Re:08 ソロモン王の過去 中編
前回のあらすじ
ソラがエル達と出会った
※一部修正しました(2021/8/23)
七十二人全員と本契約し終わった後、さすがのソロモンにも疲労の色が窺えた。
そんな中、一人の悪魔が彼女に質問をする。
「あの〜、質問してもいいですか?」
「いいよ、えっと……」
「グシオンと申します。それで、貴女様の名前をお教えくださいませんか?」
彼女―グシオンにそう言われ、ソロモンはまだ自分の名前を告げていなかったことに気付く。
「ああ、そう言えばまだ名乗ってなかったね。ぼくの名前はソロモンだ。気軽にソラ、と呼んでくれて構わない。君達の名前も教えてくれないか?」
ソロモン―ソラにそう言われ、まだ名乗っていない七十人が名乗る。
それを聞いて、彼女はある提案をする。
「普段は君達のことを、愛称で呼んでもいいかな?」
「ええ、構いませんけど……いったいどのような?」
「そうだなぁ……バエルなら……エル、とか?」
ソラの言葉に、バエル―エルが微かに笑みを浮かべる。
「エル……いい響きですね。よかったら、私の弟妹達の愛称も決めていただけませんか?」
「いいけど、君達きょうだいだったの?」
「はい。血は繋がってませんが、私達は同じ孤児院で育ったきょうだいです」
「そうだったのか、すまない」
「気にしないでください。それで、愛称ですが……」
「ああ、そうだったね。それじゃあ順番に。アガレスは……アジー。ウァサゴは……サグ。ガミジンは……ジン」
ソラは次々と愛称を決めていく。
中にはグシオン―シオンのように本名を気に入ってなかった連中は、愛称で呼ばれるようになって歓喜の声を上げていた―――。
◇◇◇◇◇
愛称決めも終わり、ソラはエルに尋ねる。
「それで……エル。君達悪魔族の特徴って何なの?」
「私達悪魔族の特徴は、他の種族に擬態出来ることです。このように……」
エルの姿が悪魔から人間に変化する。
「本来の姿から変わることが出来ます。ただし、あくまでも擬態なので、その種族特有の能力などは使うことが出来ません」
「なるほど……それじゃあ、三つ目の条件を今思いついたけど、いいかな?」
「ええ、何なりと」
「三つ目の条件は、君達がこの世界にいる間は、人間族以外の種族に擬態していて欲しいんだ」
「えっと……それはどういう?」
エルや他の悪魔達が首を傾げるので、ソラはその理由を答える。
「この世界の魔物使いは、人間族以外の種族しか従魔に出来ないんだ。それに、君達が異世界から来たというのは他人に知られたくない。だから、窮屈だとは思うけど、他の種族に擬態して生活して欲しい」
「そういったことなら……はい、分かりました」
エル達は快く頷く。
「それで、他の種族に擬態する方法は……」
「一目見れば擬態出来ますが、ソロモン様がその種族の身体的特徴を仰ってくだされば、それに合わせて擬態出来ます」
エルがそう言うので、ソラは各種族の身体的特徴を述べていく。
エル達はそれに合わせて擬態して、違和感のある箇所をソラが指摘して微調整していく。
最終的に、各々が気に入った種族に擬態していった―――。
◇◇◇◇◇
「それじゃあ、ぼくの国に案内するよ。ついてきて」
「あの……私からも一つ提案してもいいですか?」
エルフ族に擬態したエルがそう言い、ソラは頷く。
「いいよ。何でも言ってくれ」
「私達も国家運営に携わりたいと思っているのですが、よろしいですか?」
「こちらからもよろしく頼む。まだ国が出来たばかりで、人手が足りないんだ」
「はい、よろこんで!」
エルは笑顔で頷き、他の従魔達も頷く。
それを確認して、ソラはエル達と国に戻った。
エル達を引き連れて国に戻ったソラに、秘書は驚愕したが、ソラが真実をぼかしながら事情を説明して納得してもらった。
そこからは、激動の毎日だった。
エル達が補佐してくれているおかげで、国家運営は順調に進み、徐々に領土や国民を増やしながら西大陸一の国に成長していった。
その間、ソラの元に弟子入りを志願する者が続々と現れるが、彼女の思う条件に当てはまる人物が全くいないので、後継者探しは難航していた。
ソラとエル達が出会ってから十二年。
ある人物の登場によって、運命の歯車が動き出した―――。
次回でソラの過去編に区切りがつきます
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