第20話:連続失踪事件 その4
前回のあらすじ
令嬢の友人登場
※一部修正しました(2020/11/29)
落ち着いた雰囲気の喫茶店に入り、席に着く。
窓際に僕が、その隣にヨーコ、僕の向かい側にミラ、その隣にエリザがそれぞれ座る。
飲み物を注文し、運ばれてきた頃合いを見計らって、僕達は話し始める。
「それでエリザさん、進捗は如何ですか?」
「何の進展もなし。被害者がどこに行ってしまったのかも、もしくは誰かに連れ去られたのかも、全く皆目見当もついてないわ。それで、そっちはどう?」
「こちらも同じような状況です。新しい情報としては、ここにくる前に、また新たに一人行方不明者が出てしまったという情報を得たことくらいです」
「そう。……それで、貴方は何か意見とかある?」
エリザが僕に話を振る。
「そうだなぁ……。被害者が現れる周期とかってないの?」
「今のところないわね。三日連続で出ることもあれば、一週間以上現れないこともあるの」
「それじゃあ、被害者同士の関係とかは?」
「それも無関係なのよ。完全にランダムなのよね」
「もし被害者が捕らえられているとしたら、その人達は今どこに?」
「その可能性も考えて怪しい場所は探したけど、全てハズレだったわ」
そこでヨーコが口を挟む。
「じゃあさ、その人達が領主に何か不満や恨みを持っていたとかは?」
「……何故、そう考えたのですか?」
ヨーコのその突拍子のない言葉に、ミラが面食らいながら尋ねる。
「いや、まあ……領主に怨恨を抱いていた人を、善意で排除した人でもいたのかなぁって思って。自分でも突拍子もないと思ってるから、聞かなかったことにして」
「……いえ、その考え方は悪くないと思います」
ヨーコの答えにミラはしばし考えこみ、そう結論づける。
そして僕達は、今までの被害者の情報を調べ直すためにエリザと別れ、屋敷に戻っていった―――。
◇◇◇◇◇
屋敷に戻り、手分けして情報を調べ直した。
だが、ヨーコが言ったように領主に怨恨を抱いている人もいたけど、逆に恩義を感じていたり、領主とは全く関係ない人もいた。
もし犯人がいるとしたら、ますますその目的が分からなくなってきた。
調査は再び振り出しに戻った―――。
◇◇◇◇◇
僕とヨーコが事件解決のための協力者になってから、三ヶ月が経過した。
事件の調査は何の進展もなく、被害者は増える一方だった。
エリザとも度々顔を合わせ、情報を共有していたけど、事態は好転しなかった。
今日はギルドでクエストを受け、町外れにある平原に来ていた。
ミラは当然のように僕とヨーコに同行している。
討伐対象は、二本の尾を持つサソリのような魔物のデュアルスコーピオン。
シッポの先端には大人でも悶えるほどの猛毒があるけど、当たらなければどうということはない。
そこさえ気を付けていれば、それほど討伐に苦労しない魔物だった。
魔物がいないか探していると、遠くに何かあることに気付いた。
違和感を覚えつつ、僕は気になってミラに尋ねた。
「ねえ、ミラ。あそこにあるのって何?」
「あそこに? ……ああ、あれは前領主の屋敷です。今は廃墟になっていて誰も近づかない場所です」
「そうか……」
ミラの答えを聞き、僕は再度その廃墟を眺めるが、何故か違和感を拭えなかった。
そしてその時、討伐対象であるデュアルスコーピオンが現れ、僕は意識を切り替えて戦闘体勢をとる。
僕は鞘から剣を引き抜き、ミラはバレッタを鎌の姿に変化させる。
相手から二本の尾が放たれるが、それをヨーコが《エアロ》で軌道を反らす。
その隙に僕は接近する。
それを見たデュアルスコーピオンは後退しようとするけど、それより先にミラが《ブラッディソーン》を発動し、足止めをする。
後退できないことを悟ったデュアルスコーピオンは、再度尾を放つ。
一本は僕が弾き、もう一本はヨーコが《エアロ》で軌道を反らす。
僕はデュアルスコーピオンの尾を斬り落とす。
相手は暴れるが、僕達は攻撃の手を緩めずにトドメを刺しにいく。
僕とミラは斬撃を繰り出し、その後にヨーコが《メガファイア》を放ってデュアルスコーピオンの息の根を止める。
ヨーコとミラの協力もあり、デュアルスコーピオンは楽に討伐できた。
僕はもう一度廃墟の方を見やり、ギルドに報告しに町に戻っていった―――。
その後も調査を続けるが、手掛かりを得られないままさらに三ヶ月が過ぎた。
気付いたら、僕達がこの港町に来てから半年が経過していた。
そしてその時、事件が起きた―――。
《登場人物紹介④》
ミラ
本作品のヒロインその3。吸血族。18才(第20話現在)。巨乳。魔獣化した際は、コウモリのような翼が生える。
アルス達が訪れた港町を治める領主の娘。この町で発生した事件を解決するために、アルスと協力関係を結ぶ。
エリザは彼女の友人。
評価、ブックマークをしていただけると嬉しいです。




