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魔物使いの弟子  作者: 天利ミツキ
第一部
11/560

第11話:魔物騒動 その4

複数投稿の2話目です




※一部修正しました(2020/11/29)

 

 翌日。

 僕は日課となっている朝の鍛練を終えると、家に戻り汗を流す。

 そしてリビングに向かうと、そこには朝食の準備をしているアルマさんがいた。


「おはようございます、アルマさん」

「おはよう、アルス君」


 お互いに朝の挨拶を交わす。

 そして僕は周りを見渡し、いつもはいる人物がいないのと、昨日増えた住人が見当たらないので、アルマさんに問いかける。


「アルマさん、パウリナ達はまだ起きてないんですか?」

「そうなのよ。アルス君、悪いけど、パウリナとヨーコちゃんを起こしてきてくれる? そろそろ朝ごはんが出来上がるから」

「わかりました」


 アルマさんに頼まれ、僕はリビングを出て二階に向かった―――。




 ◇◇◇◇◇




 二階に上がり、向かって右側が僕の部屋と書斎、左側がヨーコの部屋になるはずだった客室とパウリナの部屋がある。

 廊下の突き当たりには、デルさん夫妻の寝室がある。


 僕はパウリナの部屋の前で立ち止まり、軽くノックする。

 反応がないので部屋の中に入り、ベッドの側まで歩み寄る。

 ヨーコとパウリナは、手を繋ぎながら規則正しい寝息を立てていた。


 ヨーコは当初、個室を与えられていたが、本人とパウリナが一緒の部屋でいいと言ったので、この状況も別段驚きはしない。


 その仲睦まじい様子に頬を緩めながらも、二人を起こすために体を揺する。


「二人共、朝だぞ。起きろ〜」

「んぅ……」

「すぅ……」

「いい加減に……起き、ろ! ……って…………、っ!?」


 揺すっても起きないので、僕は実力行使ー布団を剥ぎ取った。

 そして二人の格好に、僕は目を見開いた。


 二人共、寝間着がはだけていて、下着や乙女の柔肌があらわになっていた。


 僕は顔が赤くなっているのを自覚しながら、見なかったことにしようとしてそっと布団を掛け直した。

 そして物音を一切立てずに部屋を後にしようとした時、後ろから服の裾を掴まれた。


 僕はゆっくり振り向くと、顔を真っ赤にしたヨーコとパウリナがいた。

 二人共片手で胸元を押さえながら、上目遣いで僕を見ている。


 するとパウリナが聞いてくる。


「…………見た?」

「………………見ました」


 しらばっくれようとしたけど、二人の雰囲気がそれを許さなかったので、正直に答えた。


「「……っ!!!」」

「ゴメン!!」


 僕の答えに二人は驚き、裾から手が離れた。

 その隙に僕は謝りつつ、脱兎のごとく部屋から出た―――。




 ◇◇◇◇◇




「どういう寝方をしたらあんな風になるんだよ?」

「「さぁ?」」


 僕はトーストをかじりながら、対面に並んで座っている二人に朝の出来事について質問すると、二人は声を揃えて答えた。


 ……本当に仲いいな、この二人。昨日出会ったばかりだよな?


 僕が頭の片隅でそんな事を考えていると、サラダを食べていたパウリナが頬を染めながら言った。


「わたしだって起きるまで気付かなかったもん。それに、勝手に見たのはそっちでしょ」

「それは……ゴメン。でも、パウリナが寝坊なんて珍しいね? 何かあったの?」


 僕は下手な言い訳はせずに素直に謝り、質問を重ねる。

 すると、オムレツを食べていたヨーコが代わりに答えた。


「昨日は夜遅くまでお喋りしてたからかも。パウリナとのお喋りがすごく楽しかったから夜更かししちゃった。……ゴメンね、パウリナ」


 ヨーコはパウリナに向き合い、そう謝罪する。

 するとパウリナは、慌てたように手を振る。


「そんな事ないよ! わたしもヨーコちゃんとお喋りするの楽しかったもん!」

「パウリナ!」

「ヨーコちゃん!」


 二人は感極まったようにお互いに手を取り、見つめ合う。


 ……百合の花が咲き誇る幻覚を視た……気がした。




 ◇◇◇◇◇




 朝食を摂った後、僕とヨーコは冒険者ギルドに向かって行った。


 昨日話していた時にわかったことだけど、ヨーコは冒険者登録をしていないらしい。

 してなくても、魔物の素材買取をギルドはしてくれるし、パーティーも冒険者が一緒なら組める。

 だからヨーコは、登録する気はないと言っていた。


 それと、ヨーコとは一時的にパーティーを組むことにした。

 共に行動するには、そちらの方が都合がいいと思ったからだ。


 ギルドに着き、適当なクエストを受注する。

 お互いの連係を確認するためなので、それほど難易度は高くない。


 今回のクエストの内容は、ゴブリンの群れの討伐だ。

 ゴブリンは緑色の肌をした小型の魔物で、群れて行動するが攻撃力は低い。

 なので新人冒険者が好んで討伐したり、新しくパーティーを組んだ人達が、互いの連係を確認するための試金石にしたりしている。


 僕は、狼を一回り大きくした魔物のワイルドウルフと仮契約し、ゴブリンの群れがいる場所まで案内してもらう。




 ◇◇◇◇◇




「そこ!」


 僕はこちらに向かってきたゴブリンを、長剣を振り下ろして倒す。

 仮契約したワイルドウルフが円を描くように走り回り、僕が立っている場所に行くように行動を制限している。

 ヨーコは僕の後方に立ち、僕の脇をすり抜けた個体を魔法を使って迎撃している。


 最後の一匹を倒し仮契約を解除すると、ワイルドウルフは元の棲みかに戻って行った。

 僕はヨーコに尋ねた。


「どうだった、僕との連係は?」

「まあ、悪くないんじゃない? いくつかクエストをこなせば、もっと上手く連係できると思う」


 そう答える彼女と共に、町に戻った。




 そしていくつかのクエストをこなし、食堂の手伝いをしながら、一ヶ月が過ぎた―――。






《登場人物紹介②》

パウリナ

本作品のヒロインその1。人間族。16才(第10話現在)。着痩せするタイプ。両親が経営する食堂を手伝っている。この食堂の看板娘。

アルスとは10才の時に、ソラが彼を連れて食堂に来た時に知り合った。それ以降、友人関係になる。

ソラの性別は、彼女と初めて会った時に見抜いていた。

アルスに淡い恋心を抱いている。

ヨーコとは意気投合し、大親友になる。




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