第21話:連続失踪事件 その5
前回のあらすじ
事件の進展なしで半年経過
※一部修正しました(2020/11/29)
僕とヨーコがこの港町に来てから半年が経過していた。
この町で発生している事件解決の手掛かりをなかなか得られず、事態は進展していなかった。
そんなある日のこと―――。
◇◇◇◇◇
僕とヨーコは、僕の部屋で事件の資料の整理をしていた。
ミラはエリザと応接間で、二人きりで話し合っている。
僕は資料から目を離して天井を見ながら、全く関係ないことを呟く。
「…………はぁ、パウリナに会いたい」
すると、僕の向かい側に座っていたヨーコが、怪訝そうな顔をして尋ねてくる。
「どうしたの、突然?」
「いや……ずっとパウリナに会えてないからさ。寂しくなって」
「恋煩ってるわね」
「茶化すな」
ヨーコがからかってくるので、僕はそう返す。
彼女は続ける。
「そんなに会いたいなら、戻ればいいのに」
「いや……会いたい気持ちはあるけど、それより先に、師匠の課題をクリアすることの方が大事だから。勿論、この町の事件解決も。……さてと、資料の整理を続けようか」
僕はそう言ってこの話題を切り上げる。
そうして再び資料の整理をしようとしたところで、下の階から悲鳴と、何かが砕け散る音が響いた―――。
◇◇◇◇◇
僕とヨーコは部屋を飛び出し、音のした方へ向かうと、応接間の前に初老の執事のセバスチャンさんが倒れ込んでいた。
僕は彼を抱き起こし、事情を聞く。
「セバスチャンさん、何があったんですか!?」
「……ああ、アルス様。実は……ごほっ、ごほっ」
彼は咳き込みつつも続ける。
「……実は、お嬢様がエリザ様に連れ去られてしまいました」
「何だって!? エリザが、ミラを!?」
「はい。私は、お嬢様がエリザ様と二人きりで話があると仰っておりましたので、廊下に控えておりました。しばらくして、お嬢様の悲鳴が中から聞こえたので入ると、エリザ様がお嬢様を抱えて窓から逃走を図ろうとしておりました。私はそれを阻止しようとしましたが、反撃にあい……」
「そうですか……。それで、エリザはどこに逃げたんですか?」
「すみません。どこに逃げたかまでは、私にもわかりません」
「そうですか、ありがとうございました」
僕はそうお礼を述べ、遅れてやって来た他の使用人の人達に彼のことを任せ、エリザの行方を追うために屋敷を出た―――。
◇◇◇◇◇
屋敷を出た後、僕は心当たりがある場所に向かって走っていた。
隣を並走するヨーコが尋ねてくる。
「ねえ、アルス。どこに向かってるの?」
「前領主の屋敷。多分そこに、エリザとミラがいる」
「何でそこだってわかるの?」
「前にクエストであの周辺に行った時、微かに違和感を覚えたんだ。遠目に見ても、廃墟にしては綺麗だったから。……まあ、半分以上は勘みたいなものだけど」
僕がそう答えると、ヨーコは一度立ち止まってから魔獣化すると、僕に再度話しかけた。
「乗って。こっちの方が早く着くわ」
「すまない、助かる」
僕はヨーコにそうお礼を言いながら、彼女の背に跨がる。
そして彼女は、僕を乗せて前領主の屋敷まで疾走していった―――。
◇◇◇◇◇
「………………うぅ」
わたくしは目を覚まし、自分がどこにいるのかを確認するけど、辺りは薄暗くはっきりとはわからなかった。
そして自分の状態を確かめると、両手足は鎖で壁に吊るすような形で拘束されていて、身動きが出来なかった。
わたくしがここに連れてこられる前の状況を思い出そうとしていると、コツコツと足音が響き、見知った顔がわたくしの前に現れる。
その人物に、わたくしは質問する。
「どうしてこのようなことをなさったのですか、エリザさん?」
「このような……とは?」
「とぼけないでください! わたくしを誘拐したことです! ……っ!? まさか……事件の犯人は、エリザさんなのですか!?」
「ご名答」
そう言ってエリザさんは、心がこもっていない乾いた拍手をする。
わたくしは改めて彼女に問い質す。
「エリザさん、どうしてこのような事件を引き起こしたのですか?」
「そうね……。結論から言えば、私がミラを独り占めしたかったから」
そう答える彼女の目には、狂気が孕んでいた―――。
◇◇◇◇◇
ヨーコの背に乗り、前領主の屋敷にたどり着く―直前に僕は、展開していた索敵魔法が地面からの敵を察知したので、ヨーコに指示を出す。
「ヨーコ、飛んで!!」
ヨーコがその場で飛び上がり、その直後に僕達を追って地面から魔物が現れた。
その魔物は、巨大なミミズのような姿をしたサンドワームと呼ばれる魔物で、大きく口を開きながらこちらに迫る。
僕とヨーコは魔法で迎撃する。
「「《メガファイア》!」」
僕の魔法はサンドワームの口に、ヨーコの魔法は相手の巨体にそれぞれ当たり、内と外から焼き尽くす。
焼き尽くされたサンドワームは、その巨体を地面に横たえる。
ヨーコが地面に降り立ち、その背中から僕は降りると、屋敷に向けて歩き出した―――。
この事件の犯人が判明しました
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