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魔物使いの弟子  作者: 天利ミツキ
第二部
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Re:12 愛するキモチ

前回のあらすじ

アルスとパウリナがケンカ(?)をした




※一部修正しました(2021/12/9)

 

 僕はパウリナの質問に正直に答える。


「ヨーコ達のことは、仲間として大切に思ってるよ」

「それは知ってるけど、そうじゃなくて……異性として、女の子としてどう想ってるの?」

「異性として、か……」


 僕は嘘を吐こうとしたけど、パウリナに正直に答えてと言われてたのを思い出し、本心を打ち明ける。


「ヨーコ達のことは異性として、まぁ……好き、なんだと思う」

「いつから?」

「いつ、と聞かれても……一緒に旅する内に、気付いたらそうなってたとしか……。それに、僕にはもうパウリナがいたから、不義理なことはしたくなかったんだ」

「フフッ、アルスらしい」


 僕の回答に、パウリナは満足そうに微笑む。

 僕は彼女がなぜそんなことを聞いてきたのか気になり尋ねる。


「それにしても……なんで突然そんな事を聞いてきたの?」

「え? え〜っと…………笑わないでね?」

「うん」


 パウリナは頬を染め、僕から視線を外し理由を言った。


「ヨーコちゃん達もアルスに好意があるから、告白されてもわたしを理由に断らないで欲しいなと思って」

「……フフッ」


 僕は思わず噴き出した。

 パウリナが僕をポカポカと叩いてくる。


「笑わないって言ったのに〜!」

「ごめんごめん。パウリナがそんな事を考えてたなんて知らなかったよ。……でも、いいの? 僕がパウリナ以外の娘と付き合ったりしても」


 パウリナの手を取って叩くのをやめさせ、正面から見据える。

 彼女も僕の視線を受け止めるかのように見つめる。


「嫌だよ、とても嫌。わたしだって女の子だから、好きな男の子を独り占めしたいっていう気持ちはあるもの。だけど、ヨーコちゃん達は別。ヨーコちゃん達は、たまたま同じ男の子を好きになって、先にわたしが結ばれてただけだもの。それに、友達の幸せを願うのは当然でしょ?」


 パウリナがなんてことないという風に微笑む。

 その笑顔がとても綺麗で、魅力的で、僕は本能的にパウリナを抱き締めた。

 そのまま僕は心の内を吐露する。


「……たとえヨーコ達と付き合うことになったとしても、僕の一番はパウリナだから」

「……うん」


 僕は抱き締めている少女に色々したいという本能を、わずかばかりの理性で必死に抑える。

 僕も男だ。目の前の、とても愛しく感じている少女に色々したい気持ちはあるけど、パウリナの意思を無視してはいけないと思う。


 僕に抱き締められながら、パウリナが小さく呟く。


「……だけど今は、今だけは……わたしだけを愛して欲しいな」


 そこが理性の限界だった。


 僕はパウリナと唇を重ね、そのままベッドに押し倒す。

 唇を離し、パウリナに覆い被さる形で四つん這いになっていると、彼女が僕を見上げながら言う。


「優しくしてね……?」

「……善処します」


 僕達は再びキスをする。

 そこからは本能に身を任せた。


 この日、僕とパウリナは、身も心も一つになった―――。




 ◇◇◇◇◇




「…………んっ」


 深い微睡みから、意識が徐々に覚醒してくる。

 僕は重い瞼をゆっくりと開け周囲を見渡すと、窓から朝日が射し込んでいた。

 半分覚醒してきた頭で昨日の事を思い出す。


 ……うん、忘れたくても忘れられそうにないな。


 僕は身体を動かし、隣にいるパウリナの方を向き僕達の状態を確認する。

 彼女はまだ眠っていて、僕達は一糸纏わぬ姿をしていた。

 僕はパウリナを起こさないようにベッドを抜け出し服を着る。


 着替え終わったのと同時に、ベッドの方から物音がした。

 そちらを見ると、パウリナが布団を頭まで被っていた。

 僕は一応声をかける。


「えっと……パウリナ、起きてる?」


 パウリナが顔だけ布団から出す。

 その顔はリンゴの様に真っ赤だった。


「………………おはよう、アルス」

「お……おはよう、パウリナ」


 僕は平常心を装うけど、たぶん僕も赤くなっていると思う。


「……アルス、お願いがあるんだけど」

「な、何?」

「わたしの着替えを取ってくれない?」


 僕はパウリナの服を手に取り、彼女に手渡す。

 それを受け取り、パウリナは布団の中に潜ってモゾモゾする。


 しばらくして、服を着たパウリナが出てきた。

 彼女は手櫛で髪を整えているけど、足が生まれたての小鹿のように震えていた。


「パウリナ、どこか調子が悪いの?」

「えっと……ある意味」


 そう言って彼女は、下腹部に手を当てる。

 それが意味することに気付き、僕は視線を逸らす。

 そのまま彼女に聞く。


「……歩けそう?」

「……無理、かも」

「……それなら、僕に掴まって歩けばいいよ。歩くペースはパウリナに合わせるから」


 僕はパウリナの隣に移動する。

 彼女は僕の左腕に自分の腕を絡め、支えにする。

 その状態で試しに室内を歩いてみて、彼女は大丈夫そうに頷いた。


 その時部屋のドアがノックされた。


「アルス君、パウリナちゃん。起きてますか〜?」


 シオンさんがドアの向こうから声をかけてきたので、僕は返事をする。


「はい、僕もパウリナも起きてますよ」

「朝食の準備が調いましたので、食堂までお越しください」


 シオンさんはそう言って、部屋の前から立ち去る音がした。

 僕はパウリナに目を向ける。


「行こうか?」

「うん」


 僕達はいつもよりゆっくりとした足取りで、食堂に向かった―――。






卒業しましたね。ナニが、とは言いませんが……。




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