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02-43 休憩

酒屋は扉屋で休憩をしていた。

仕事はいろいろあるのだろうが、

斜陽街はゴミゴミした路地が多く、

歩き回るだけには疲れる。


とにかく、酒屋は弟子に店番をまかせて、

一人ぼんやりと扉屋で休憩をしていた。


扉屋は扉を作ることに専念している。

酒屋は扉ではなく、一応壁にもたれかかり、

扉屋が扉を作るのを見ていた。


やがて、酒屋が手酌で酒を飲んでいると、

「やぁ」

と、扉屋の普通の出入り口から見慣れた顔が入ってきた。

「夜羽…」

「邪魔するよ。酒屋さんはサボり中?」

「休憩中や」

「一人で手酌も寂しいでしょう」

「まぁな、どや、一杯」

「強いのは勘弁」

「安心しぃや、弱いのもある」

そして、扉屋の主人をほったらかして、

ささやかな酒盛りが行われた。


「ここはいろんなところに通じていますから…見ているとなんだか、わくわくするんですよね」

「危険なのもあるんやけどな」

「それが扉屋の醍醐味ですよ」

「そんなもんかなぁ…」


酒屋がふと、何か物音に気がついた。

物音の方向を見れば、

両の手のひらでおさまるような、

小さな狐がうろうろしている。

「なんやあれ?」

「どうしました?」

「いや、狐がおるん」

「へぇ…どこかから紛れ込みましたかね」

「待ってろ、今捕まえたる」

酒屋が扉屋の店内で狐を追いかけ回す。

夜羽はそれを面白そうに見ていた。

もっとも、帽子のふちで目は見えない。

そして、緑の葉の描かれた扉から、少年が覗き込んでいる。

「あの狐の飼い主?」

夜羽がたずねると、少年は頷いた。

「待ってて、今あの人が捕まえてくれるらしいから…あ…」


酒屋は狐追いかけに夢中になって、

赤く細かい細工の彫られた扉に入っていってしまった。

「あーあ…」

と、夜羽は言うが、少年に向き直り、

「まぁいいや、しばらくこっちで話していれば帰ってくるよ」

と、少年と話をはじめた。


酒屋の休憩は、どこかへ行ってしまった。

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