第44i話 中央大陸攻防戦 その3
前回のあらすじ
人類軍の艦隊の迎撃に向かった
ここで、ちょっとした疑問があった。
リルはどうやって艦隊までたどり着くのか? ということだ。
海岸線から一番近くの艦隊まででも、それなりに距離がある。
しかもその間を隔てるのは真っ青な海だ。
僕は空を飛べるから問題ないけど、リルはどうやって移動するのだろう?
まさか、サクラ皇国にいるとされるニンジャみたいに、水上を走るとか?
そんなことを思うけど、それは杞憂に終わった。
「《メガアース》!」
リルは土属性中級魔法で大きな岩を次々と出現させ、それらを足場にして艦隊へと近付いて行った。
僕も彼女と並行するように飛翔し、一番前にいた船の甲板にリルと共に着地する。
リルは魔獣化を解除して、僕と背中合わせになって立つ。
突然現れた僕達に最初は動揺していた敵兵達も、すぐに冷静さを取り戻して武器を構えながら僕とリルを取り囲む。
「さて、と……。如何なさいますか、魔王様?」
リルは両腕に装備したガントレットからアダマンタイト製のツメを伸ばしながら、そう尋ねてくる。
「もちろん……徹底的に叩き潰す。手加減などするな」
「イエス、マイロード!」
リルはそう返事をすると、彼女の前にいた敵兵に一瞬で近付く。
そしてツメで切り刻むと、そのすぐ近くにいた兵士をも瞬時に屠る。
時間にして約三秒。
そんな極短時間で、リルはすでに三人もの敵兵を亡き者にした。
味方が殺られたことで、敵兵に僅かばかりの動揺が広がる。
その隙を見逃す僕ではない。
「《ギガサンダー》!」
左手の杖を高々と掲げ、雷属性上級魔法を放つ。
雷撃が敵兵達に次々と命中する中、リルは器用にも僕の魔法を避けていた。
甲板上の敵兵を一掃した後、頼りになるメイドに命令する。
「半分は我が潰す。もう半分を頼む」
「畏まりました、魔王様」
リルはその場で深々とお辞儀をすると、半魔獣化で両足だけ狼の足に変化させ、《メガアース》で作った足場を伝い別の船へと移動して行った。
そしてこの船を《フレイムバースト》で燃やして、僕も別の船へと移動して行った―――。
◇◇◇◇◇
「《ギガアース》!」
眼下に映る敵兵目掛けて、私は土属性上級魔法を発動させる。
尖った無数の岩石が雨のように降り注いで、船上にいた敵兵達に襲い掛かる。
半分は身体から無数の岩石を生やしながら絶命して、もう半分は裂傷を負いながらも、一命をとりとめていた。
私が甲板に降り立つと、生き残った兵士達が武器を構えながら私に襲い掛かってきた。
一番近くにいた敵兵にこちらから接近して、相手の首をツメで軽く撫でる。
たったそれだけで、相手の頭と胴体は永遠の別れを告げた。
栓の取れた胴体から吹き出る真っ赤な水が身体にかからないように気を付けながら、別の兵士へと襲い掛かる。
私がその兵士の胸元へとツメを伸ばしかけたその時、嫌な予感がしてその場にしゃがみ込む。
私の予感は正しかったようで、私の後ろを取った兵士の槍が、私が攻撃しようとしていた兵士の胸元を突き刺す。
私は素早く振り返り、槍を持った兵士の胸元に風穴を開ける。
腕を引いて、そのまま敵兵を肉の盾にする。
残った敵兵達が次の行動を決めあぐねている内に、私はもう一度岩石の雨を降らす。
今度はちゃんと仕留め切り、船上にいた敵兵達を全て片付けた。
「《ギガアース》」
同じ魔法で、今度は巨大な岩石を船の真上に出現させる。
そしてそれを船にぶつけ、船体を真っ二つにへし折る。
大量の海水が流れ込んできたこの船が沈没するのも、時間の問題だった。
船が沈没する前に、私はこの船から離れ別の船へと移動する。
その途中、アルス君がいる方へと目を向ける。
彼がいる方からは、無数の稲妻が船から迸り、空を焦がすほどの勢いのある火柱が立ち昇っていた。
あとなんか、触手みたいなモノが見えるけど、きっと気のせい……たぶん。
そんなことを思いながら、私は新たな標的となった船に着地した―――。
◇◇◇◇◇
別の船へと飛翔する途中、海中から面白い反応を三つ捉えたので、その魔物達と仮契約をする。
そしてすぐ近くにいた船の真上までやって来て、甲板を《ギガアイス》で覆う。
すると氷の膜の向こうから、敵兵達が何か騒いでいる様子が窺えた。
別に彼らを無傷で捕らえようなどとは思っていない。
ただ、彼らには特大の恐怖を味わってもらう。
「やれ」
僕がそう一言命じると、その船の周りから無数の触手が伸びてきた。
そしてそれらは船をがっちりとホールドすると、海中へと引きずり込んでいった。
最後に見えた甲板の様子は、敵兵達の顔は皆恐怖に染まっていた。
彼らには氷の膜か、はたまた船が壊れるまでの間、海中散歩を楽しんでもらうとしよう。
もっとも、そんな余裕は彼らにはないようだけど……。
僕が仮契約をしたのはクラーケンという巨大なイカの魔物で、この魔物達は基本的に海の深い所に棲息している。
そしてクラーケンは、捕まえた獲物は自分の縄張りへと引きずり込むという特性があった。
例えばそう、今僕の目の前で起こっていることがソレだ。
船体が海の中へと消えたことを確認した僕は、別の船へと飛翔して行く。
クラーケンはあと二体いるし、まだまだ楽しめそうだった―――。
海と言えばイカ(←?)、イカと言えばクラーケン(←??)。
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