第37話:滞在中
新章開幕です!
※一部修正しました(2020/11/30)
ステファニーが僕の従魔になった日の夜。
ステファニーは夕食の時に、両親であるシグさんとヒルデさんに、僕の従魔になったことを告げた。
二人は最初驚いていたが、愛娘の選択を尊重し、祝福してくれた。
後、僕は二人にステファニーのことを頼まれた―――。
◇◇◇◇◇
夕食を食べた後、僕は部屋に戻って、久しぶりに剣の手入れをする。
アイスワイバーンと交戦してから一週間経っており、いろいろあって手入れを疎かにしていたのだ。
僕が使っている剣は、全金属の中で一番物理耐性が高いアダマンタイト製で、師匠に弟子入りした時から使い続けていた。
「……ん?」
僕は剣を磨いている時に気付いた。
刀身にヒビが入っている。
多分、アイスワイバーンの尾の攻撃を防いだ時に出来たのだろう。
……流石に、ステファニーとの決闘(?)の時に、僕が放り投げて出来た傷とは考えにくい。
どこかの鍛冶師に修理してもらわないと……と思い、シグさんなら誰か知っていると思って、剣を持って彼の元に向かった。
シグさんはリビングに居て、晩酌をしていた。
僕はシグさんに剣を見せながら、事情を説明する。
「……と、言うわけなんです」
「フム……」
シグさんは僕の剣を見ながら、そう返事をする。
そして僕に向かって言う。
「……そういう事なら明日、自分と一緒にこの里一番の鍛冶師の元に行こう。腕は確かだ、きっと元の状態以上に仕上げてくれる」
「ありがとうございます」
僕はそうお礼を言い、部屋に戻った―――。
◇◇◇◇◇
翌日。
僕はシグさんに連れられ、この里一番の鍛冶師の元に向かっていた。
その人は、この里の西地区に居を構えているらしい。
後何故か、ステファニーが僕達についてきていた。
ヨーコとミラは、今日も北地区の復興を手伝っているので、僕とは別行動だった。
僕はステファニーについてきた理由を尋ねる。
「ステファニー、今日はなんでついてきたの?」
「えっ? アタシはアルスくんの従魔になったんで、主についていくのは当然ッスよ。あとついでに、剣のメンテナンスをしてもらおうと思って」
「……メンテナンスの方がついでなのか」
「そうッス!」
そう答える彼女は、何が嬉しいのか、ニコニコとした表情を浮かべていた。
出会った当初のどこか翳がある笑みより、今の方が僕としては好みだった。
僕は話題を変える。
「……ところで、ステファニーの剣だけど、何製?」
「片方がアダマンタイト製で、もう片方がマナタイト製ッス」
マナタイトというのは、アダマンタイトと違い、魔法耐性が一番高い金属だ。
彼女はこの二つの金属製の剣を用いることで、どんな状況にも対応できるようにしたらしい。
その後はとりとめのない会話をしながら、目的地に向かって歩いていた。
「ここだ」
そう言ってシグさんが、とある武器屋の前で立ち止まった。
その店は西地区の大通りに面していた。
店の窓から店内を眺めると、武器がところ狭しに並んでいた。
僕達が店内に入ると、店の奥から一人のドワーフ族の男性が出てきた。
その男性にシグさんが声をかける。
「こんにちは、ダン。今日は用があって来た」
ダン、と呼ばれた男性が返事をする。
「おう、シグ。それで……その用ってのは?」
「娘の剣のメンテナンスと、彼の剣を修理してもらいたくてね」
「ほう? ……ボウズ、見ない顔だな。もしかして……嬢ちゃんの彼氏か何かか?」
「ぶふっ!?」
ダンさんにそう言われ、僕は思わず吹き出す。
ステファニーが顔を真っ赤にしながら否定する。
「ち、ちちちち違うッスよ!? アタシとアルスくんは、全然そんな関係じゃないッス!」
ダンさんが更に追及する。
「それにしては、仲睦まじく店に入ってきてたが?」
「そ、それは……!?」
「ダン、悪ふざけはそのくらいで」
シグさんが止めに入ると、ダンさんは大人しく身を引いた。
ステファニーは顔を真っ赤にしたままだった。
ダンさんが僕の方を見る。
「それで、ボウズの名前は?」
「アルスです」
「アルスか……。ちょいと、お前さんの剣をワシに見せてみろ」
「はい」
僕は鞘ごとダンさんに手渡す。
彼は鞘から剣を引き抜き、刀身を一瞥してから僕に言った。
「この剣はもう駄目だ。使い物にならん」
新、章……?
評価、ブックマークをしていただけると嬉しいです。




