ゴールデンエイジ 後
この物語はイジメを助長する目的ではありません。この話はイジメを含む一部作者の体験を織り交ぜたフィクションです。精神的に不安定な方や気分を害す方、感情的になりやすい方などは閲覧を控えてください。
登場人物
早川イサム(勇)
一卵性双生児の兄。弟より小柄で気弱な面もあるが努力家。父のサッカーに憧れる。
早川マサル(勝)
一卵性双生児の弟。明るくて素直な活発な少年。気弱な兄を支える優しい子。いつも兄と勘違いされている。
早川ソウスケ(宗佑)
双子の父親。サッカーJ2リーグのプロ選手。
早川ヨウコ(陽子)
双子の母親。フリーのカメラマン。取材の時に宗佑と出会い結婚。双子を出産している。今は専業主婦になっている
イサムは何時ものリハビリに加えて筋トレとランニングで身体作りをしていた。早朝四時から起きてランニングで少し離れた公園まで行き、ストレッチからの鉄棒で懸垂十回をインターバルを入れ十セット、シャトルランの往復1セットとしそれを十セット、インターバル挟み十セットを五回繰り返す。
練習後のクールダウンに軽いランニングで帰宅して玄関前でストレッチ。配達された新聞片手に家に入るというのが日課だった。家に入る頃、朝に弱いマサルも目を擦りながら起きてきた。朝食、歯磨き、トイレの順に代わる代わるにこなして行き、着替えをして登校して行く。
「身体の方どう?」
そう聞かれたイサムは身振り手振りで答える。
「握力は物をしっかり握れるくらいには戻ったよ、肩は真上には上げれないけどそれでもだいぶ良くなったと思うよ」
「それならスポ少とかに入れそうだね」
「そこなんだけど、六年からスポ少に入るより、俺はくまさんのサッカースクールに一年だけ行こうと思うんだ。今の家からなら自転車で行ける距離だしさ、基礎トレ以外のトレーニングになると思うんだよ」
マサルはなるほどと納得しながら、体力トレーニングの方法に自分が教わっている事を加えてアドバイスしながらイサムに語る。お互いの知識を出し合いながら歩いているうちに学校の校門に着いていた。
教室前で別れマサルは自分の席にランドセルから教科書を机の物入れに入れ、ロッカーにランドセルをしまう。後ろからマモルが声をかけて来たのでマサルは挨拶をした。
「おはよう、マモルくんあの後大丈夫だった?」
マモルの手を心配したマサルに対して左手の手の平を見せて
「参ったよ、あの後ピッチングマシンで135キロの直球を捕らされてさ。でもねコツってのは少し掴んだんだ」
巾着袋から自分のキャッチャーミットを取り出し
「休憩時間にさキャッチボールしようよマサルくんのボールでも捕れるか試したいんだ」
上機嫌なマモルに応える様に同じく巾着袋を見せて
「そう言うだろうと思って持ってきてる」
とマサルは笑って見せた。
休み時間が待ち遠し過ぎたマモルが授業に集中出来る筈も無く、算数の授業中にミットをいじっているのを野中先生に見つかり怒られて授業が終わるまで没収されたのはご愛嬌、昼休みには二度としないと約束の上で返してもらっていた。
「いやぁ参った参った」
悪びれず頭を掻きながらマサルと合流すると
「流石に授業中はダメでしょ」
と言ってマサルは笑った。
校庭の空いたスペースを見つけウォームアップにボールを投げる。マサルの肩が温まったくらいに柴谷はしゃがんでミットを構えた。
マサルはセットポジションから繰り出される左手の速球がマモルのミットを心地良く響かせる。それを何球も続けるが痛がる様子が無かった。マモルは得意げにマサルにニヤついて見せる。
「本当にすごいや、どんな特訓したの?」
「へへへぇ。実はね」
とミットから手を出すと左手親指にはめていた白いプラスチックの塊を取り出してマサルに見せる。
「渡辺監督がね、お湯で柔らかくなるプラスチックで僕の指に合う様に作ってくれたの、これしてると痛くないんだ」
特訓したと聞いていたので痛くない様に捕る訓練だと思っていたので狐に摘まれた気分になった。
「あ、本当だ痛くない」
ミットと保護プラスチックを借りて柴谷のボールを受けた感想を述べる。
「これで試合も安心だね」
いつも笑顔の柴谷だがこれ以上無いくらいの満面の笑みにマサルも釣られて笑顔になった。
学校から帰宅したイサムは母に今朝マサルに話していた事を話すとサッカースクールの話に賛成してくれて早速電話で申し込みをすると意外な反応が返って来てイサムに伝えた。
「イサム、米塚さんが今日着ませんかって」
「えっ?土日だけのスクールだったんじゃないの?」
「スタッフさんが増えて平日の月曜と火曜以外は開けてるそうよ」
「本当!じゃあ俺…ぼ…僕行って来るね」
はしゃいでジャージに着替え自転車に飛び乗る様に出て行った。
「まるで嵐ね」
陽子は笑いながらイサムを見送り、元気になった息子の姿を喜びつつ、脱ぎっぱなしの制服を畳んだ。
サッカースクールに着いたイサムは懐かしさを感じながら自転車を止めて事務所の扉を開けた。イサムへの再会を懐かしむ様にスクールのスタッフと米塚か迎えてくれた。
「イサムくん。大きくなったね元気してた?」
米塚達も転落事故の話を知らない訳では無かった。知った上で元気になったイサムを見たので目には涙が溢れそうだった。
「くまさん泣かないでよ。今日からまたしばらくお世話になります」
とお辞儀した。




