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03-31 郷愁

満たされない男、シロタロウは斜陽街を歩いていた。

シロタロウは思う。

来たことがないはずなのに、

何でこんなに懐かしいのだろうと。

実は来たことがあるのかもしれない。

そんなことも思った。


シロタロウの記憶には、斜陽街はない。

それ以前に、いろいろと満たされていない。

記憶もなくなったままだ。

シキという魚は、見つかると言った。

あるいは、ここがふるさとならば、

記憶の奥の奥あたりに、何かあるかもしれないが、

記憶はないし、多分ここがふるさとでもない。

白い服のシロタロウは、明らかにどこかからの異邦人だ。


何かをするために斜陽街に来た。

それが何なのかはわからない。

それでも探そうとしてみる。

斜陽街に来た理由、懐かしく思う理由、そして記憶。


雑然とした路地や、あまり広くない大通りを歩く。

シャッターが下りている店舗もある。

営業している店舗もある。

猫がいたり、ごみを踏みつけたり、色あせた段ボール箱がつんであったり、

配線がむき出しになっていたり、水道管も壁に沿ってむき出していたり、

シロタロウは斜陽街のそんなところも見る。


(追い出されたら、ここに来るかな)


シロタロウはふっと考え、

混乱をした。

追い出されたらここに?

どこから追い出されたら?なぜ追い出される?


『秩序を…!』


頭の中で声がする。

秩序を…多分守ろうとしている。

白い服の人間が、そう言っている。

シロタロウは思い出したくなかった。

そんな記憶ならいらなかった。


シロタロウはぶんぶんと頭を振る。

記憶の端っこから、

白い都市が思い出される。

白い都市から追い出された、雑然としたもの…


(そうか…懐かしいのはそれなんだ…)


シロタロウは雑然とした斜陽街に、あの都市から追い出されたものを探した。

きっと、あの都市の隅っこで営業していた、おじいさんたちもいると信じて。

あるいは、それが心のふるさとと信じて。

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