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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

【異世界へクラス転移】した私は、残念勇者と言われたので、ひたすら逃げたお話

作者: 山田 勝

36人の学生と先生1人が、授業中にいきなり、転移された。。


スキル鑑定をされ、たった1日で新たな階層が生まれた。


勇者や聖女、賢者の3人を筆頭に、剣聖、聖騎士、剣士、魔法士・・それぞれ何かジョブがあったが


勇者として失格とされた者もいた。


しかし、矢継ぎ早に、次の進路を決めさせようとする神官に、一人の少女が、疑問を抱き。人生を切り開こうと逃げた。


 「残念ながら、貴女たちには、勇者の資格はございません。しかし、召喚したのは我国、精霊国でございます。決して、見捨てたりは致しません」


 王城の一角の小部屋に集められた私たちは、神官から説明を受けた。鑑定の結果、私は、召喚術のギフト、他のクラスメイト二人の女子は、それぞれ、農夫と踊り子。


 私の召喚術は、テストの結果、石ころしか召喚出来なかった。


「う~む。アスファルトと言われてもね。道の材料は我国にございます。残念ながら、こちらの部屋にと」言われた訳だ。


「貴方たちには三つの選択がございます」


  ①勇者様たち(同級生)の召使いになる。

 

  ②有力貴族を何人か紹介するので、気に入った貴族と養子縁組みするかまたは婚姻して何   不自由なくこの国で暮らす」

 

  ③一週間の扶持を与えるので、このままお城を出て平民として暮らす。冒険者は二年後、   生き残る確率は30%なので、注意!


 と言われてもね。


 間違いなく③!と思った。

 だって、おかしいでしょう。明らかに②を選ばそうと思っている。

 ①は絶対にいや

 ②は良い

 ③は少しマシだ。


 召喚と言っても、誘拐だ。こいつらの言うことは信用できない!


 しかし、クラスメイト2名は、「②だね」「②しかないよ」と小声でチラホラ言っている。


「私は③を希望します」

 先手必勝、私、佐々木梓は③を希望しますと手を挙げて神官に答えた。

 皆、空気に流れさて、お願い。


「何と、平民として生きていくですと・・う~~む」


「「ザキ、②にしよう。一緒にお姫様になろうよ」」


 友人達に、何とかヤバさを伝えようにも、神官の周りに兵士が控えている。ウカツな事は言えない。


 だから、「ええ、そう、お姫様は窮屈だよ。冒険者は自由気ままで良いよ。私はごめんだよ。「~~ですわ」て言うのは嫌。3人でパーティーを組もう?ねっ」

と言った。


「「ハハハハッですわ~って」」2人は笑って、真意を汲み取ってくれない。

 すると、カーテンが開き、部屋の奥から貴族が数人入ってきた。


「やあ、異世界の姫君たち。僕を選んでくれたら、生活に苦労させないよ」


「ワシだ。ワシを選んでくれ。1日三食出すぞ!」


「何の。私は侯爵だ。貴女たちは異世界で貧しい生活をしていたのだろう。奴隷を付けよう。貴族令嬢として遇すると約束する」



(やっぱりだ。すぐに出てくるなんて怪しい。しかも「三食」出す。「奴隷」を付ける。気がついて!)


「「え~~~、迷うな」」

 貴族達は膝を付き。手を差し出して、私を選んでとアピールしている。


(ダメだ)


「君はどうする?今なら②に修正可能だ。当職が責任を持って、素晴らしい貴族を紹介しようぞ。」


(どうする?どうする?どうする?)


「まあ、何ですって、貴族なんて無理ですわ。城下町で素敵な佐〇系男子をゲッチュですわ~」

 くるっと廻って、両手の人差し指を平行に差し、昔流行った芸人の真似をした。


 正直イタいが、この世界お笑い芸人は少ないのだろう。精霊国の貴族達は大笑いした。


「「「ははあははははは」」」


「ザキ~、あのね。この国の人は魔王軍に攻められて困っているの。勇者の資格のない私たちの事を考えてくれている。真剣に考えなよ!」


 知子は怒った。伝わらないようだ。


「何と貴女は、おもしれ~女だったか?うむ、ならしょうがない。行くが良い。扉を出て、突き当たりの部屋に行きたまえ。この場で指輪を付けて行くが良い。身分証だ。指輪をみせれば、いつでも、城で保護しよう」


 神官は強引に私の右手を取り、人差し指に指輪をはめた。

(ヤバイ、指輪をはめられた)


「は~~い、分りました。城下町を探索したら~帰って来ますですわ~~~」


 右手を挙げて、バイバイしながら、スキップで部屋を出る。


「「はははははははああ、異世界のおもしれ~女もいいな」」


((ザキ、こんなキャラだったっけ?))


