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魔物使いの弟子  作者: 天利ミツキ
後日談
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EX.18 理を外れし者 その4

前回のあらすじ

ミラ達の下を訪れた

 

 それなりの時間を掛けて、わたしは王位継承権を破棄したことなどをミラお母さんに伝えた。


「そう……ソロモニアの国王にはならずに、アルスさんと同じ冒険者になるのね」

「うん」

「ちなみに、ジョブは?」

「表向きはお母さんと同じ魔法使いを名乗るつもり。だけど……本当のジョブはお父さんと同じ魔物使いにしたの」

「それじゃあ……あのスライムがティアの従魔なの?」

「うん。スラちゃんとはちゃんと本契約を交わしたの」


 冒険者ギルドに冒険者登録する際、わたしは魔法使いとして登録した。

 だけどわたしは、秘密裏に魔物使いにもなっていた。

 二つ以上のジョブに就くことは禁止されていないけど、わざわざ器用貧乏になるような真似をする人もまたいなかった。


 ちなみに、わたしの今の冒険者ランクは、駆け出しである最低ランクのEだった。

 冒険者登録の際にギルド職員の人にちょっと聞いたところ、最上位ランクであるSランクに上がるには、順調に昇級していっても最低でも十年は掛かるらしい。


 十代の内に『魔王』になったソロモンおばあちゃんや、ソロモンおばあちゃんに弟子入りしてたからDランクからスタートしたとはいえ、たった四、五年で『魔王』になったお父さんの凄さを思い知った。


 ソロモンおばあちゃんに直接会ったことはないけど、ヨーコお母さん達が言うには、お父さんとは似た者師弟らしい。

 お父さんの方が、ソロモンおばあちゃんの影響を良い意味でも悪い意味でも受けていたとも言っていた。


 まあ……国名の由来にもなった人なんだから、ソロモンおばあちゃんは凄い人だということだけは理解していた。


 閑話休題。

 ミラお母さんは優雅な所作でお茶を啜ると、わたしの目を真っ直ぐに見つめてきた。


「ティア自身が決めたことなら、わたくしがとやかく言うことではないわね。わたくしは親として、ティアの意思を尊重するわ」

「ありがとう、ミラお母さん……」

「あ! ティア姉様!」


 すると、凄く聞き馴染みのある声が聞こえてきた。

 声のした方を振り向くと、そこにはエリーの姿があった。

 彼女の腕には、紙袋が抱き抱えられていた。


 エリーは駆け足で駆け寄ってくると、その勢いのままわたしの隣に腰掛ける。


「こら、エリー。はしたないわよ。いくら大好きなお姉様が来たからって、限度というものがあるわよ?」

「……ごめんなさい、お母様」


 エリーはミラお母さんに謝り、しゅんと肩を落とす。


「反省しているならそれでいいわ。……それで、何を買ってきたの?」

「……はい! これです!」


 元気を取り戻したエリーは、紙袋の中身をテーブルの上にぶちまける。

 中からは、ブローチにリボン、それと同じ造りの髪飾りが四つ出て来た。


「ブローチはお母様とベアトリスおば様に。二人に似合うと思って買ってきました」

「ありがとう、エリー」

「大事にするわね」


 二人はお礼を言って、早速ブローチを身に着けた。

 エリーのお洒落に対するセンスは高いから、そのブローチも二人に凄く似合っていた。


「こっちのリボンはトーカとラムに。二人もそろそろお洒落に目覚めてもいい年頃ですから」


 エリーがあの双子のためにと買ってきたリボンは、フリルやレースがあしらわれていた。

 トーカちゃんは似合うにしても、活発なラムちゃんには……似合うかもしれない。

 いわゆる、ギャップ萌えとかいうやつだ。


「それでこの髪飾りは……私達姉妹でお揃いの物を、と思って……。今は離れ離れですけど、いつも身近に感じられたらいいなって……」

「……ありがとう、エリー」


 わたしはお礼を言って、エリーの身体を優しく抱き締める。

 でも……わたしにこれを受け取る資格があるのかどうか、甚だ疑問だった。


 抱擁を解き、わたしはエリーの顔を真っ直ぐに見つめる。


「……エリー。よく聞いてね?」

「……? はい、ティア姉様」


 エリーはきょとんとしつつも、わたしの顔を見つめ返してくる。

 そしてエリーにも、わたしが王位継承権を破棄したこと、そして小さい頃に約束したエリー達を従魔にするということを破る旨を告げた。


 エリーはすごく悲しそうな顔をしたけど、取り繕った笑みを浮かべて気丈に振る舞う。


「そう、ですか……私達を従魔にしてくれないんですね」

「ごめんね、エリー。わたしだって、出来ることならエリー達を従魔にしたかったよ。でも……状況が変わっちゃったの」

「それは理解しています。それで……そのことはコノハ姉様にも伝えたんですよね? コノハ姉様は何て?」

「わたしのことなんか大嫌いって言われちゃった」

「でしょうね。コノハ姉様はシスコ……失礼、ティア姉様のことが大好きでしたから」

「……今、シスコンって言いかけなかった?」

「はて? 何のことでしょうか?」


 エリーは可愛らしく首を傾げ、すっとぼける。

 薄々感じてはいたことだけど、そっか……コノハはシスコンだったのか……悪い気はしないね。


 そんな風に思えちゃうわたしもやっぱりシスコンなんだなあ……と、わたしの冷静な部分がそう評していた―――。






姉妹百合は尊い。異論は認める。




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