理解したからこその悩み
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ティアネス王国城下街『アテナス』から戻ってきた3人は直ぐ様エデンの冒険者ギルドに顔を出すと見知らぬ男性を引き連れて帰ってきたイフリート達に首を傾げていたが、書類が落ちることがし、マリナが振り替えると、セリアが驚いた表情をしてゴッシュを見つめていた。
ゴッシュはセリアの顔を見ると微笑み、セリアは受付から飛び出してゴッシュのもとに駆け寄った。
「ゴッシュ…?なんでここに…村から出ていって今までなにしてたのよ!?」
「そ、それは…」
「まぁ、セリアよ。落ち着け。ゴッシュはお主のとの幼い日の約束を果たす為に旅立ったのだぞ?」
「えっ…?」
突如として自分の前から消えた幼馴染のゴッシュが現れた為、セリアは寂しさと怒りと安堵の混ざりあった複雑の感情を発し、ゴッシュはそんな彼女に何と謝り想いを伝えれば良いのか分からずにたじろんだ様子で困惑していたのであった。
イフリートが助け船を出してセリアを落ち着かせると親からセリアが地元の領主の息子と結婚する話を聞き邪魔になっては行けないと両親を説得し冒険者になった事や『国で一番の槍使いなったら結婚してあげる』という幼い日の約束を守り槍使いとして前戦で活躍していた事をセリアに伝えたのであった。
「…い、今更だけど子どもの頃の約束を果たして君に告白をしたかった…けど、結婚の話を聞いて平民と貴族の妻になれる事を考えたら…」
「けど…なんで今ここにいるのよ…」
「イフリートさんにセリアが婚約する前に他の女と子ども作ってしまった事も聞いた。
その弱みに漬け込む様で嫌だけど子どもの頃約束を果たしてここにきた!!
セリア、僕と結婚を前提に付き合ってください… !!!」
ゴッシュはその場で跪き、公開プロポーズをしたのだ。これには周りにいた女子陣から黄色い悲鳴が上がったが、それ以上に大粒の涙を流しながらゴッシュを抱きしめ、それを了承するとギルド内がお祭り騒ぎになり、イフリートとアルマはそっとバレないようにギルドから去っていった。
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エデンの街から離れた場所には広大に広がる草原地帯や野盗が根城しているという森が近くにある。
イフリートとアルマは草原が見える丘で何も語らず、風に揺れる草原をただ見つめていた。
すると、イフリートはアルマに今後の事を尋ねてみる事にしたのだ。
「アルマ、俺に恋人や好きな人が出きると思うか?」
「…何とも言えません。リリアーヌ様もダエノール様も正直にいえば美人あたる方々です。ダエノール様の愛人、側室宣言は意外でした…」
「うむ…やはりか。俺自身、あそこまでダエノールに好かれているとは思っても見なかった。先程のゴッシュとセリアのやり取りでリリアーヌの顔が浮かんだのも事実だが…」
「イフリート様には全て該当しなかったと…?」
実際に知哉のいう契約の「お前が本気で愛した人が現れたならその人を愛し全力で護れ」という意味が少し分かった気がしたのだ。
リーフやマーリンの様に守ってやりたくなるのが男の性あり、ゴッシュやスティルの様に相手の為強くなろうという気持ちこそが恋であり、異性を思うのが『愛』だというのは分かった。
だが、リリアーヌやダエノールは同じく 13人の大悪魔の席に座る実力者でありイフリートが守る必要はない。そして何よりも人間の女性に興味を引くモノを感じなかった。
イフリートの契約の大半は破滅と滅亡のどちからのみで大体は好き勝手暴れて街や国を焼き付くし、人を殺めるのが悪魔しての契約であり、粗暴で狂暴な悪魔に求める契約として間違ってはいないだろう。
知哉の契約はイフリートにとって困難なものである。大悪魔である自分を好きになってくれる女性がいるのかと言う事だ。
街の者や親しくなった女性陣をくっ付けたのはその恋愛感情を知る為の行動であった。
だからこそ、しれば知るほど自分が興味を持ち守ってやりたくなる様な女性や悪魔である自分を受け入れてくれる種族の女性が存在するのか疑問でしかないのだ。
「ただの身体だけの肉体関係だけで愛や恋というならリリアーヌやダエノールやアルマは抱けばいいだけの事だが…」
「…しかし、それは真っ先に試し、契約外であり、イフリート様が恋愛感情を学ぶ為に様々な事をしているのは承知しております…」
「そうか…お前は暫くの間、魔界に戻ってマグニスの精を奪ってこい。
俺は…今後どうするか考えておく。連れ込み宿のサキュバス達は定期的に入れ替えして中級から上級を増やす計画は継続させるからな」
「分かりました…。イフリート様、お気遣い感謝します」
アルマは魔界に通じる門を開くとそのまま姿を消して草原にはイフリート独りだけになってしまったのだ。
イフリートは草原に身を投げ出して横になると今後どう動くか考えていたが纏まる事はなかった。
セリアとゴッシュのカップル誕生にお祭り騒ぎギルドには戻らずに適当な木の幹に登り眠りについたのであった。




