表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔物使いの弟子  作者: 天利ミツキ
第三部
251/560

第93i話 作戦終了/来訪

前回のあらすじ

ソロモニアに戻って来た

 

 リルが部屋を出て行った後、フェーンもこの場から立ち去ろうとしていた。


「あれ? フェーン、どっか行くの?」

「ああ。アルスの代わりに、仕事を進めておこうと思ってな」

「そっか。ありがとう、助かる」


 僕がそう言うと、フェーンはレムリンさん達に一礼してから部屋を出て行った。

 フェーンが出て行ったのを見送った後、僕達はソファーに向かい合って座る。

 そしてレムリンさんが口を開く。


「あの二人は、アルス君専属の使用人なの?」

「いえ、違いますよ。フェーンとリルは僕の従魔です」

「そう。……ということは、魔族を従魔にしているの? 流石ね。あの師匠にして、この弟子あり、ね」

「未だに師匠の足下にも及びませんけどね」

「またまた〜、謙遜なんかしちゃって」


 僕の言葉に、レムリンさんはくつくつと笑って返す。


 ……本当のことなんだけどなぁ……。


 そんなことを思っていると、彼女の隣に座るエアリーちゃんからの視線を感じた。

 そちらに目を向けると、彼女は慌てて僕から視線を逸らす。


「? どうかした?」

「っ!? い、いえなんでもありません!」

「そうなの? でも、何か僕に聞きたいこととかあったらなんでも聞いて。答えられる範囲でなら答えるから」

「は、はあ……それじゃあ、聞いてもいいですか?」

「うん、なんだい?」

「魔王様は、どうして人類と敵対する道を選んだんですか? 見たところ、魔王様も人間族の様ですけど……」

「……」


 その質問に、答えるべきか迷った。

 けど別段隠すようなことでもないので、そうするに至った経緯を包み隠さずに伝える。




 僕の話を聞き終わった後、レムリンさんは悲しげに目を伏せて、エアリーちゃんは座ったまま僕に頭を下げてきた。


「……ごめんなさい。軽い気持ちで聞いてしまって……。気分を害されたのなら、私のこの身は如何様にも」

「別に謝るようなことじゃないよ。エアリーちゃんは聞きたいことを聞いただけなんだから」

「……ありがとうございます」


 するとちょうど、リルが戻ってきた。

 僕達にお茶が配られたのを見計らって、僕は本題に入る。


「それでレムリンさん。リルからも伝えられたと思いますけど、僕の国に亡命する気はありますか?」

「その話なんだけど……お断りしてもいいかしら?」

「……理由をお聞きしても?」


 この話を断られるのも予想していたので、僕は驚きはしなかった。

 その代わりに、その理由を尋ねた。


 レムリンさんは頷き、亡命を断った理由を告げる。


「イフリート自治区は今、区長が不在で事実上無法地帯になってるの。だから私はイフリート自治区に戻って、再び区長の椅子に座って纏め上げなければいけないと思っているわ。何より……私はあの街が大好きだから」

「そうですか……それなら仕方ないですね。この話は無し、ということで」


 あの街が大好きだからという理由であれば、仕方がない。

 無理に引き留めるのは野暮ってものだろう。


 だけど話はそこで終わりではなかった。


「だけど……」

「?」

「これからのことを考えると、魔王軍に付いた方が良いと思ったの。だからお願い。イフリート自治区を、魔王軍の傘下に加えてもらえないかしら? まだ区長になっていないこの身だけど、どうかこの通り」


 レムリンさんはそう言うと、膝上に両手を重ねて深々と頭を下げてきた。


「分かりました。イフリート自治区を、魔王軍の傘下に納めます」

「ありがとう、アルス君」

「というか、あそこを今支配してるのは我々なんで、レムリンさんには表向きはこちらの傀儡として区長の椅子に座ってもらいます。それでもいいですか?」


 僕がそう尋ねると、レムリンさんは笑顔で頷く。


「ええ、どんな理由であっても、区長の座に返り咲けるのなら何だって構わないわ」


 彼女からも了承を得られたので、僕は話題を変える。


「それじゃあそういうことで。……ここまで長旅だったでしょう。イフリート自治区に戻るまでの間は、この城でゆっくりしていってください」

「いいの?」

「ええ。僕の客人として歓迎しますよ」

「それじゃあお言葉に甘えようかしら? エアリーはどう? エアリーが嫌なら断るけど」

「あたしもいいよ、お母さん」


 エアリーちゃんは笑顔で頷くと、レムリンさんは娘から僕へと視線を移す。


「しばらくの間お世話になるわね」

「はい。……リル、二人が泊まる部屋の準備をお願い」

「分かったわ。部下に伝えてくるわね」


 リルはそう返事をすると、再び部屋から立ち去っていった。


 こうして、しばらくの間レムリンさん母娘が王城に滞在することとなった―――。




 ◇◇◇◇◇




 それから三日後。

 今日は、珍しい客がやって来ていた。


 その人と応接室で対面する。


「お久しぶりです――シグさん。元気そうで何よりです」

「アルス君も元気そうだな。中央大陸で一度倒れたと聞いたが……大丈夫そうだな」

「あはは……妻達にはこっぴどく叱られましたけどね」


 僕は苦笑いを浮かべ、シグさんの言葉にそう返す。


 世間話もこのくらいにして、本題に入る。


「それで、シグさん。今日はどういった用件で? シグさんは同盟国連邦軍の総司令だったハズ。そう易々と現場を離れられないのでは?」

「自分はもう総司令ではない。その座はリンディに明け渡した」

「? どういうことですか?」


 頭上に疑問符を浮かべていると、シグさんはその疑問に答えてくれた。


「北大陸での紛争は終結した。勿論、我々ディアボロス同盟国の勝利という形で、だ」


 そしてシグさんは、僕達が去った後から同盟国が勝利を修めるまでの顛末を語り始めた―――。






次回から、アルス達が北大陸から去った後の話になります。

……いつになったら、第1i話の時間軸に追いつくことやら……。




評価、ブックマークをしていただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