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05-31 同化

斜陽街一番街、病気屋。

ここは、病気を調べたり、病気を売ったりする店だ。

店内にはカプセルやシャーレが置かれていて、

奥の病気屋の部屋には、

病気に関することの研究成果が置いてある。

まだ未知の病気も多いらしいが、

病気屋は、治らない病気を売らない。

そして、わからないことは率先して調べる。

わからない病気をなくしたい。

病気屋は、そんな思いで病気屋をやっている。


「それで、ご用件はなんですか?」

病気屋は店に出た。

もっさりと大柄で、クマのような病気屋である。

「あいつが、同化してくるんだ」

「同化?」

病気屋は、一瞬悪性腫瘍を思った。

判断理由が少なく、とにかくたずねる。

「それは、どういうことでしょうか」

問いかけながら、カルテをつくる。

見た目の年齢、性別、その他もろもろを見たままに記入する。

外れているなら、あとで書き換えればいい。

「あいつが、全てを同化させて、俺を狙っているんだ」

客は何かにおびえているようだ。

あいつ、とか言うものに、おびえているのかもしれない。

「ふぅむ…」

病気屋は考え込む。

ペンの頭で、髪をかきかきする。

「あいつ、とは、あなたの内側ですか?」

「…いや、外側の、気が…」

客は頭を激しく振った。

「いや、内と外から俺を狙っている!同化させようと狙っている!」

病気屋は困った。

この症状はどちらかというと、妄想屋向きだ。

病気屋はわかる範囲で、書類を書く。

客はぶつぶつと何かを唱えている。


「できました」

病気屋は書類を、客に渡す。

「これをもって、バーに行ってください」

「…バー?」

「ここよりも、妄想屋という人のほうが向いているとおもいます」

「妄想屋」

「バーのボックス席にいますよ」

「同化する病気は…」

「妄想屋が判断したら、また、ここで調べます」

「…そうか」

客は力なく、とぼとぼと扉を目指した。

扉に手をかけ、振り向く。

「それより前に、俺が同化したらどうする?」

「わかりません」

病気屋は、そう答える。

「そうか…いや、いいんだ」

客は扉を開けると、斜陽街に出て行った。


「同化させるもの…」

以前夜羽のところで、全てを同化させるのがいたとか、

そんなことを、きいた気がする。

「気のせいかな」

病気屋は書類とカルテを仕舞うと、また、研究に戻っていった。

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