第32話:衝撃
前回のあらすじ
アイスワイバーン、狩るよ!
※一部修正しました(2020/11/30)
僕達は各々の武器を構え、アイスワイバーンと対峙する。
道中、魔物と遭遇しなかったので、僕が仮契約を交わしている魔物は一体もいない。
つまり、個人の実力だけでアイスワイバーンを討伐しなきゃいけない訳だ。
僕達が臨戦体勢を取っているのを見た相手は、咆哮を上げる。
それを合図に、僕達は相手に駆け寄る。
昨日、帰宅した後作戦会議をして、個々人でアイスワイバーンに立ち向かおうと決めていた。
これは、四人という少人数なのと、個人で最大火力を出し続けた方が短期決戦で終わると思ったからだ。
先手は僕が取った。
「《ボルテクスバースト》!」
この一撃で終わらせようと超級魔法を放ったが、アイスワイバーンはこの一撃を耐えた。
ヨーコが相手の足元に駆け寄り、刀を一閃させる。
けれど鱗に傷が付くだけで、対したダメージは与えられてないようだった。
「っ!? 硬いっ!」
彼女はそう毒づいた。
ミラは魔獣化をして、アイスワイバーンの背中に飛び乗る。
そして鱗の隙間に鎌を突き立てようとするが、相手がその巨体を左右に揺らし、ミラを落としにかかる。
その隙にステファニーが、アイスワイバーンの右翼を切り落としにかかる。
右手の剣を左手の剣で押し込んでいくが、相手は翼を羽ばたかせてステファニーを翼から振り落とす。
ミラとステファニーはアイスワイバーンに地面に落とされ、僕とヨーコが追撃を加えよう……とする前に、相手が空中に浮かび上がる。
そして息を吸い込む動作が見えたので、二人を守るために防壁魔法を展開し、自分にも展開する。
ヨーコも展開したらしい。
展開が終わると同時に、アイスワイバーンがブレスを放つ。
防壁魔法のおかげでダメージはないが、視界が真っ白に染まり何も見えなくなった。
アイスワイバーンの攻撃が止み、防壁魔法も解除されたが、視界は白いままだった。
その時突然、僕の目の前にアイスワイバーンの尾が迫り、僕は咄嗟に剣でガードするが、吹き飛ばされてしまう。
「ぐっ!?」
「キャッ!?」
「きゃあ!?」
「うわっ!?」
僕だけでなく、ヨーコ達もアイスワイバーンの攻撃の餌食になったらしい。
視界が開け、僕は激痛が走りながらも上半身を起こして状況を確認する。
僕達は地面に倒れ伏しており、先ほどの攻撃で身動きがまともに出来なかった。
そしてアイスワイバーンは再び浮かび、第二射の準備を始める。
防壁魔法を展開しようとするが、間に合わない。
ブレスが放たれる―――直前に、僕は見た。
ステファニーは一瞬、迷ったような表情を浮かべたが、すぐに覚悟を決めた顔をする。
そして、ステファニーの姿が変化した。
背中から一対の翼が生え、四肢は地面をしっかりと踏みしめ、強靭な尾が伸び、ドラゴンの姿に変化した。
僕は彼女が魔獣化したことに驚いた。
けれどそれよりも先に、彼女の姿に目を奪われた。
そのドラゴンの身体は、漆黒の鱗で覆われていた。
ステファニーは飛び上がると、空中に浮かぶアイスワイバーンに突進し、ブレスが放たれるのを防ぐ。
そしてそのまま相手に組み付き、地面に引きずり落とす。
ステファニーは、地面に組伏せた相手の首に噛みつく。
相手はステファニーをどけようともがくが、強靭な四肢に押さえつけられており、あまり効果がなかった。
そしてステファニーは首を噛み千切り、アイスワイバーンの息の根を止めた。
彼女はその死体の上から退き、魔獣化を解く。
その死体の傍らに佇んでいるステファニーに、僕は悲鳴を上げる身体を引きずって近付いていく。
聞きたいことはいろいろあるけど、まずは一言。
「ステファニー」
僕が彼女の背中にそう声をかけると、彼女はビクッと身体を揺らす。
僕は続ける。
「ありがとう、僕達を助けてくれて」
「…………どういたしましてッス」
その言葉を聞いて、僕は後ろに倒れた。
自分に回復魔法を掛けながら、身体が動かせるようになるまで地面に倒れ込んでいた―――。
◇◇◇◇◇
痛みが引いた後、僕は立ち上がった。ヨーコとミラも回復しているらしい。
ステファニーが僕の近くにやって来て、尋ねる。
「……聞きたいことが、あるんじゃないんスか?」
「確かにいろいろあるけど、一先ず家に帰ろう。そこでちゃんと聞くから」
「……わかったッス」
僕は明るく振る舞いそう答えるが、彼女の顔は暗いままだった―――。
◇◇◇◇◇
ステファニーの家に戻り、リビングに向かう。
外套を掛け、ソファーに座る。ヨーコとミラも僕の隣に座る。
僕は対面に座るステファニーに問い掛ける。
「僕が聞きたいことはいろいろあるけど……一つだけ聞く。ステファニー、君が僕の村を滅ぼした竜なのか?」
「…………そうッス」
彼女の答えを聞いて、僕は更に続ける。
「何故、そんなことをした……?」
「それは……」
「そこから先は自分が答えよう」
突然そんな言葉が投げ掛けられ、僕は声がした方を向く。
リビングの入り口に、シグさんとヒルデさんが立っていた。
リビングを進み、ステファニーの両隣に座り改めて切り出す。
「君と、君の仲間に伝えよう、あの日の真実を」
そしてシグさんの口から、あの日の真実が語られていく―――。
第1話で張った伏線が回収されていきます。
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