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魔物使いの弟子  作者: 天利ミツキ
後日談
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EX.09 メラスレ王家のその後 その4

前回のあらすじ

タマモもなかなかやる人物

 

「確かにあたしは第一皇女だったけど、それは繰り上がったからよ」

「繰り上がった? それは、どういう……?」

「ミラ達もさっき聞いてたと思うけど、タマモ姉様……あたしの姉は他家へと嫁いだのよ。元々は姉が第一皇女だったんだけど、他家へと嫁いだり婿に出たりした皇族は、その時点で皇族じゃなくなるの。王位継承権もその時に剥奪されるわ。それで当時第二皇女だったあたしが、第一皇女に繰り上がったってわけ」

「へえ〜。そうだったんスね」


 あたしの説明に納得したのか、ミラとステファニーは何度も頷いている。


「このことは、アルスさんとパウリナさんもご存じなのですか?」

「二人にはずいぶん前に言ったわ。その時の反応も、ミラとステファニーとほとんど一緒だったわ」

「そうだったんスね」

「さて、と……喋ってたら喉が渇いちゃったわ。お茶しかないとは思うけど、二人もそれでいい?」

「ええ」

「お願いするッス」


 二人の返事を聞いた後、あたしは立ち上がり部屋に備え付けてあった台所の方へと向かった―――。




 ◇◇◇◇◇




 夕食は皇国味溢れた料理の数々で、その懐かしい味にあたしは思わず箸が進んでしまい、ちょっと食べ過ぎてしまった。


 箸と言えば、ミラとステファニーは使い慣れていなかったようで、大分苦戦していた。

 けど、あたしが使い方を教えたら、ややぎこちないながらも箸を使えるようになっていった。


 そう言えば、生前のアルスは普通に箸を使いこなしていた。

 皇国のニンゲンでもないのに、なんでそんなに使いこなしているのか尋ねたところ、アルスの実の母親が皇国出身だったかららしい。

 その母親に教わって、皇国出身でないにも関わらず箸を使えるようになったようだ。


 ちなみにパウリナは、ミラやステファニーと同じタイプだった。

 でも菜箸の方だけは普通に使えていた。不思議だ……。


 夕食が済み、大浴場へと向かう。

 大浴場は所謂露天風呂で、皇国にあんまり良い思い出のないあたしでも、数少ないお気に入りの場所だった。

 そこから眺める夜空が、あたしは好きだった。


 身体を洗って一日の汚れを落とし、乳白色のお湯に肩まで浸かる。


「ふあああぁぁぁ〜〜〜……」


 滅茶苦茶気の緩んだ声を上げるけど、あたし一人しかいないから気にはならなかった。

 ミラとステファニーの二人は、もう少し食休みをしてから入浴すると言っていた。


 すると、ガラガラと脱衣場と浴場を繋ぐ引き戸が開かれた。

 そちらに目を向けると、タオルで身体を隠した姉様がそこにいた。


「姉様……? どうしたの? というか、一国の主がそんなみだりに他人に素肌を晒してもいいの?」

「一国の主という以前に、わたしとヨーちゃんは血を分けた実の姉妹でしょ? それにこういう場じゃないと、姉妹水入らずで過ごせないじゃない」

「大変なのね、帝っていうのも」

「ええ、本当よ」


 そう言葉を交わした後、姉様も身体を洗ってからお湯に浸かる。

 そしてお互いの肩が触れ合うくらいの距離まで、姉様が近付いてくる。


「……本当に、ヨーちゃんはここにいるのよね? わたしの夢なんかじゃないのよね?」

「ちゃんとした現実よ、姉様。それにさすがのわたしでも、化けて出たりなんかしないわよ」

「良かった……またこうしてヨーちゃんと言葉を交わせて」

「姉様……」


 そう呟くと、姉様がお湯の中であたしの手を取り指を絡めてくる。

 その手を握り返すと、姉様はふわっと優しく微笑む。


「……そうだ。ヨーちゃんも結婚してるんだから、子供はいるのよね?」

「ええ、そうよ。娘が一人。姉様は?」

「女の子が一人と、男の子が一人よ。女の子の方が先に産まれたの」

「そうなの……それじゃあ、一姫二太郎ってこと?」

「そうなるわね。ヨーちゃんから見たら、姪っ子と甥っ子よ。暇があれば、皇国滞在中に一度くらいは顔を見せられると思うわ」

「あたしの娘も、ソロモニアに来てくれたら会わせられるわ」

「その時が来るのを楽しみにしてるわね」


 それから、あたしと姉様は空白の期間を埋め合わせるかのように他愛ない会話を続けた。

 そして案の定、あたしも姉様も長時間お湯に浸かり過ぎてのぼせてしまった―――。






姉妹百合は尊……おっと、誰か来たようだ。




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