 ☆☆☆


(・・逃げて・・・逃げて・・・逃げて・・・・)


「うん?」


 神官に指示された部屋には、猫の獣人が控えていた。私がノックし入ると、慌てて、席を立ち。礼をした。

(やっぱり、この選択は想定外だったのね)


 獣人メイドは、学校の制服を脱いで、この国の服に着替えるように促す。上等な平民服を渡した。


「ねえ。私は、アズサ。貴女のお名前を教えて」


「ミリダと申します。猫族です・・」


「素敵なお名前ね。知っていると思うけど、私は異世界から来たんだ。この国の事を教えて」


「ヒィ」と短切に悲鳴を上げたように思えたが、すぐに早口で、「私たち猫獣族は精霊様のお導きの元、この国の人族に仕えて、幸せに暮らしています」



(・・逃げて・・・逃げて・・・逃げて・・)


「うん?逃げ『説明します。このバックには一週間分の生活費とガイドが入っています』えええ、」


 声ではない。振動が言葉になっている・・・。テレパシー?盗聴器がこの部屋にはある?


 この国の注意事項を受けた。

 足は見せてはいけない。基本、この国ではクルブシまでしっかりとスカートか、ズボンで隠す。足を見せていいのは好きな人の前、閨の中・・


 つまり、私たちの制服は、この国の男達にとってはヨダレが出るほどの格好らしい。


「最後に、私から、猫族の昔話をします・・」


『若い猫が老猫に聞きました。どうして、ネズミはあんたの口の中に飛び込んでくるんだい?

 それは、ネズミの家族を人質にとっているからさと答えます。


 じゃあ、俺もと若い猫はネズミの家族を捕まえて、口を開けてました。しかし、ネズミはやってきません。何故ならば、ネズミの家族をお腹の中にしまったから、ネズミは逃げてしまいましたとさ』


(ネズミが私で、家族がクラスメイトで、もう、お腹の中ってことね。もう死ぬってことね)


「はっははっは、何だか分らないけど面白い。アメリカジョークみたい。有難う」



 私、アズサは、城を出た後、すぐさまに商業ギルドに行った。翻訳スキルはあったのが幸いした。物価を調べたのだ。


「こりゃ、小金貨だね。三枚なら、中級の宿に泊まったら、節約して、三日ってところだよ。田舎者かい」


「これを」

 財布の中から札を出す。


「なんだい。こりゃ、精巧な絵だね。しわくちゃだが、この爺さんは異国の賢者さまかい?」


「ええ、そうよ。ちょっと路銀が足りなくなって、家宝を手放すの」


「分った大金貨一枚(10万円相当)もうちょっとだと、ええ、もう小金貨一枚(一万円相当)をつける」


「売りましてよ」



 私はすごいことを発見した。


 この世界でのオリハルコンやミスチルと言われる貴金属は、元いた世界では、合金、セラミックだったのだ。太古の昔、宇宙船が墜落した残骸を、この世界の者は鉱山と称して掘り出している。


 私でも召喚出来る。換金して資金を得て、すぐに精霊国を出た。商業ギルドで登録した後、異世界の知識を生かして、行商も始めた。精霊国を出たが、隣の国もまた精霊国の信仰国でもある。

 すぐに、精霊国の勢力圏外にでなくては。

 はめられた指輪も不気味だ。取れない。


 ☆☆☆



 いくつかの街の商業ギルドでミスチルを売ると、お城の使いがくるようになった。


「勇者殿の何人かが魔王軍との戦いでなくなった。空席が出来た。特別に貴殿の功績に免じて、後方支援担当の勇者として召し抱えよう」


「宿に荷物があります。取ってきます。すぐに戻ります。」


 宿に戻らずに、そのまま逃げた。


 逃げた。逃げた。逃げた。なるべく、人のいない所に逃げたい、その前に、この街で、お金を得なくては・・



「ミスチル1キロ、小銅貨一枚(10円)ね」


「え、ここに交換相場、大金貨10枚って木札がありましたよ」

「今、変った」

 

 ギルド職員は、木札を張り替えて銅貨を一枚出した。そして奥に目配せもしている。

 ヤバイ、通報している。

 幸い食べ物は、簡単なものは召喚出来る。最近、腕が上がった。

 足跡を残さないように、


 この世界には女神を信仰している女神圏があると聞いた。

 女神圏に行かなくては、西に、西に、


 女神圏との国境近く、森を抜け。魔王軍との戦争地域を抜けてなければいけない。危険だ。


「???」

 フードを被った男に囲まれた。網や袋を持っている。私を袋に入れて誘拐する気ね。


 もう、ダメと観念したとき。


 その時だ、金髪で茶色の目で、皮鎧と鉄の胸当てをした。私の後の旦那様が、奇っ怪なかけ声、「パルズ~」と共に、精霊国の誘拐犯を真っ二つにたたき切った。


 ☆☆☆



「ハハハハハハ、パルズって~~~」


「娘。大丈夫か?うん。笑っておられるのか?何と豪胆な」


「有難う。私はアズサ・ササキ」


「何と、ご令嬢であったが、これは失礼した。我輩、いや、私はアルバート・ドーリア。王国北部辺境伯の騎士だ。貴殿は、家名持ちのようだが、ササキは聞いたことがない。失礼ながら家門を教えて頂けないか?」


