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魔物使いの弟子  作者: 天利ミツキ
第二部
96/560

Re:39 ガールズside:ヨーコの正体

前回のあらすじ

海賊を退治した




※一部修正しました(2022/1/15)

 

「…………ん。…………ちゃん。……ヨーコちゃん!」


 パウリナの声がして、あたしはベッドから飛び起きる。

 そして寝ぼけ眼のまま辺りを見回し、状況を確認する。


 確か……そう。

 あたし達は昨日、サクラ皇国に向かう船に乗って、船内で一夜を過ごしたんだった。

 それで、パウリナと一緒の部屋で寝ることになったんだっけ。


 ……なんだかイヤな夢を見た気がするけど、夢の内容をまったく思い出せない……。


 まだ覚醒しきれてない頭で、支離滅裂気味にそう考えていると、パウリナが心配そうな顔をして覗き込んでくる。


「大丈夫、ヨーコちゃん? なんだかうなされてたけど……」

「……うん、大丈夫」


 あたしは口ではそう言うけど、思い出せないイヤな夢が原因なのか、胸中に正体の分からないモヤモヤが溜まって不安な気持ちになる。

 そして思わずパウリナに抱きつき、彼女の胸に顔を埋める。


「きゃっ!? ちょ、ちょっと、ヨーコちゃん!?」


 パウリナはビックリしているけど、構わずに彼女を抱く腕に力を込める。


「…………。まったく、もう……」


 パウリナはあたしをそっと優しく抱き締め、頭を撫でる。母親が怖い夢を見た子供をあやすように。


 そうされているだけで、あたしの中にあった不安な気持ちは次第に薄れていった―――。




 ◇◇◇◇◇




 甲板に出て大きく伸びをする。潮風が気持ちよかった。


 ……さっきのヨーコちゃんの様子は気になったけど、怖い夢でも見たのかな?


 わたしはそう思うけど、ヨーコちゃんが大丈夫と言うので、深く聞くようなことはしなかった。

 それと、現在進行形で大丈夫じゃない人がいるし……。


「うっぷ……」

「大丈夫ッスか、ミラちゃん?」


 ミラちゃんが絶賛船酔い中だった。

 昨日の船出から、ステファニーちゃんが付きっきりで介抱してくれていた。

 わたしも彼女の近くに行って、容態を確認する。


「ミラちゃん、大丈夫?」

「………………」


 ふるふると、首を横に振る。

 一言も喋れないくらいにダメなようだった。


 それから船が目的地に着くまでの間、わたしとステファニーちゃんはミラちゃんの介抱を続けていた―――。




 ◇◇◇◇◇




 船が目的地であるサクラ皇国にたどり着く。

 船が港に接岸したのを確認して、わたし、ミラちゃん、ステファニーちゃんと順に船を降りていく。

 ミラちゃんは船が接岸したのと同時に顔色が良くなっていき、船を降りた時にはすでにいつもの調子だった。


「……とうとう来ちゃったか……」


 最後に降りたヨーコちゃんが、そうポツリと呟く。


 ヨーコちゃんにとっては久しぶりの里帰りのハズだけど、どこか気分が沈んでいるように見えた。

 彼女が家出した理由と何か関係があるのかもしれない。


「どうしたんでしょう、ヨーコさん?」

「分かんないッス」


 ヨーコちゃんの異変に気付いたのはわたしだけではなくて、ミラちゃんとステファニーちゃんも疑問に思っていた。


 ヨーコちゃんに、元気がない理由を聞きたい気持ちをぐっとこらえて、みんなと向き合う。


「やっと皇国に来れたんだから、竜王の試練を進めないと。ねっ、ステファニーちゃん」

「……そうッスね。頑張らないと!」


 ステファニーちゃんが気合いを入れるように、両手をぐっと握り締める。


 この国に来たのは、「竜玉」と呼ばれるモノを取ってくるという試練の内容だったからだ。


「試練を進めるのはいいですけど、竜玉って一体何なんですか?」

「……そういえば」

「……正体を知らないッス」


 ミラちゃんの疑問に、わたしとステファニーちゃんは顔を見合わせた。

 シグさんは竜玉を取ってこいとは言ったけど、その正体については何一つ言ってなかった。


「う〜ん……たぶんッスけど、それも含めての試練なんじゃないんスか?」

「つまり……現地の人に聞き込みして、自力で探し出すってこと?」

「そうッス」


 ステファニーちゃんが頷く。

 思ったよりもすぐに試練が終わりそうだと、わたしは確信する。


「それなら、現地の人がすでにいるじゃない」

「えっ……? あ、そうだったッスね」


 ステファニーちゃんも思い至ったようだ。

 このパーティーには、皇国出身のヨーコちゃんがいるから、彼女に聞けば竜玉の正体が判るかもしれない。


「う〜ん……これは……」


 とその時、ミラちゃんが近くにあった看板を見て唸っていた。

 わたしは気になって彼女に尋ねる。


「ミラちゃん、どうしたの?」

「お二人共、これを見てください」


 そう言って、さっきまで見ていた看板を見るように促す。

 わたしとステファニーちゃんは顔を寄せて、ミラちゃんが見ていた看板に貼られている紙に書かれていることを読む。


『探し人


  金色の髪、青い瞳、狐のような耳と尾を持つ女子


  この者を見かけた場合、近くの屯所まで連絡を』


 そんなことが書かれていた。


 ……まるでヨーコちゃんみたいだなぁ……。


「まるでヨーコちゃんみたいッスね」


 ステファニーちゃんもわたしと同じ感想を抱く。


「まるで、じゃなくて、そのまんまなんですよ」


 ミラちゃんがそう言うので、わたしは後ろに立っているヨーコちゃんを見る。


 ヨーコちゃんはキレイな金髪をポニーテールに結って、真っ青な目をしていて、狐のような耳とシッポが生えている、とても可愛らしい女の子だった。


 ……うん、紙に書かれていることと完全に一致するね。


 そう思っていると、なんだか辺りが騒がしくなってきた。


 なんだろう? と思うより先に、わたし達四人は武装した集団に周りを囲まれた。

 最前列にいる人達が、わたし達に向かって槍を突き出して警戒体勢を取る。


 わたし達も、いつでも戦闘になってもいいように身構えるけど、ヨーコちゃんだけはただその場に突っ立っているだけだった。

 わたしが疑問に思っていると、武装集団の奥から厳つい男性が近付いてきた。恐らく、この集団のリーダーなのだろう。


「異邦人達よ、突然の無礼を許して欲しい。すまないが、我々にご同行願おう」


 リーダーの人がそう言ってきた。

 わたしが答えるより先に、ヨーコちゃんが口を開いた。


「大人しくついていくけど、あたしの友達に傷一つ付けたらタダじゃおかないわよ?」


 ヨーコちゃんが殺気を感じさせるほどの声音でそう言う。

 槍を構えている人達はその迫力に圧されて数歩後ずさるけど、リーダーの人はどこ吹く風というような感じだった。


 そして彼は、わたしの耳を疑うようなことを言った。


「重々承知しておりますよ。―――サクラ皇国第一皇女、ヨーコ様」






ずっと温めていたヨーコの正体がやっと出せました。



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