03-37 先住人
これは電脳の仮想空間の物語。
廃墟探索をしている少女達は、
とある廃ビルの情報を得た。
「ええと何々…」
「あれ?事件があった記録あるじゃない」
「前の密林のビルみたいに、誰か住んでるかもしれないし」
「気をつけたほうがいいかもね」
少女達は電脳廃墟に入る前に、
ポイントで装備を整える。
少女達の見た目は変わらないが、
いろいろ強化してみた。
そして、電脳廃墟にアクセスする。
今回の廃ビルのマップなども一応ダウンロードしておいた。
少女達は廃ビルのマップを見ながら、
「ビルってわりには入り組んでるね」
「大広間で事件の記録あり…解決済み印になってるね」
「廃ビルになってから事件?なんだろ?」
「とにかくお宝探しに行こう」
などと、おしゃべりをしながら、廃ビルに入っていった。
廃ビルの中には、
ほこりをかぶっている大きなガラスケースの中に、
ウェディングドレスが飾ってある。
奥にはフロントと思わしい場所もある。
ほこりをかぶっているが、
雅やかな名前のついた部屋が、何階かにあるという案内板。
そして、最上階が大広間らしい。
事件記録は、解決済みだが、大広間の記録になっている。
階段は無駄に螺旋になっている。
ひとつひとつの階ごとに、違う螺旋を上らないといけない。
「結婚式場だったんだろうけど…無駄に手が込んでるねー」
「ほんとほんとー」
「ん…ちょっと待って」
少女達は足を止める。
大広間まで行く前の階で、
音の反応が出たのだ。
コチコチカチカチ…
コチコチカチカチ…
「廃墟に住み着く人がいないわけじゃないし…」
「先住人?」
「とにかく強化してあるし、あたってみようよ」
少女達は、時計の音をたどり、ある控え室の前にやってくる。
そして、扉を開ける。
コチコチカチカチ…
時計の無数の秒針の音がする。
「誰ですか…私は詩を書かなければならないのに…」
無数の時計の中にいたのは、どうやら詩人らしい。
せかされるように詩を書いているようだ。
「あたしたちは電脳廃墟を探索して、お宝を探してるの」
「お宝…」
詩人は少し考え込み、
「大広間に珍しい蝶々が来ることがあるといいます…」
と、情報をくれた。
少女達は、大広間の何かが砕けた破片の近くに、珍しい蝶々を見つけた。
結構なポイントになりそうだった。