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魔物使いの弟子  作者: 天利ミツキ
第一部
31/560

第31話:事件発生

前回のあらすじ

アルスの旅の真の目的は、漆黒の竜を探し出すこと




※一部修正しました(2020/11/29)

 

 シグさんは勝手知ったるといった様子で、ある部屋の前まで進んでいき、そして立ち止まる。


 ドアをノックし、返事がかえってくる前に部屋に立ち入る。

 僕達も後に続く。


 室内には、報告をしている秘書らしき人と、その報告を受けているひげをたくわえた初老の男性がいた。

 恐らくこの男性が長老だろう。


 その長老らしき男性に、シグさんが話しかける。


「長老殿」


 その声に、長老と呼ばれた男性がシグさんの姿を確認して返答をする。


「おお、『竜王』殿。よくぞ参った。こちらから召集をかけようとしていたところじゃ」


 ……今、なんと??


 聞き慣れない単語を耳にして、隣に立つステファニーに小声で尋ねる。


「……ステファニー。『竜王』って何?」

「……『竜王』っていうのは、竜人族で最強の者に与えられる称号ッス。イメージ的には、ジョブの王と同じッスね」

「……なるほど」


 僕達が話しているそばで、シグさんと長老さんは話し合う。


「して、長老殿。北地区で何が起こったのです?」

「うむ。北地区に魔物が侵入し、甚大な被害をもたらしたようじゃ」

「その魔物の種類は?」

「アイスワイバーンらしい」

「数は?」

「十匹じゃ。半分は討伐したが、もう半分は里の北東にある雪原まで逃げたようじゃ」

「自分が討伐して来ましょうか?」

「いや、そなたには北地区の防衛にあたってもらいたい。またいつ侵入して来るかわからんでな。それに今、討伐隊を編成しているが、人手が足らなくてな……」

「では、逃亡したワイバーンの内の一匹は、自分の娘と……彼らに任せましょう」


 シグさんがそう言うと、長老さんは僕達を見る。

 そしてシグさんに尋ねる。


「竜王殿、そなたの娘はわかるが……その者達は何者じゃ?」

「この青年は『魔王の弟子』で、彼の後ろに控えるのが彼の従魔達です。彼らの実力は自分が保証します」

「ほう……そなたがそこまで言うのか。よかろう、彼らに任せてみよう。……して、『魔王の弟子』殿。そなたの名前を教えてくれんか?」


 長老さんにそう問われたので、僕は答える。


「アルスと言います」

「アルス殿か。よろしく頼む」

「はい、よろしくお願いいたします」


 僕はそう言って頭を下げる。


 その後、作戦の詳細と、討伐隊は明朝出発することを告げられ、長老宅を後にした―――。




 ◇◇◇◇◇




 その後ステファニーの家に戻り、シグさんがヒルデさんに事情を説明し、被害地域の復興と防衛のために北地区に向かって行った。


 僕達は、シグさんとヒルデさんの厚意で、この家に滞在することになった。




 その日の夜。

 ステファニーが、僕にあてがわれた部屋を訪れていた。


「それで、明日のことで相談したいことがあるって言ってたけど……」


 僕は彼女に尋ねると、彼女は黙って頷く。

 彼女は暗い表情をしていて中々話し始めないが、しばらくしてから、意を決したかのように話し出す。


「アルスくん。もし明日、万が一にもアタシが魔獣化して、暴走とかで味方に被害が被るようだったら……その時は、アタシを――殺してください」

「…………物騒な相談だな。何かの冗談?」


 僕はそう返すが、彼女の目は真剣そのものだった。


「本気ッス。昼間は、月に一度は魔獣化してるって言ったッスけど……あれは嘘ッス」

「嘘?」

「そうッス。本当はもう六年……いや、もうすぐ七年ッスね。ある出来事があって、それから一度も魔獣化してないッス」

「ある出来事っていうのは……?」

「それは、……っ、…………」


 僕がそう尋ねると、彼女は答えようとするがためらう。

 そして、僕に告げる。


「……この戦いが終わったら、ちゃんと伝えるッス」

「……そうか」

「はい、相談したいことはそれだけッス。明日は早いんで、もう寝ますね。おやすみッス、アルスくん」


 ステファニーはそう言って、僕の部屋を後にした―――。




 ◇◇◇◇◇




 翌朝。

 僕達はヒルデさんに見送られ、東地区にある竜人の里の入口から、里の北東にある雪原に向けて出発した。


 ステファニーの顔を確認するが、昨日の夜僕に言ったことは引きずってないようだった。

 僕の視線に気付いたのか、先頭を歩く彼女が振り返る。


「アルスくん、アタシの顔に何か付いてるッスか?」

「……いや、なんでもないよ」

「? なら、いいッスけど……」


 怪訝そうな顔を浮かべながらも、彼女は再び前を向く。




 里を出発して一時間半後、僕達に任された場所にたどり着いた。


 そしてそこに、討伐対象であるアイスワイバーンが佇んでいた。


 僕は長剣を抜き、ヨーコはリボンをほどき刀に戻す。

 ミラはバレッタに変化させていた鎌を出現させ、ステファニーは二振りの長剣を構える。


 そして僕達四人は、アイスワイバーンと対峙した―――。






死亡フラグが立ったッス




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