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魔物使いの弟子  作者: 天利ミツキ
第三部
524/560

第364i話 原初の魔王VS初代勇者 その14

前回のあらすじ

マーリンとモルガンが相討ちになった

 

「ハァ……ハァ……」


 俺は剣を支えにして身体を支え、荒い呼吸を繰り返す。

 俺の周りには、十を超える屍が積み上げられていた。


 これでも、十分善戦した方だろう。

 だが……まだ倒れるわけにはいかない。

 央都にいるアイツらの邪魔だけは、誰にもさせない――!


「相手は弱りきってるわ! 一気に畳み掛けるわよ!」


 リーダー格の女性がそう言うと、残りの同盟国連邦軍の兵士達が突撃してきた。

 俺は支えにしていた愛剣を地面から引き抜き、近くに転がっていた大剣を拾い上げ、左手に構える。


 そして一番先頭にいた敵兵へと、大剣を横薙ぎに振るう。

 力任せに振るった大剣は、相手の持っていた槍を半ばからへし折った。


 穂先の方が俺の方に飛んできて、すぐさま大剣の柄から手を離してそれを掴む。

 そして未だに空中を飛んでいるリーダー格の女性目掛けて投擲する。


 女性は驚いたような顔をするが、彼女の乗っていたドラゴンが俺の投擲した槍を《ドラゴンブレス》で焼き尽くす。


「……そう簡単にはいかないか」


 そう呟き、足下に転がっていた長剣を爪先で蹴り上げて左手に構える。

 そして二刀流スタイルで、襲い掛かってくる敵兵を相手にした―――。




 ◇◇◇◇◇




 私は左右の剣を振るう。

 だけど、斬戟の悉くをアルスお兄ちゃんの剣と杖で受け止められ、受け流されてしまっていた。


 苦戦しているのはそれだけが理由ではなく……。


「《ブラッディソーン》!」


 アルスお兄ちゃんがそう唱えると、私の足下から血のように真っ赤なツタが伸びてきた。

 私は翼を全力で羽ばたかせて、ツタの餌食にならないように回避する。

 あのツタに絡め取られたら脱出は困難なことは、身を持って知っている。


「《ギガシャイン》!」


 すると、逃げる私を追うように、アルスお兄ちゃんが光属性上級魔法を放ってきた。

 咄嗟に身体を捻るけど、純白の光線は私の一番下の左翼を貫通した。


「ぐっ……! 《ギガダーク》!」


 翼を貫かれた痛みを堪え、お返しとばかりにアルスお兄ちゃん目掛けて闇属性上級魔法を放つ。


「《ブラッディスフィア》!」


 漆黒の光線がアルスお兄ちゃんを貫くことはなく、代わりにアルスお兄ちゃんが生み出した真っ赤な球体によってその進路を阻まれた。


「そんなものか、『勇者』! 《ブラッディバースト》!」


 アルスお兄ちゃんはそう叫ぶと、真っ赤な球体から深紅の奔流が迸った。

 私の魔法を喰い破るその奔流は危ない代物だと瞬時に理解し、その射線上じゃない空中へと逃れる。


 でもそれすらも読んでいたのか、アルスお兄ちゃんは背中から竜のような翼を生やして私に迫ってきていた。


「《ドラゴンブレス》!」


 そしてその口から、赤黒いブレスが放たれた。

 距離が近過ぎて、攻性魔法で相殺したとしてもその余波に巻き込まれる可能性が高かった。

 だから……。


「《エリアロック》!」


 時空魔法で目の前の空間を固定化し、不可視の壁でアルスお兄ちゃんのブレスを防ぐ。

 ブレスの放出が終わった後、アルスお兄ちゃんは忌々しそうな目で私を……というより不可視の壁を見つめる。


「……やっぱり厄介だな、時空魔法って」

「その口振り……私以外の、時空魔法の使い手と戦ったことがあるの?」


 思わず口に出ていた私の質問を、アルスお兄ちゃんは律儀にも答えてくれた。


「あるよ。むしろ、僕みたいな紛い物や、アーサーみたいな先祖返りなんていう半端なヤツじゃない、本家本元の時空魔法の使い手と、ね……」


 そう答えるアルスお兄ちゃんの目は、何処か昔を懐かしむような柔らかい眼差しをしていた。

 だけどそれも一瞬のことで、アルスお兄ちゃんは目付きを鋭いモノに戻して左右の剣と杖を構え直す。


「さて……お喋りもここまでだ。いい加減、決着を着けないとな」


 そう言うと、アルスお兄ちゃんはその姿を悪魔のような姿へと変化させた。

 だけど、変化はそこで終わらなかった。


 三対の悪魔の翼の内、一番上が竜のような、一番下がコウモリのような翼へと変化する。

 そしてお尻の辺りから九本のキツネのようなシッポが生え、頭にはオオカミのような獣耳が生えていた。


 その姿は、「魔族の王」を名乗るに相応しい、相対する者に威厳と畏怖を抱かせる圧倒的な存在感を放つモノだった。


「……もう出し惜しみはしない。僕の全てを吐き出す! 全身全霊を以て!!」


 そう叫ぶと、翼を大きく羽ばたかせて私の方へと一直線に迫ってきた―――。






あと二話。




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