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03-03 水路

これは斜陽街から扉一つ分向こうの世界の物語。

黒い扉の向こうの世界の物語。


その街は水路が多くて、

あちこちに運河があった。

人は船やボートに乗って暮らしていた。


街に、年の頃10にも満たない、幼い男の子と女の子がいた。

二人は、二人で言うところの恋人同士で、

小さな頃からずっと一緒で、

大きくなってもずっと一緒の計画を立てている。

幼いながら、だけど。


親は子どもの戯言と受け止めている。

けれど、二人は真剣で、

大人になったら、きっと結婚する。

そう、宣言していた。


男の子が、運河を行くボートに乗れるようになったのは、つい最近のこと。

一人でボートを動かすことができるようになった。

ボートに、はじめて一緒に乗せたのは、恋人の女の子。

親でもなく、兄弟でもなく、

この女の子を、はじめてにしたいと思った。

ある夕方、男の子は女の子をボート乗りに誘った。


「どこか行きたいところありますか?」

男の子が大人っぽく聞けば、

女の子が、

「灯台が見えるところに行きたいわ」

と、やっぱり大人を真似て答える。


ボートは夕暮れの運河を行き、

街の中の公園近くでとまった。


「ここ?」

「うん、おいでよ。とっておきの指定席なんだ」

男の子が女の子の手をとって歩き出す。


公園にはジャングルジムがあり、

男の子はそれに登りだした。

女の子も追った。


二人がジャングルジムのてっぺんに座ると、

公園の、ずっとずっと向こうから、光の束が見えた。

くるくる回っている。

灯台の光だ。


「ここだけ、建物に邪魔されないで灯台の光が届くのが見えるんだ」

「とっておきだね」

「今度、もっと乗れるようになったら、港まで行こうね」

「うん」


幼い恋人たちは、約束をした。

夕闇がすぐそこまで迫っていても、

幼い恋人たちは二人よりそっていた。

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