞なんて普段大人しいのにお出かけする時は洋服選びで時間かけちゃって…あらイサムちゃんマサルちゃん行ってらっしゃい」


母親達が何を話していても特に気に留めず美月と双子達は登校して行く。

「今度三年生だけのチームで練習試合するんだ。ミズ姉ちゃんも見に来るでしょ」

「あーそれ僕から誘いたかったのにぃ」

イサムが軽く拳を上げマサルを威嚇する。「ごめんごめん」と謝りながら美月の返答を待つ二人。

「もちろん行くよ。お母さんにお願いするから日にちと時間教えて」

「えーっとね」

そう言いと日時を美月に伝える。楽しそうに登校する子供達を見送った後、母達の本格的な家事が始まるのだった。

 

三年生になりイサムとマサルは別々のクラスになったがイサムにも友達が増え以前より明るくなっていた。周囲から見ると大人しくのんびりした性格である事は変わり無いのだが、マサルをライバルと認識したあの日からたくましい成長を見せていた。ボールの扱いに四苦八苦していたイサムだが陰の努力でリフティングを百回以上熟せる様になり簡単なターンやフェイントはマサルにも匹敵する程だった。


そのマサルの方はと言うとフィジカル面は体力と筋力以外は六年生に劣ら無いため最近では六年生のグループに入って揉まれている。そのため三年生の中では群を抜いた存在になっていた。

 

元々イサム達の通うサッカースクールは毎日やっている訳では無く週一でクラブチーム所属やスポーツ少年団の子供達のレベルアップ目的やサッカーが出来ない地区の子供達の為の試合と言っても公式の大会などに出れる訳ではなかったがスクールを通じてクラブチームやスポーツ少年団の紹介はしてくれる仕組みになっている。実際、イサム達の住む地区で活動しているスポーツ少年団を紹介してもらっていて、次の練習試合を最後に退会を決めていた。

 

 練習試合当日



Uアンダー-9ナイン(9歳以下)のスクール生の実力で振り分けられたチーム構成で試合の勝ち負けよりもサッカーの楽しさを知る為に行っているこのスクールのイベントの一つとして開催され参加した子供達は勝ち負け関係無くお菓子袋とジュースが貰えるようだ。

 

イサムとマサルの実力はコーチ達の目からも均衡していると判断され、イサムは黄色のマサルは青のビブス(チーム分けの背番号付のベスト)を身に付けていた。


チームは赤いビブスのAチーム、青のBチーム黄色のCチームの3チーム、1チームに16人で8人制サッカーのルールで行う。8人制なのは全員がボールに触れる機会が増える為、1チーム16人は子供の体力考慮と交代制限を設けず全員フィールドに参加できるようにする為である。

 

まずはAチームとBチームの試合。コーチ達も双子同士の試合を見たかったのだろう、この試合にはマサルはスターティングメンバーに入っていなかった。ベンチから美月に手を振るマサルだったが、美月はマサル出ないからつまらないと愚痴っていた。

 

一試合終えて次はBチームとCチームの試合が始まる。もちろんBチームはベンチで見ていたマサルを含む8人に交代され初期メンバーは休憩していた。


フィールドに入る前に軽くアップして入念にストレッチで身体をほぐす二人を見た美月の顔は笑顔に戻った。フィールドに並び互いに一礼を済ませるとコイントスで先行を決める。ビブス番号はお互い8番、Cチームのキックオフで試合が始まる。


7番の子のキックでイサムにボールが渡る、Bの6番をサイドステップで交わしその隙に前線に出た黄色の6番にパスを出す数人を交わし中盤手前でパスを要求するイサムだったがマサルにマークに付かれた為、黄色6番の少年はパスが出せず青4番に奪われる。


味方がボールを取った事を確認すると即座に攻撃に参加するマサル。青7番とのワンツーパスで黄色ディフェンダーを交わし7番の子がシュートを放つがキーパーに阻まれゴールにはならなかった。悔しがるチームメンバーとコーチ、そして各自の親達。むしろコーチ含む大人達の方が熱がこもっているようだ。

 

キーパーのドロップキック(手に持ったボールをワンバウンドさせて蹴る)でパスを出し黄色4番がフォワードに向け大きく蹴り出した瞬間、一人少年が飛び出す。ジャンプと同時に大人でも難しい空中でボールの勢いを殺す胸のボールタッチでパスカットされた。着地と同時に足にボールが足に吸い付く。誰も予測できないインターセプトにCチームは焦りを見せた。


流れるようにシュートフェイントからのループシュートであっという間にBチームが得点を入れた。ビブス番号8番、マサルだった。


ゴールパフォーマンスに両ひざ地面に着け高々と両手を掲げると歓声が湧く。Cチームの子供達を心配する親達もいたが子供からすれば遊びの一環、悔しがるそぶりも見せず闘志の方が高まっていた。それもそのはず学校の体育の授業と同じでスポーツを楽しみながら体力と技術を学ぶスクールだからだ。

 

Cチームのキックオフで試合再開。さっきのミスをカバーする様にマサルをフリーにせず黄色6番がマサルのマークに付く、黄色5番から3番、3番から2番とパスが繋がりイサムが手を上げパスを要求するすかさずマサルがマークを外しイサムの元に駆け寄るがボールは黄色6番にパスが通っていた。


マサルの判断力を逆手に取った作戦にまんまと掛かりマサルの隙を付きイサムがマークを外す、すかさず黄色6番がイサムにパスを出しそのまま通る。


イサムに向かう青2番だったがイサムは右足を軸に90度身体を綺麗に回転させて怯んだ2番の横を素早く駆け抜けそのままシュートを放つ。


挿絵(By みてみん)


青キーパーは2番の陰からイサムが現れた様な錯覚をして判断が遅れる。ボールに飛びつくもその手に当たる事無くゴールへと吸い込まれていった。


飛び跳ね喜ぶイサムとそのイサムを取り囲み賞賛するチームメイト、陽子は三年前からは想像出来ないイサムの成長に感極まりその場にしゃがみ込み大粒の涙で喜んだ。陽子の事をよく知る伊藤ママはハンカチを優しく手渡し陽子の背中を摩っていた。

 

試合は1対1のまま攻防が続き同点のまま試合は終わった。全組みの試合も終わる頃には丁度お昼の時間になっていた。お腹を空かせた子供達を待っているのはバーベキュー大会だった。食べ盛りの数十人の子供達と保護者の腹を満たすには十分な量だった。


会の終盤。スクールを去るイサム達の代表で手紙を書いてきたマサルがみんなの前で手紙を読み始めた。

「いっくんが読むとすぐ泣いて話せなくなるから」


と言って強気だったマサルも大粒の涙でしゃくり上げ後半ほとんど聴き取れる状態では無かったが、集まった大人子供達はもらい泣きしていた。


館長である米塚雅也(よねずかまさや)、通称くまさん(子供達からの愛称)はイサム達二人を大きな腕で抱きしめて

「イベントの時は一般参加も出来るから遊びに来てね」

と優しい声で伝えた。

ありがとう(あいがどう)くまさん(ぐまざん)…」

双子にとっては初めての別れで家路に着き宗佑が帰って来るまで泣き止まなかった。

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