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01-55 仮面

人は皆、どこかで仮面を使っているようなもの。

仮面をかぶり、仮面の笑顔で接する。

その下ではどんな表情をしているかわからない。


コンコン、探偵事務所のドアをノックする音。

「どうぞ」

探偵の助手が入室を促す。

ドアを開けて、生体系の男が入ってきた。

どこか冴えない感じがするな、と、探偵は思った。

「依頼ですか?」

探偵がたずねる。

助手がお茶を出す。

良質の茶の香りが事務所に広がった。


男は写真を出した。

「彼女を探してくれませんか?」

出された写真は笑顔の女性。

美人の定義は時代により異なるが、

この笑顔はどの時代でも、悪い方には取られまい。

どの時代でも、そこそこの美人として通じるだろう。

そんな笑顔だった。

だからこそ探偵は見抜いた。

「仮面…」

ぽつりと探偵は呟く。

「え?」

依頼人は驚く。

「いえ、こっちのことです」

探偵は言葉を曖昧にした。


依頼人の連絡先だけを聞き、

探偵は事務所に助手を残し、

斜陽街へと出ていった。

探偵の勘は一番街を告げている。

探偵は取り合えず一番街のバーに行ってみることにした。


一番街のバー。

ここには大抵夜羽とマスターがいる。

バーに入ってみると、確かに夜羽とマスターと…お客が数人いた。

その中に、ある生体系の女性を見つけた。

女性の客は席を立ち、バーを出て行こうとしている。

貧相な顔の女性だ。

何故か鞄だけ大切そうに持っている。

探偵の勘はこの女性を指した。

「ちょっと」

探偵は女性を引き止める。

「な、何か…」

女性は何故か怯えている。

「あなたを探している男の人がいます」

女性がビクッと震える。

「来てもらえますか?」

女性はうつむいたまま、首を横に振った。

「…あの人は…これがあればいいの…」

女性は鞄の中から何か取りだし、探偵に押し付けると、バーを出ていった。


「…仮面?」

夜羽が興味津々に覗き込む。

「…そのようだな」

どういう訳か、探偵の勘はこの仮面を指している。

今一つ釈然としないが、

探偵は依頼人と連絡を取り、事務所に戻った。


「『あの人はこれがあればいい』、そう言い残して女性は去っていきました」

事務所で探偵は淡々と話す。

依頼人は仮面を手にとり、

「ああ、まさしく彼女だ…」

そう、言った。

「ああ、これが彼女だったんだな…そうか、あの笑顔は仮面の彼女だったのか…やっと逢えた…」

依頼人は大事そうに仮面を抱きしめると、料金を払って事務所をあとにした。


「これで良かったんですかね…」

助手は依頼人の出ていったドアを眺めながらそう言う。

「必要とするものは人それぞれさ」

そして、探偵は助手にお茶を入れるよう頼んだ。

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