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魔物使いの弟子  作者: 天利ミツキ
第一部
14/560

第14話:魔物騒動 その7

複数投稿の最後です




※一部修正しました(2020/11/29)

 

 ケルベロスと交戦を開始して、一時間が経過した。


 ヨーコの魔法を喰らい続け、ケルベロスにもダメージが蓄積されているようだった。

 だが、ヨーコも魔法を連発して魔力消費が激しいようで、肩で息をしている。

 僕はヨーコがダメージを受けないように庇いつつ隙を伺うが、攻めあぐねていた。


「はぁ……はぁ……。アルス、まだ……?」


 彼女の問い掛けに、僕は汗を拭いながら答える。


「次で決める。だから……もう少し頑張ってくれ」

「はぁ……はぁ……了解。それじゃあ、出し惜しみはしないわ」


 僕の提案に、彼女は了承する。


 すると彼女は魔獣化し、九つの尾を持つキツネの姿へと変化してケルベロスを睨み付ける。

 彼女の九つの尾にはそれぞれ赤、緑、茶、青、紫、橙、白、黒、灰色のラインが一筋走っていた。


 僕は彼女の頑張りに報いるためにも、次で決める覚悟をする。


 ケルベロスが突進してきて、僕達はそれを避ける。

 そしてケルベロスの右側に避けたヨーコが、灰色のラインが走っている尾以外の尾を淡く輝かせ、魔法を発動させる。


「《マルチショット》!」


 全属性の初級魔法を発動させ、魔法のつぶてをケルベロスに浴びせる。

 ヨーコの魔法をモロにくらったケルベロスは、動きを止める。


 ……今ッ!


 僕はこの好機を見逃さず、左側から接近する。

 そして手にしていた長剣を逆手に持ち、ケルベロスの左前足を地面に縫い止めるように刺す。


 ケルベロスは叫び声を上げるが、僕は攻撃の手を緩めずに両手を胴体に突き刺す。


 ズブリ、と生暖かい感触に生理的嫌悪感をおぼえながらも、最後の攻撃をする。


 ……本当はこんなことをしなくても出来たが、確実に仕留めるためにはこうするしかなかった。


 僕は両手を突き刺したまま、この世界で僕を含め三人しか使い手がいない雷属性超級魔法・・・・・・・を、全魔力を込めて放つ。


「――《ボルテクスバースト》!!」


 とてつもない威力の雷撃を体内に直接喰らい、ケルベロスは身を踊らせる。

 その拍子に剣が引き抜けるが、僕は構わずに続ける。


 魔法の発動が終わると、ケルベロスは三つの口から黒煙を吐き、そのままピクリとも動かなくなった。


 僕は両手を引き抜き数歩後退りすると、ケルベロスはゆっくりと地面に倒れた。

 その様子を見て緊張の糸がほどけたのか、急激に魔力を消費した僕は、地面に倒れ込みつつ意識を手放した―――。




 ◇◇◇◇◇




 後頭部に、柔らかくて温かいものが当てられている。

 その感触に心地よさを感じながらも、僕はゆっくりと瞼を持ち上げる。


 すると、魔獣化を解除し人型の姿に戻っていたヨーコが、僕の顔を覗きこんでいた。


 ……どうやら、彼女に膝枕をされていたらしい。


 僕が体を起こそうとすると、彼女は僕の体を押さえつけた。

 渋々彼女の太腿に頭を戻しながら、辺りを見渡した。

 太陽は沈みかけ、辺りは暗くなり始めていた。


 ……どうやら、半日近く気を失っていたらしい。


 ボーッとする頭でそんな事を考える僕に、ヨーコが話しかける。


「やっと起きた?」

「うん……。どうなった?」


 要領を得ない僕の質問に、ヨーコは答える。


「ケルベロスは倒したわよ。アンタの超級魔法で」

「そうか……。それで、何でこんな状態に?」


 僕が疑問に思っていると、彼女は当たり前だというような顔で答えた。


「怪我人を放っておけないでしょ? それに、あんな大きい荷物、運びたくないもの」


 彼女はケルベロスの死体に目を向け、僕もつられて目を向ける。

 それに、と彼女は続ける。


「日没まで戻らなければ、アインさんって人が捜索隊を組んでここに来るでしょう? だから彼らにアレを運んでもらおうと思って、日没まで待ってたって訳」

「そう……」


 彼女の言い分に、僕は苦笑いする。

 彼女が言った通り、僕はギルドを出る前にアインさんにそうお願いをしていた。


「それじゃあ、アインさん達が来るまで休んでいようか」

「そうね、そうしましょう」


 僕の提案に、ヨーコが頷き肯定する。

 僕はヨーコに膝枕されたまま、体を休めていた―――。




 ◇◇◇◇◇




 しばらくそうしていると、町の方向から松明の明かりが近付いてきているのが見えた。

 僕はそろそろ体を起こそうとすると、またもやヨーコに体を押さえつけられた。

 僕は彼女に疑問をぶつける。


「……何で?」

「まだ本調子じゃないでしょ? 彼らが来るまでこうしていなさい」

「誤解されるんだけど?」

「誤解されて困るような人でもいるの?」

「ああ、いや、その……」

「フフッ」


 僕がしどろもどろに答えていると、ヨーコは微笑んだ。




 その後、捜索隊を引き連れたアインさんに発見され、案の定彼にからかわれた。

 そして僕とヨーコは満身創痍になりながらも、町に戻っていった―――。






次で一応一区切りになります。




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