第57話:西大陸へ
前回のあらすじ
初デートした
※一部修正しました(2020/12/01)
僕達が央都に滞在し始めてから、もうすぐ一年が経とうとしていた。
今日はパウリナと一緒にクエストに行き、それも無事クリアしてギルドに戻った時にメイさんに告げられた。
「おめでとうございます、パウリナさん! 今回のクエストクリアに伴って、Cランクへの昇格が決定しました!」
僕はそれを聞いて、隣にいるパウリナを祝福する。
「おめでとう、パウリナ。たった一年でCランクまで上がるなんてすごいじゃないか」
僕がそう言うと、彼女は頬を染める。
「そんな事ないよ。アルス達がわたしを鍛えてくれたおかげだよ」
「それでも、その後の努力はパウリナ自身がしたことだ。正直、最初はここまでなるとは思わなかった」
「そうなの? でも……」
「一番最初に言ったのはあくまで目標だから、達成出来なくてもそれでいいかな、くらいの気持ちでいたから。だから、本当にすごいよ」
「ありがとう。エヘヘ……」
「お二人共〜、よろしいですか〜?」
メイさんがどこか恨めしそうな声で割って入ってくる。
僕達はバッとメイさんの方に向き直り、彼女は続ける。
「え〜……それでは昇格の手続きをしますので、パウリナさんはこちらに」
「はい。……それじゃあアルス、行ってくるね」
「ああ。そこら辺で待ってる」
そう言ってパウリナはメイさんの後を追い、僕は適当な席に座ってパウリナが戻ってくるのを待つ。
すると対面に見知った人物が腰掛けた。
「よう、アルス。この間ぶり」
「やあ、ランスロット。今日は何の用?」
僕は対面に座った人物―ランスロットに向けて用件を尋ねると、彼は答えた。
「いや、何。アルス達はいつまで央都にいるのか聞こうと思ってな」
「ああ……。それなら、あと五日くらいしたら央都を発って、西大陸に向かおうと思ってる。そっちは?」
「俺はこれから東大陸に向かうつもりだ」
「それじゃあ、ここでお別れか」
「ああ。またいつか、どこかで」
「ああ、またいつか」
ランスロットは立ち上がり、僕と別れた。
それと入れ替わるようにパウリナが戻ってきたので、僕は彼女と一緒に家に帰った―――。
◇◇◇◇◇
それから家の大掃除をしたり、旅の支度をしたりして、央都を発つ日がやってきた。
家の鍵をギルドに返却して、僕達は央都西部から西大陸に向かう。
しばらく進み、ステファニーに魔獣化してもらって西大陸まで運んでもらう。
すると、初めてステファニーに乗るパウリナが僕に聞いてくる。
「ねえ、アルス。なんで船で移動しないの?」
「ああ、それは……」
「わたくしが、船酔いする体質だからです」
僕の代わりに、ミラが暗い表情を浮かべながら答えた。
パウリナはそれが意外だったようで、目を見開く。
「そうなの?」
「ええ。ですから大陸間の移動は、ステファニーさんに乗せてもらうことになったんです。ステファニーさんが仲間になっていなかったらと思うと……ああ! 恐ろしいっ!!」
「そ、そうなんだ……」
ミラは自分の身体を抱くようにして身を捩る。
それを見てパウリナが若干引いていた。
「みんな〜、早く乗ってッス〜」
ステファニーがシッポで軽く地面をペシペシ叩きながら催促してきたので、僕達は彼女の背中に乗る。
パウリナは初めて乗るので不安なようで、僕の隣にきて僕の左手を握るので、僕は彼女を安心させるように彼女の右手を握り返す。
「全員乗ったッスね? じゃあ、西大陸に向けて飛ぶッスよ!」
ステファニーは僕達が乗ったのを確認して、翼をはためかせて浮き上がり、そして西大陸に向けて飛翔した。
パウリナは最初緊張していたが、次第にその緊張はほぐれ空の旅を満喫していた―――。
◇◇◇◇◇
半日かけて西大陸にたどり着き、この日は近くの町の宿屋に泊まり早めに休んだ。
翌日になり、僕達は目的地であるソロモニアに向けて出発した。
途中、いくつかの宿場町を経由して、一週間かけてソロモニアにたどり着いた。
「……やっと、ここまで来れた」
僕は感慨に耽り、そう呟いた。
そして僕は、頼りになる仲間達を連れて、この国の名前にもなっている我が師匠、『魔王』ソロモンに会うために彼女が住まう王城に向かった―――。
これでパウリナ編&第一部完結です!
次回から話数表記が変わりますが、今回の話の続きからとなります
第二部は第一部以上に面白い話が提供出来るように努力致します!
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