Re:16 決闘
前回のあらすじ
プロポーズした
※一部修正しました(2021/12/14)
僕達は、王城の裏にある闘技場に来ていた。
闘技場は楕円形をしていて、それを取り囲むように観客席が階段状に設けられていた。
今日ここで、僕が師匠の後継者になることに不満がある人達が、僕と決闘することになっていた。
師匠から事前に聞いた話だと、不満があるのはサウス卿を始め、ソロモニアの四方を統治する貴族家達だけだった。
そして僕の対戦相手は、その四貴族家の嫡男らしい―――。
◇◇◇◇◇
僕は対戦相手と対峙していた。
相手は自分に自信があるのか、僕を見下すような目をしていた。
僕は視線を彼らから観客席の方に向ける。
観客席は大勢の人で埋め尽くされていた。
僕は今日自分の剣の他に、パウリナの杖を借りて装備していた。
中央大陸にいた時から自分の杖を買おうとずっと思っていたけど、本気を出す時はパウリナの杖を借り続けていたので、結局買わず仕舞いだった。
そのパウリナは、ヨーコ達と一緒に観客席の最前列に座って僕を応援している。
師匠もこの戦いを見届けるために、観客席の一番高い所に特別席を設けて観戦していた。
この決闘の審判役を勝手出た、師匠の従魔の一人のバルバさんがルールを説明し始めたので、視線を対戦相手に戻す。
ルールはいたってシンプルだ。
僕が四人全員を倒すか、四人の内の誰かが僕を倒せばいい。
バルバさんが忠告する。
「ちなみに、危険だと判断したら止めに入るからそのつもりで」
バルバさんの説明と忠告が終わり、僕は所定の位置まで下がった―――。
◇◇◇◇◇
バルバさんが試合開始の合図という風に、右手を高く上げてから振り下ろす。
僕が剣と杖を構えると、貴族家の嫡男達は各々無駄に長い名乗りを上げているが、僕は興味がないので聞き流す。
長過ぎてだんだん僕のやる気が無くなってきた。
最後のサウス卿の嫡男の名乗りが終わり、僕に振ってくる。
「おい、キサマも名乗れ。わざわざキサマのような輩のために、我ら高貴な者は名乗ったのだぞ」
……ずいぶんと上から目線だなぁ。というか、選民思想に寄ってないか?
そんなことを思うけど、口には出さなかった。
変わりに、彼に言われた通り名乗り上げる。
「あ〜……え〜っと、アルスです」
僕がそんなやる気のない名乗りをすると、サウス卿の嫡男が何故かキレた。
「キサマ!! やる気があるのか!?」
「ありますよ」
あるけど、あんたらの名乗りが長過ぎるからやる気が無くなった、とは言えないのでとりあえず取り繕った。
「それならば、キサマのやる気を見せてみろ!!」
彼にそう言われたので、遠慮なくいかせてもらう。
「それじゃあ遠慮なく。《ボルテクスバースト》」
とっととこんな決闘を終わらせたくなってきたので、超級魔法で素早く勝負を決める。もちろん、威力はちゃんと死なないように手加減した。
彼らはもろに喰らい、地面に倒れ伏す。
バルバさんが彼らの下に向かい、誰一人として起き上がらないので戦闘継続は困難と判断したようだ。
「勝者、アルス!!」
バルバさんがそう宣言すると、歓声が響き渡った―――。
◇◇◇◇◇
僕は剣を鞘に納める。
バルバさんは自分の部下に指示を出して、未だに倒れ伏している四人を医務室に搬送させた。
僕はそのままパウリナ達がいる観客席に向かおうとした時に、師匠が観客席から降りてきて僕の前に現れた。
「アルス、よくやった」
「いえ、それほどでも」
「だけど、観客もあれだけじゃつまらないだろう。だから……」
師匠が鞘から剣を引き抜き、その切っ先を僕に向けてくる。
「ぼくとも、決闘しようか」
師匠がそう言うと周りはシンと静まりかえり、そして割れんばかりの歓声が上がる。
僕は一応理由を尋ねる。
「……師匠。何でそんなことするんですか?」
「弟子がどれだけ成長したか知りたかったからね」
師匠にそう言われちゃうと断れなかった。
僕達は闘技場の中央に行き、向かい合う。
僕と師匠は両者とも、剣と杖の変則二刀流スタイルだ。
先程と同じように、バルバさんが試合開始の合図をする。
そして僕と師匠の、恐らく最初で最後の真剣勝負の火蓋が切って落とされた―――。
何故かソラとも戦う羽目に‥‥‥。
評価、ブックマークをしていただけると嬉しいです。




