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01-16 玩具

斜陽街三番街、がらくた横丁という所に玩具屋はある。

玩具屋は、いわゆるおもちゃ屋だ。

空缶などの金属から店主が小器用におもちゃを作り出す。

店主は40才代くらいのひょろりと細い中年で、

少々ヘビースモーカー、店内は煙草の匂いがする。


気が向くときに寝起きしては、煙草を吹かしながらおもちゃを作るのが店主の日課になっている。

店主は、空缶おもちゃや、ブリキなんかのおもちゃを作ることを好む。

無論その他のおもちゃもある程度揃えている。

ぬいぐるみや人形だってあるし、テレビゲームだってある。

ただ、それらはここで作っている物ではないようだ。

しかし、玩具屋の店主は頼めばそれらも修理してくれる。

手先の器用さでは斜陽街一二を争うそうだ。


「おじちゃあん」

「じっちゃあ」

小さな兄弟が首の取れた人形を持ってくる。

「こわれちゃったぁ」

「ああ、壊れちゃってるねぇ…よしよし、捨てずによく持ってきたね。すぐ直してあげよう」

それでも子どもは不安な目をしている。

そんなときには直る過程を子ども達に見せてあげる。

「ここをこうして…」

玩具屋の手が器用に人形の首を繋げていく。

「ここをちょちょいと…」

子ども達の目に光りがともる。

「こうすれば、出来上がりだ」

そんな時にはもう子ども達の目はきらきら輝いて。

「ありがとう、おじちゃん」

「ありがとー」

礼もそこそこに駆け出していく。

玩具屋はそんな子ども達の目が好きだ。


おもちゃの置かれている棚の中に、一つだけ、非売品になっているおもちゃがある。

夕焼け色の可愛らしい服をまとった、小さな猿がシンバルを叩くおもちゃだ。

「ああ…それは…昔友達だった猿がいましてね…」

その思い出なんですよ…

店主は少しはにかんで笑った。


玩具屋の棚には、今でも、猿のおもちゃと空缶ぽっくりが並んでいる。

その意味を知る者は、あまり多くないそうだ。

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