悪魔との契約
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…そうでした。思い出しました。そうだよ。俺、思い切り女神様に向かってくそ失礼な事をいってたじゃん!?そりゃ、魔界にもの落とされますよ。要はあれか『年齢不詳の貧乳ババア』呼ばわりしたから悪魔に惨い事を永遠とされろと…。そういうことですね。女神・ティア様、今更ながら無礼を心より謝ります。けど、俺の大事なモノぶっ壊したあのくそ女上司に似てるあんたが悪いんだよ!!あの性悪クソ女が女神出来るなら世の中の大多数の女性が女神様じゃねぇかよ。
「それにも女神相手に『年齢不詳の貧乳ババア』とは…ブハハハッ…!!!」
「だってそうだろよ!?神なんだから美人にいくらでも見せれるだろ!?なんでよりにもよって嫌いなクソ上司似なんだよ!!!」
俺の言葉にイフリートは爆笑する。よくよく冷静に考えたら俺、女神の次は悪魔に会うってホントにツイてねぇなと心の底から思った。仕事のストレスで出会い系使って性欲発散させようとして、デブス5連チャン引き当てたくらい無いわ。けど、仕方ねぇか。そんなろくでなしの俺にも、一時期惚れくれた優しい彼女が2年もいたんだ。アイツを幸せに出来なかったは悪魔に殺されて当然か。
「で?俺、今からあんたに殺されるの?それとも拷問系?」
「おい、俺をその変の悪魔と一緒にするな。このイフリート、その程度では最早物足りんのだ!!!」
魔界は生存競争が激しく弱いものから順に喰われていく【弱肉強食】の世界だ。その頂点の一角であるイフリートは魔界の一部の領土を支配している。その為、自分に挑んでくる悪魔はおらず、支配している領土の悪魔は挑んでくる事はない。
「つまり、俺は暇なのだ!!俺の娯楽に付き合え!異世界人よ!」
「娯楽って…んなゲーマーみたいにゲームやり込んでた訳でもねぇし…悪魔が求める娯楽っつっーのがわかんネェよ。魔王にでもなって人間界攻めるとか?」
俺が【魔王】というとイフリートは小馬鹿にしたように数段ある階段に座り込んだ。そしてただ挑んでくる勇者や冒険者を待ち受けて返り討ち合わせるとこが娯楽になるのかと訪ねてきた。良く考えればイフリートは魔界の頂点の一角で挑んでこられても大体返り討ちにしてしまうだろうし、何より待ち続けることは退屈の極みだ。領土に入ってきた俺を殺さずに話してるのも暇潰しなのだろう。
「ん?そーいや、なんで俺が異世界人だとか女神に暴言吐いたこと知ってんだ?」
「悪魔は人の思考や記憶を見通す事が出来る。人の弱みに漬け込めぬ悪魔は悪魔であらずだ…」
なるほど。つまり俺の記憶を見て異世界人であることや女神に『年齢不詳の貧乳ババア』といったことも知ってたのか。
「…ちょい待て!!てぇことはお前には俺がやってきた恥ずかしい事も丸みえつーことか!!?」
「無論であるが…主の場合、惨い事結末が多すぎて弄る気にもならん。」
悪魔にも同情されるとは…。けど、確かに彼女別れてから良い事があった覚えが全くない。というか娯楽と言われても仕事して家に帰って寝ての生活を繰り返した俺の娯楽ないに等しい。まぁ、それが原因で自殺してようなもんだ。
娯楽が欲しいなら、俺の身体でも乗っ取って地上で冒険者やって恋人でも見つけて普通の幸せてやつを経験するとか悪魔ではなく人らしい人生をコイツに歩ませてるのはどうだろうか。
「なぁ、俺の身体使って冒険者やって女作ったりして人らしい人生歩んでみるのは娯楽になるか?」
「ほぅ?だが、主はそれで良いのか?異世界人は転生とか転移とかで無双するのが好きなのでは…」
確かに最近読んだ漫画系も異世界でチートだのスローライフ生活だのあったが正直生まれ変わってあのクソ女神にまた面合わせる位なら悪魔に身体をくれてやった方がマシだ。
「使えるかわかんネェけど、記憶とかそー言うの使って好きにやりゃ良いんじゃねぇの?また死んであのクソ女神の面見たくないし、それならお前の娯楽に使われる方がマシだ」
「悪魔の契約にそんな条件を持ち出してきたのは主が初めてだ。で?契約として俺は何を成し遂げれば良い?」
俺の身体と前世の記憶を好きに使って良い条件にその対価としてイフリートは何を求めるか訪ねてきた。そもそもお前の娯楽なんだから別に無くても…。いや、もしコイツが…。
「…もし、お前が本気で愛した人が現れたならその人を愛し全力で護れ。俺が出来なかった事をやってみろよ。以外に難しくて辛い契約だぞ?俺は出来なかったからな」
「…変な男だ。その契約で良いだろう。俺を惚れさせ愛させる人間がいるかは知らんがな!!」
イフリートは長い爪の先を俺の額に当てると、体内に入り込んだ。そこから記憶はなくなった。