Re:35 ガールズside:竜王の娘VS聖女 後編
前回のあらすじ
超級魔法のオンパレードだった
※一部修正しました(2022/1/2)
わたしはドラゴンの姿になったステファニーちゃんのシッポによって、闘技場の壁まで吹き飛ばされた。
自分の身体と壁の間に《メガエアロ》を発動させて、空気のクッションを作ることによって壁に衝突することを防ぐ。
空気のクッションに身体が沈み込み、パンッという空気が弾ける音が響く。
そのまま壁にぶつかるけど、ダメージはほとんどなかった。
クッションがなかったら、壁に身体がめり込んでいたかもしれない。
わたしは壁に背中を付けたまま、両足を着地させる。
わたしは軽い頭痛を覚えるけど、それを無視してステファニーちゃんの方に目を向ける。
彼女は魔獣化を解除していて、一旦人型に戻ったけど、再び半魔獣化して翼をはためかせてわたしに接近してくるところだった。
「《グラウンドバースト》!」
ステファニーちゃんの接近を妨害しようとして、土属性超級魔法を発動させる。
地面から土塊が隆起して彼女を囲み、そのまま彼女を閉じ込める。
……頭痛がさっきよりひどくなったけど、たぶんというか絶対、魔力欠乏症に陥ってるな、わたし。
それも当然のことだと思う。
さっきからあれだけ超級魔法を連発してたら、そうなるに決まってる。
たぶん、あと二、三発が限界だと思う。
……ステファニーちゃんには悪いけど、勝負を決めさせてもらう。
わたしはそう決断して、土塊の内側に闇属性超級魔法の《アビスバースト》を発動―しようとする前に、異変が起きた。
土塊が突如として氷つき、そして砕け散った―――。
◇◇◇◇◇
……魔法の形は自由ッスけど、まさかこう来るとは。
アタシはパウリナちゃんが発動した土属性超級魔法によって閉じ込められながら、そんなことを考えていた。
同じ魔法でも、術者や戦況によってその形は変化する。
例えば、同じ《ファイア》を発動しても、ある人は火球だったり、またある人は直線状に放射したりと、その形は千差万別だった。
アタシを閉じ込めているこの魔法もそうだった。
本来は相手を攻撃する魔法なのに、アタシを閉じ込める檻という形に変化させていた。……攻性魔法ってなんだっけ?
と、その時、異変を察知した。
姿は見えないけど、パウリナちゃんから魔力の高まりを感じた。
たぶん、勝負を決めようとしているのだろう。
……そうはさせないッス!
アタシは氷属性上級魔法の《ギガアイス》を発動させて、土塊を氷結させる。
そして両手の剣を振り回して、氷漬けになった土塊を破壊する。
……そっちがその気なら、こっちも勝負を決めさせてもらうッスよ!
アタシはそう決断して、翼をはためかせてパウリナちゃんに急速接近、もとい、突撃する―――。
◇◇◇◇◇
ステファニーちゃんが氷漬けにした土塊の中から出て来て、こちらに再び接近してくる。
彼女の進行を止めるために、発動しかけた《アビスバースト》をキャンセルして、代わりに水属性超級魔法を発動する。
「《スプラッシュバースト》!」
津波がステファニーちゃんに襲いかかる。
だけど彼女は、左手の剣を突き出して津波を切り裂いていた。
ステファニーちゃんも勝負を決めるつもりらしく、彼女の突撃の勢いは衰えなかった。
……こうなったら仕方ない。玉砕覚悟で決める!!
わたしがそう覚悟を決めたのと同時に、津波は消え失せた。
ステファニーちゃんが左手の剣を突き出したまま、突撃してきた。
狙いは、わたしの右肩辺りっぽかった。
わたしは右手の剣でその軌道を逸らすと、ステファニーちゃんの剣が壁に突き刺さった。
すかさず彼女は右手の剣も、わたしの胸に狙いを定めて突き出してくる。
剣の腹でなんとかその突きを受け止める。
ステファニーちゃんが目の前にいる千載一遇のチャンスに、わたしは勝負を決する魔法を発動する。
「《ボルテクスバースト》!!」
全魔力を込め、自身もダメージを受けることを厭わずに発動する。
流石にステファニーちゃんも防御が間に合わなかったようで、もろに雷撃を受ける。
「くっ……」
「ぅあ……」
互いに呻き声を上げて、地面に倒れ伏す。
頭痛がひどくなり、魔力もなくなったのでもう魔法を発動出来ないけど、まだ勝負は着いてなかった。
わたしが立ち上がるより先に、ステファニーちゃんがフラフラと立ち上がって、近付いてからわたしの身体に馬乗りになる。
そしてわたしの首の近くに、右手に持ったままの剣を突き立てた。
「そこまで!」
審判役のシグさんが大声でそう言った。
そして、勝者の名前が告げられる。
「勝者、ステファニー!」
ステファニーの辛勝です。
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