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口は災いの元

人生に疲れた伊藤知哉は自殺し、気がつくと目の前に大嫌いな女上司のそっくりの女神がいた。女神に暴言を吐き、魔界に落とされた知哉はそこで大悪魔イフリートと出会う。精神的に追い詰められいた知哉はイフリートに自分の身体を渡す事を条件に殺して欲しいと懇願する。



***********************


…どうしてこうなってしまったのだろう。ただ一人の人間として普通に生活できれば満足だった。自分には特別な才能なんて無い。平凡に生きられたら良かった。けど、俺にはそんな事すら出来なかった。


「フハハハハッ!!!ようこそ!!我が城へ!!我こそは魔界の大悪魔・イフリートだ!!」


((((ホントどーいうこと!!?))))


伊藤知哉(いとうともや)は27年という人生を終え、気が付くと、目の前に魔界の大悪魔と名乗るイフリートがいた。


「ま、魔界ってなんだよ?地獄じゃねぇのかよ?つーか、何がどうなってんだよ!!?」


「落ち着け。最近良くある異世界への転移やら転生を断り、女神に乳ナシババアと暴言を吐いた者よ」


イフリートに宥められ、落ち着きを取り戻し何があったか思い出し始めた。俺は死んだ。正確には自殺した筈だ。人の役に立ちたくて介護の専門学校に進み、そこで最愛の人と出会い順風満帆の社会人生活を歩む筈だった。だが、現実は悲惨なもので事前の相談なく、移動となっており、他の同期とは違う扱い、上司もろくに仕事も教えてくれず、尋ねても「忙しいから他に聞いて」の繰り返しだ。そんな上司に腹を立ててつつも家に帰れば同棲した彼女がいた。彼女の為に頑張ろう。だが、それも一瞬にして無くなった。


「ゴメン…とも…別れて…」


「えっ…なんで…」


彼女も同じく介護施設に就職したが、その現場が余りにも酷い環境な上、その職場の女上司に精神的に追い詰められおかしくなってしまった。彼女に仕事を辞めてもいい。俺が頑張るから。守るからと何度も説得した。


だが、彼女は泣きながら俺に迷惑をかけたくないといい続けた。そんな彼女の姿を見ていられず了承し、彼女は実家のある田舎に戻り、ルームシェアの部屋に一人暮らすことになる。専門学校時代に付き合い、就活が決まった時に二人で決めた部屋だ。ここには彼女との思い出が多くあった。そして何よりも彼女を追い詰めた上司や介護職に嫌気が差し、仕事を辞めた。


「まだ入社して3ヶ月じゃないかそんなじゃこれから…」


((人の大事なもん壊して何綺麗事いってやがるんだ…地獄に墜ちろ。老害くそ上司が…!!!)


心の中で悪態をつき、介護の世界から離れた。こうなったのも女が上司である事が悪いと思った俺は男しかいない工場職に再就職した。まだ女上司の下で働くよりマシだろうとたかをくくっていた。派遣会社からの紹介ということで工場内のいくつかの部署をたらい回しにされた。


「なんでこんな事も出来ねぇんだよ!?やる気がねぇなら辞めちまえ!!!」


心ない上司の言葉に苛立つが顔には出さずに頭を下げた。そもそも出来る筈もない。その部署でその仕事を続けてきたベテランと違う部署にたらい回しにされ、経験も少ない俺が同じ事を出来る筈無い。何度も何度も頭を下げる。ろくな研修もなく少し手本を見せたらほったらかしいの癖にだ。それでも我武者羅に働いた。正社員になって働いて働いて精神的に追い詰められ俺は自殺した。やっと解放された。これで…。


「…はっ?ここ何処だ…?」


「ようこそ。死後の世界へ…私は女神ティアです」


気がつくと、雲が掛かった如何にも神様がいますよ的な所にいた。目の前には美女…うん。美女なんだけど何か嫌だ。初対面ではあるが俺は女神・ティアが生理的に無理だった。金髪の長い髪で学校でいうところのカースト上位にいる清楚系ギャルだ。男を言葉巧みに利用するタイプ…俺の人生を狂わせたくそ女上司だ。


「あ、そっすか。天国でも地獄でもいいんで、さっさと済ませちゃって下さい。時間掛けても迷惑なので…」


「な、何というか…ドライですね。えっとですね…。貴方には地球とは別の世界にいってもらい、勇者として魔王を討伐して貰いたいのです。」


これあれだ。最近流行りの死んで転生とか転移して美人美女に囲まれてチート人生を歩めますってヤツだ。人生疲れて自殺した俺に魔王討伐とかゲームの主役っぽい事いって利用するつもりだろ。めんどくセェし、適当な事いってさっさと済ませよ。


「無理っすね。俺にはそんな力ネェですし、そもそもそんな正義感なんて童貞共々無くなっちゃいましたよ。」


「えっ…?あの…勇者ですよ…?」


ティアは俺の返答が余程以外だったのかアタフタとし始めた。子ども頃はゲームの主役には憧れた。けど大人になって良く考えてみりゃ、面倒事を押し付けただけで根本的に苦労するのは主役だけなんだよ。 仲間の装備やステータスだってこっちが管理して魔物倒して報酬でろくな金も寄越さず言葉だけ、日本のブラック企業と何が違んだよ。


「女神様なら俺が自殺した理由知ってますよね?俺は人の役に立つ仕事を選んだせいで何もかも失って死を選んだんだよ!!!なのにまた人の役に立って死ねってか!?あんたホントに女神かよ!?俺にまた苦しめってか!?それもあれか?俺の国で異世界転生させてあげますよーいったらホイホイ受け入れてくれると思いですか?」


「いえ、決してそうではありません!!!貴方は他者を大切に出来る優しい方です。だから…」


「うるせぇ!!!これ以上苛つかせんじゃねぇよ!!!年齢不詳の貧乳ババアに言い寄られて靡くと思ってんのか!?舐めんなくそったれ!!」


女神に対して暴言を吐いたのが行けなかったのだろう。いくら嫌いな女上司に似てるからと暴言を吐いたらいくら女神でもキレる。ティアは指をパチンッと鳴らすと俺の真下に穴を出現させ、落とした。これでいいんだ。俺はもう疲れたんだよ。


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― 新着の感想 ―
[一言] どうもはじめまして。 作品拝見しました。 とても面白かったです。 (*´▽`*)
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