悪魔と元・奴隷に普通の恋は難しい
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教会を後にしたイフリートの頭の中はリディーナの恋人として何をしてやれば良いかという難題でいっぱいになっていたのだ。これまでは恋愛をするという意味で様々なカップルの手助けをして感情をえる事が出来たが、実際に惚れた相手は元・性奴隷のダークエルフであった。
悪魔は相手が望むのもがあれば、その『対価』によって地位や権力等の力を与える事は可能である。
だが、リディーナはほぼ無欲に近い存在なのだ。生きる為に好きでも無い貴族相手に弄ばれ、売られを繰り返して性的な経験や知識が豊富になってしまったのだ。
山賊団にいたのもたまたま、テキーラに気に入られて着いていき生きるために食べるものや安心して眠られる環境を確保するために付き従っていただけであった。
そんな人生を歩んでいたリディーナだからこそ、悪魔としての力で『復讐』を望むものだと考察していたが、リディーナはそれを望みはしなかった。
そんなリディーナだからこそ、本当に愛し合える関係になれるのではないかと思っている。気が付けば、イフリートの頭の中はリディーナの事でいっぱいになっていたのである。
冒険者ギルドに着き扉を開けると、受付でアルマやマリナ達と楽しく話しているリディーナの姿に思わず、微笑んでしまった。
すると、イフリートが戻ってきた事に気付いたリディーナはイフリート目掛けて、飛び付いてきたのだ。
「ちょっと~恋人をアルマに預けて何かとしてたのよ?」
「うむ。異世界人の恋人として上手く行く為に事前に行くデートスポットを下見に行くというのを実戦したのだが…残念ながらリディーナが喜びそうな場所が無くてな…」
「ふ~ん…変な事を気にするんだね?ウチと一緒に行って楽しいって思わせたかったの?」
「その通りだな。悪魔ではあるが、人並みの恋愛を俺自身もリディーナ自身も知らんからな…確かにそういう意味では、一緒にいれば愉しくなるっと思った方が気が楽か?」
イフリートはリディーナをお姫様抱っこすると、前に開いた女子会ならぬカップルのお悩み相談できる食事会がしたいとイフリートにおねだりしてきたのだ。確か、山賊団の討伐した金貨300枚を持っていた筈だ。
イフリートは疑問に想い、リディーナに尋ねると女が大金を出してしまうと男としての立場が無くなってしまうからだというのだ。
カップル同士で割り勘等はあるが、こういったイベント事で彼女のが彼氏よりも立場的に上になってしまっては駄目だというのだ。
「貴族でメイド服っていうの着て、家事とかさせられた時に旦那さんと奥さんが中悪いとその子どももどっちの味方するかは好みの問題じゃん?ウチはイフリートとは対等でありたいから…」
「うむ。つまりは豪勢な食事会を開きたいが、俺を立てる為だけに待っていたのか?」
「ん~まぁ…ね…なんていうかさ…その…イフリートいないとつまんないしさ~♪ウチの事で色々と悩んでくれるのは有り難いけど…そーいうのは一緒にしたいというか…」
リディーナの何とも言えない表情を見て、イフリートは大きな勘違いをしていた事に気付いた。悪魔である自分は勿論だが、性奴隷だったリディーナに取っての【普通】と、今まで見てきた者の【普通】が一緒で無いのだ。
同族の里から追い出され、性奴隷として永い事たらい回しにされてきたリディーナに取っては自分のために動いて貰うよりも一緒にいたいという思いのが強いのである。
長年性奴隷として色々な経験をしてきたが、大切にされ恋人として接してくれるイフリートとは少しでも一緒にいたいと心から思っている。
だからこそ、戻ってきて飛び付いてきたのがその証拠であり何よりも『変な悪魔』と言いながらも自分の側から離れようとしないリディーナが愛おしくて仕方ないのだ。
「…そうだな。悪魔とダークエルフの元・性奴隷に【普通の恋人】らしい事をと考慮したのが間違えであったな…」
「? 何か良いことでもあったん?ニヤついて…」
「あぁ… どうにも俺はリディーナの事が好きで何をしたら喜ぶか考える余りに大事な事を見落としていた。悪魔と元・奴隷に普通の常識など意味がないとな…」
イフリートは笑ってアルマに魔力を込めた炎の玉を渡すと、それをグラシアに換金して貰ってくるように伝える。
アルマは直ぐ様、大袋いっぱいの金貨を持って戻ってくるとイフリートはマリナに女子会ならぬカップル会を開く為の資金として手渡すとマリナはそれを承諾し、リディーナは豪勢なイフリートの頬にキスをしたのであった。
すると、アルマが頬を染めると、リディーナとのサキュバスのスキル【魔力吸収】での感覚を思い出してしまい、魔界に戻り、マグニスに慰めに行ってくると魔界に戻ってしまったのだ。
イフリートは都合のいい日に開催する段取りをマリナに任せてるとマリナは笑顔で承諾するのであった。




