入学式
この物語はイジメを助長する目的ではありません。この話はイジメを含む一部作者の体験を織り交ぜたフィクションです。精神的に不安定な方や気分を害す方、感情的になりやすい方などは閲覧を控えてください。
登場人物
早川イサム(勇)
一卵性双生児の兄。弟より小柄で気弱な面もあるが努力家。父のサッカーに憧れる。
早川マサル(勝)
一卵性双生児の弟。明るくて素直な活発な少年。気弱な兄を支える優しい子。いつも兄と勘違いされている。
早川ソウスケ(宗佑)
双子の父親。サッカーJ2リーグのプロ選手。
早川ヨウコ(陽子)
双子の母親。フリーのカメラマン。取材の時に宗佑と出会い結婚。双子を出産している。
小学校に入学する頃になると父親がどう言った職業をしているのかが分かる様になる。オモチャの一つとして与えられた子供用のサッカーボールは遊び道具としてでなくサッカー選手になりたいと言う気持ちが芽生え始めていた。
宗佑のオフの時は幼稚園児の頃から遊び程度ならボールは蹴っていた双子だが、本格的に学ばせる為、近くのスポーツ少年団を探したが小学三年生からと言う条件であった為、通うには少し遠かったが宗佑の知り合いが務める少年サッカースクールへ入会することになった。
陽子は車が必要になると考え三年前に免許を取得していた。その間子供達はというと祖父が保育施設に送迎していたのだが、一カ月半という脅威の速度の免許取得に「もっと時間をかけてもいいのに」と父親から謎の愚痴を聞かされた。
陽子の不安はただ一つ。人見知りが激しく引っ込み思案な兄、イサムの存在だ。人懐っこく保育園でも友達を多く作っていたマサルに比べ、人見知りの激しいイサムはマサルの側を離れようとしない為、マサルの友達の一部とは交流があったもののイサム単独での友達のふれあいは少なかった。
紹介されたサッカースクールは下は三歳から上は十三歳と幅広く入会でき、年齢に応じてコーチがサッカー指導してもらえる為、親たちからは評判のいいスクールだった。
入会は体験入会も含めて数十人の少年少女が集められ親たちへの説明している、その間子供達は一人の女性コーチの元に集められた、一人を除いて…イサムは多くの大人と子供達に囲まれ軽いパニックを起こしていた、陽子はそれを察して勇を抱き抱えイサムが落ち着くまで頭を撫でていた。その行為にマサルも察し、
「いっくん行こ。ボクが手を握っててあげるから」
目に涙を溜めていたイサムもマサルの方に向き直り、
「ママ、降ろして。僕まーくんと行ってくる」
弟の言葉に母の腕から降りる事を告げて勝の元に駆けて行く。
弟の手を取り子供達のグループに混ざって行く姿を見て陽子は息子達の成長に目を潤ませた。
サッカースクールへの入会と同時期、両親にとっても双子にとっても重大なイベントが待っていた。そう入学式である。平均より小柄な二人だが今後の成長を考え周囲から大きめのサイズを勧められた結果、ダボダボの学生服に身体に釣り合わないランドセル、ぶかぶかの通学帽とさすがのお店の店員に簡単な袖巾上げと裾巾上げの仕方を勧めてられ事なきを得た。
肝心な入学式だが式を終えて校門前での記念撮影後、はしゃぎ過ぎて転んで大泣きするマサルと何故か自分の事の様に一緒に泣くイサム
を背中におぶってあやしているうちに泣き疲れて両親の背中で眠っていた。
「全く、現金なもんだよコイツ等は」
呆れた様子を見せつつも何処か嬉しそうな宗佑を見た陽子は笑いながら、
「仕方ないわよ、私たちの息子ですもの」
そう言うと宗佑も笑顔で「そうだな」と答えすっかり眠って起きる様子のない息子達を車のシートに座らせていた。
学校によって方針は違うがイサムの人見知りを心配して陽子は学校にイサムとマサルを同じクラスにしてもらえる様に頼んでいた。その甲斐あってか一年生のクラスは一緒にしてもらえた。学校側の提案としてイサムがマサルとだけで無く、他の友達と遊ぶ様になれば学年が上がった時にクラス替えの検討するとの事だった。
入学から一週間もすればマサルの性格通り友達が多く出来ていた。一卵性の双子と言う事もあってか顔のよく似たイサムにも注目は行き、戸惑いや恥ずかしさもありつつマサルと共通の友達が数人ではあるが出来ていた。そこに関しては陽子も嬉しいのだが、
友達が出来ると子供達に入る情報量も増えてくる。双子達の初めてのわがままが、
「二段ベッドが欲しい!」
だった。子供部屋を欲しがる事は想定した間取りのマンションに住んではいたが陽子にとって最大の悩みがあった。イサムのオネショ癖だ。
マサルは保育園に入る前からオネショは一度も無かったが、兄のイサムは暗闇に怯えて一人でトイレに行けない事もあり寝る前と寝て三時間後に陽子が起こしてトイレに連れて行っていた。それでもたまに失敗してしまうイサムを心配するのは仕方なかったが、
「いっくんをボクが起こしてトイレに連れて行くから大丈夫!」
マサルの一言を信用して二段ベッドを買ってやるが一度寝てしまったマサルが途中で起きれる筈も無くイサムのオネショシャワーを何度も味わうのだった。




