表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔物使いの弟子  作者: 天利ミツキ
第一部
10/560

第10話:魔物騒動 その3

本日も複数投稿、出来たらいいな




※一部修正しました(2020/11/29)

 

 まだ開店前だったのか、お客さんは誰もいなかった。僕にとっては好都合だ。


 僕達は席に着くと、パウリナの母親であるアルマさんがお茶を運んできてくれた。

 僕はお礼を言い、お茶を一口飲んでからパウリナに改めて説明する。


「パウリナ、彼女はヨーコ。最近あった魔物騒動の犯人で、僕はお目付け役としてしばらく行動を共にすることになった」

「ふ〜ん……。またギルドに任されたの?」

「まあ、そういうこと」


 パウリナは納得した様子で頷くと、ヨーコの方へ顔を向けた。


「はじめまして、わたしはパウリナ。両親と一緒にこの食堂を営んでいるわ。これからよろしくね、ヨーコちゃん」


 そう言って彼女はヨーコに向かって、手を差し出した。

 ヨーコはその手を握り返しながら言う。


「はじめまして、あたしはヨーコ。妖族よ。こちらこそよろしく、パウリナ」

「え? ヨーコちゃんって、妖族なの?」

「ええ、そうよ」

「獣人族に見えるけど、違うの?」

「魔獣化したらわかるけど、後で見せてあげるわ」


 パウリナの素朴な問いに、ヨーコは答える。

 この辺りじゃ見ない種族だから、パウリナの疑問はもっともだ。


 それに今の彼女の姿は、獣耳にシッポが一本だから、そう思ってしまっても無理はない。

 二人は手を放し、ヨーコはこちらに目を向ける。


「ところで……さっきナナリーさんが言いかけてたことの説明だけど、ちゃんとしてくれるのよね?」

「ああ、話すよ」


 するとそこに、パウリナの父親のデルさんが、焼き菓子が盛られた皿を持ってきた。

 僕はそれをつまみながら説明する。


「ヨーコ、君は『魔王』を知ってる?」

「? 何よ突然? 当然知ってるわよ。『四天王』の一人にして、魔物使い達の頂点。それに数々の逸話があるから、生ける伝説とまで呼ばれた御方でしょ?」


 ヨーコは疑問符を浮かべながらも、そう答えた。

 その答えに頷きながら、僕は続ける。


「そう。……で、彼女には弟子がいた。その弟子というのが―――」

「ここにいるアルスなのよ」

「へぇ〜、そうなの。…………え? 本当に??」


 パウリナが割り込んでヨーコに告げた。


 彼女は驚いた様子でこちらを見る。

 そんな彼女を見ながら、パウリナが僕の説明を引き継ぐ。


「本当よ。アルスには、『魔王の弟子』という肩書きがあるの。だからギルドからの信頼度が高いの。解った?」

「……まあ、なんとなくは」


 彼女は未だに困惑しながらも、理解したように頷いた。


 ……人前でその肩書きを言われるのに、まだ慣れないな。


 そう思いながら、僕はこの話題を切り上げた―――。




 ◇◇◇◇◇




 その後食堂が開店時間を迎えた後も、僕達は他愛ない話をしていた。

 まだ客足がまばらだから、パウリナは休憩しててもいいらしい。


 するとアルマさんがやってきて、パウリナに話しかける。


「パウリナ。食材が少し足りなくなってきたから、買い出しに行って来てくれない?」


 そう言いながら、パウリナにメモを渡す。

 パウリナはそれを受け取ると席から立ち上がる。


「わかったわ。それじゃあ、行って来るわね」

「……待って。あたしも手伝うわ」

「ありがとう、ヨーコちゃん」


 ヨーコは立ち上がりそう申し出た。

 パウリナはその申し出に感謝し、二人で買い出しに出掛けて行った。


 僕はテーブルの上の食器を片付け、食堂の手伝いをすることにした―――。




 ◇◇◇◇◇




 買い出しから戻ってきた二人は、まるで十年来の親友のような雰囲気を醸し出し、仲良くなっていた。

 そしてパウリナは両親に提案する。


「お父さん、お母さん。ヨーコちゃんをウチに住まわせてもいいかな?」

「あたしからも、お願いします」

「お願い。お父さん、お母さん」


 二人揃って頭を下げる。


 ……買い出し中に何があった?


 困惑する僕を他所に、デルさんとアルマさんは相談する。


「俺はいいけどよ、オマエはどうだ?」

「賑やかになるのはいいことだし、いいんじゃない?」


 彼らの肯定の言葉を聞き、二人は顔を上げる。


「よかったね、ヨーコちゃん!」

「ありがとう、パウリナ!」


 二人は手を取り合い、満面の笑みを浮かべながらはしゃぐ。


 ……本当に、何があった?




 ◇◇◇◇◇




 その日の夜。

 あたしはパウリナと一緒にお風呂に入っていた。


 日中色んな事を話している内に、パウリナと仲良くなり友達になった。

 あたしには同年代の友達がいなかったから、新鮮な気持ちだ。

 それに、この家に住まわせてもらうことになったのも感謝してる。


 お互いの体を洗いあい、一緒に湯船に浸かりながら、あたしは隣のパウリナを見る。

 日中は服を着ていたからわからなかったけど、パウリナは着痩せするタイプらしい。

 あたしは自分の慎ましやかな胸元を見て、パウリナの平均よりやや大きい胸元を見ながら、アルスの前ではしなかった質問をする。


「ねぇ、パウリナ」

「ん〜?」

「パウリナって、アルスのことが好きなの?」


 するとパウリナは、見るからに動揺した。


「な!? なななな、何を言ってるの!? そ、そそそそ、そんな訳ないじゃない!?」

「ホント〜?」

「ほ、本当よ!?」

「それじゃあ……」


 そう言ってあたしは、パウリナの双丘を揉みしだく。

 パウリナはくすぐったそうに身を捩る。


「ちょっ!? ヨーコちゃん、くすぐったいよ!」

「言え〜、白状しろ〜」


 あたし達は、湯船の中ではしゃぐ。


 お風呂を出て部屋に戻った後でも、あたしはパウリナをからかい続けた。

 そして夜が更けていき、あたしはパウリナと同じベッドで眠りに就いた―――。






《登場人物紹介①》

アルス

本作品の主人公。人間族。16才(第10話現在)。ジョブ:魔物使い。武器:長剣。

故郷を滅ぼされ、瓦礫の下敷きになっていたところをソラに救助される。そして彼女に弟子入りする。

世間一般では、『魔王の弟子』と呼ばれることが多い。

ソラには師弟愛と、親子愛に似た感情を抱いている。

パウリナとは初めて食堂で出会って以降、友人関係となる。無自覚だが、彼女に好意を抱いている。




評価、ブックマークをしていただけると嬉しいです。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