好みの女性像がわからない
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一晩、木の上で過ごしたイフリートは今後の方針に悩んでいた。セリアとゴッシュが正式に付き合い、ゴッシュはエデンの街の後衛兵として働く事に決まったそうだ。セリアとも同棲が決まり二人は幸せの感情を身に纏っていた。
イフリートは何時ものように高額の依頼を受付嬢のマリナのもとに持っていくとマリナが心配した様子でイフリートに声を掛けてきた。
「イフリートさん、大丈夫…ですか? 」
「ん? 体調面や魔力は特に問題はないが?何故だ?」
「いえ、受付嬢をやっていると顔色で悩んでいるようにみえまして…」
マリナの言う通り図星であった。ここまでは計画通りに事が進んでいるのは間違えではなかったが、唯一誤算があったとするならば、イフリート自身の女性の好み…容姿や性格などどう言った女性がタイプなのか本人が理解していなかったのだ。
シュルガレットは対象外の子どもであるが、ゴッシュやセリアの様な関係でいうならばリリアーヌが一番親しい悪魔のは間違えない。
だが、守りたくなるようなか弱い女悪魔ではなく変態ではあるが、サキュバス女王にして13 人の大悪魔に選ばれている実力のある悪魔である。
それはダエノールも同じであり、そもそも自分に好意を抱いていた事にすら気付いておらず、悪魔の契約に乗っ取り、愛人や側室でもいいから側にいたいと言われても恋をしている人間達と同じ感情が働かなかった為だ。
イフリートは素直にマリナにその事実を伝えると何と励ましの言葉を掛けるのが正しいのかわからずに困らせてしまった。
「まぁ…気にするな。悪魔に恋する人間や種族がいるかも分からんし、その逆も然りだ…」
「イフリートさん…」
「取りあえずはこの依頼を受けるとする」
受付で魔物の討伐依頼の張り紙を提出して自注を受けて冒険者ギルトを後にしてジャンセンが経営している連れ込み宿の様子をついでに確認しに向かった。宿屋の前につき、扉を開けると上機嫌なジャンセンがイフリートを出迎えてくれたのだ。
「これはこれは!!イフリートの旦那じゃあ無いですか?今日はどう言ったご用件で?」
「サキュバス達の人気と仕事振りはどうかと様子をな…」
「へへっ…旦那のお陰で飯屋としても連れ込み宿の評判が男性冒険者や独り身の男性客に口コミで広がって…七部屋じゃあ足りないくらいですよ…」
「ほぅ、因みに前の人間の女性とどっちが良かったと聞かれたら?」
ジャンセンは笑って今の方がいいと即答で答えたのであった。元々ジャンセン店に来る女は身寄りが無く金を持った客を狙って玉の輿を乗る奴らが多く、男性冒険者やそこそこの小金持ちは人間の女性相手とは恋仲にならない限り、店に通う客は早々いなかったというのだ。
しかし、サキュバスは妊娠を気にする必要はなく、精を魔力として吸い取る悪魔である。チップや回数などのサービスは客に好評であり、何より飯屋も毎日盛況であり、売り上げも良いと上機嫌の返答が帰ってきた。
当然の結果だろう。この世界には娯楽は数えるくらいしか存在しない。一般の人間の娯楽は食事に酒に女遊びの3つしか存在していない。
過去に知哉も一時、金で女遊びや酒で忘れようとしたのをみて身体と金だけの関係だけでそこに愛などはない存在しないサービス関係の様なものだ。
それならば、それらを楽しめる場所で妊娠等を気にしなくてもいいサキュバスを働かせれば、ジャンセンには大金が入り、魔界側は魔力やサキュバス達の娯楽場になっているのだから互いに利益はあるのだ。
ふっと、イフリートは隣の空き家は誰かの所有物かと訪ねると、元々は自分の家族と住んでいた家だそうだ。
だが、 自分がこんな性格だから別れ、連れ込み宿の女店員の住み込み宿も兼ねていたと言うのだ。イフリートはジャンセンに連れ込み宿として改装してはどうかと提案する。
「それも考えてはいますがねぇ…領主の許可が中々おりなくて…」
「なるほどな…いっそ、領主に気に入られる手柄を立てれば土地でも貰ってサキュバス街でも作ってジャンセンにオーナーでもやらせて儲けさせるのも面白いな…」
「イフリートの旦那も悪どいっすね。流石は大悪魔様だ!!あ、ここだけの話なんですがねぇ。領主様は最近、腕の立つ後衛兵や冒険者を雇ったという噂を耳にしましたねぇ…なんでも近くの野盗集団が娘を拐おうとしたらしくて…」
「ほぅ…この辺りの魔物も結構な強さを誇るものもいるのに中々の腕を持った野盗集団の様だと…」
ジャンセンの話を聞き、野盗集団の事を教えられたが、今は自分の女の好みを見つけるのが先決の為近いうちにまたくると言い残して店を後にすると、丁度人に化けて買い出から帰ってきたサキュバス達に持て囃されてるのを横目にイフリートは受けた依頼をこなす為、街を後にしたのであった。
5年くらい前の実体験です。身体と金の関係は心は満たされなくてそのうち興味が無くなって行きました。酒も強くないけど何かにすがらないとやっていけない弱さを感じた時期もありました。




