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01-01 子猿

これはある男の物語。


その男は趣味で玩具を作っていた。

手先が器用だったのかもしれない。

男はそれで子どもを遊ばせたりするのが好きだった。


男はある日、番外地の坂で子猿を見付けた。

小さな小さな猿だった。

猿は男のたまたま持っていた空缶ぽっくりに気を引かれたらしい。

空缶に紐を通しただけの玩具だ。

男は猿にぽっくりを教えた。

猿は見よう見まねで遊んだ…が、ぽっくりが大きすぎて転んでしまった。


男は猿の手当てをした。

小さな小さな猿だから、綿棒に傷薬を塗って手当てした。

猿は痛がった、しみたのかもしれない。


それでも、明くる日には痛くなくなったらしく、

また懲りずにぽっくり遊びをした。

こつを掴んできたらしく、初めて出会った坂を、ぽっくりぽっくりと歩くのが好きだった。

男はそんな猿を、子どもを見るように見守っていた。


男は猿にピリリという名前をつけた。


ある日、男は番外地の廃ビルの一つ、その屋上でで煙草を吹かしていた。

ここからはたまにものすごい夕焼けが見られるのだ。

男はそのたまに見られる夕焼けを見ていた。

ふと、下を見ると、ピリリと見なれない猿が坂を歩いていた。


男は何か予感がした。


「ピリリ!」

男は廃ビルから下まで走って降り、ピリリを追った。

ピリリに追いついたのは、初めて出会ったその坂だった。

「ピリリ!」

男はまた呼んだ。

猿は大好きだった小さなぽっくりを持ち、一回り大きな猿と坂を歩いていた。

ふと、猿が振り向いた。

一瞬が過ぎる。

男はその間にピリリとの楽しい時間を思い出していた。

そうして猿は丁寧にお辞儀をする。

男はそれをぼんやりと見ていた。

子猿のピリリは、大きな猿とともに去っていった。


これはある男の物語。

男はいまでも斜陽街のどこかで玩具を作っているそうだ。

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