「???うん。私は異世界人だよ。平民だよ、異世界では平民でも家名があるよ」


「なんと、そうであったか?う~む。異論はない。よし、結婚しよう」


「は、何でそうなるの?」

 この世界では、男女は紹介されなければ名前を教え合わない。本名を告げるのは、結婚の申し込み。つまり、アズサはアルバートに結婚を申し込んだことになる。


「・・・そうか。誤解であったか?しかし、何故、狙われているのか?王国で勇者召喚が行

 われたと聞いていない。あれは女神様の御業だからな」


 私は今までのことを話した。精霊国で召喚されたこと。逃げてきたこと。そして、指輪で位置を知らされて、逃げられないこと。


「何だ。簡単な事ではないか?指を切断すれば万事解決!」


 その発想はなかったわ。でもイタそうだし。実際イタいだろう。


「大丈夫だ。ドーリア流剣術は一撃必殺、一瞬だ。それにポーションを飲めば。傷は癒える。聖女様に頼めば、欠損を復元も出来よう」


「でもお高いんでしょう?」


「いや、今なら聖女様は、陣営に来ている。訳を話せば、快く治して頂けるだろう」


「指を切ってお願い!」


 ☆☆☆


「貴方も日本人なの?」


「ええ、あっちの世界ではOLをしていたわ。貴女は・・そう。あの高校ね。知ってるわ。私が来る前、集団でいなくなったニュースがあったわ」


「ええ~~、これから日本語で話せない?翻訳スキル切るわ」

 と小声で聖女に提案する。


「ダメよ。それは信頼関係を壊す行為よ。ここのいる人たちは皆、全くの善人ではないけども・・・全くの悪人でもない。貴女の目の前で、突然外国語で会話する人をどう思う?良くない行為よ」


「でも」


「私は聖王国の聖女よ。大丈夫、ここにいる人たちにも聞かせて、これ以上悪くならないから」


 ・・・・・・・・・・・・


「「・・・良く気がついたわね。すごい」」


 召喚、転移には二つある。精霊国は無理矢理大勢人をかっさらう。

 対して、女神圏の国では、女神様が、異世界で、トラックや電車などの事故で亡くなった人を召喚する。


「・・じゃあ・・」

「そう、私はトラックにひかれて、気がついたら聖王国の神殿にいたのよ」


「皆、大歓迎してくれたわ。勿論、聖女としての修行は厳しかったけど、異世界人を野蛮人扱いしない」


「・・じゃあ、じゃあ、私のクラスメイトはどうなったの?」


「・・・・貴女の友達は・・・あの貴族にもらわれた子は・・・とても言わないわ。恐らくその貴族の男全員で・・・レイプ。または、商品として出荷される・・精霊国の召喚はお金がかかるのよ・・・」


「男子は?」

「奴隷の指輪を付けられて、魔王軍との戦いの最前線よ。貴女の指輪は術者が近づけば作動する仕組みよ」


「アルバート卿、この指輪をどっかに捨ててきて下さらない」

「は、聖女様の御心のままにドラゴンの巣にでも捨てて参りましょう」


「まって、アルバート君、これを」

「これは・・・ミスチル?」

 私は召喚魔法でセラミックを出し、アルバートに渡した。

「これで、その鍛鉄の胸当ての代わりに作って。御礼よ」


 これが異世界で、婚約甲冑になるとはね・・

 脳筋だが、信頼できる夫に、可愛い娘が出来た。


 私はその後、魔王軍との戦費に苦しむ王国にオリハルコンやミスチルを寄付し、叙勲される。

 男爵だ。家名は、友人達が呼んでくれたあだ名「ザキ」にした。

 商会は「ササキ」もう、この世に未練はない。


 ☆☆☆


 「父様、大胆」

 話を聞いていた娘は、父アルバートを何とも言えない顔で見る。

 

 「ハハハッハ、一目惚れだ。アリサも好きな男が出来たら、父様に言うんだぞ。その男と試合を   してあげるぞ!それが夢だ!」


 「・・・ジー」とジト目で見る娘は無表情だが、その分、感情がすぐに分る可愛い子だ。


 ああ、もう、眠たくなってきた。


 


「・・・母様、おねむなの?」


「お嬢様、お母様はお疲れのようです。お部屋に参りましょう」


「・・待て、アリサ、父様と一緒にいろ。母様の手を握るんだ」

「分った」


 アルバートは椅子をベットの脇に移動し、娘アリサを膝抱っこして、アズサの手を共に握った。


 日本名、アズサ・ササキ。王国貴族、女男爵アズサ・ザキ享年26歳、異世界に来て10年後であった。






















最後まで、読んで頂いて有難うございます。もし、お気に召したなら、評価、ブクマして頂けたら、幸いです。宜しくお願いします。

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