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大きな丸いもの

作者: 神名代洸

僕は怖い物がダメだ。

だから遊園地のお化け屋敷などは入らない。というか入れない。

それなのに友達はわかってて僕を誘う。

やな奴らだよ。ったく!

でもさ、それについてかないと仲間に入れてくれないって言うからさ、…やるしか無いじゃん。


勢いをつけて僕はダチと一緒にやってきた。そこは怖いと噂のある視覚を遮ったお化け屋敷で、そこへ足を踏み入れた。

正直やめたかった。

でもさ、誰もこのお化け屋敷が怖いなんて言わない。

だから僕一人がワーワー言っても誰も聞いてはくれなかった。

それがまさかこんな事になるなんて…。




今足元に転がるこれは何だ?

視覚を遮られてる為何なのかはわからない。取ったらどうかとダチに言ったら「怖さが半減してつまんねー。」なんて言い出す始末。

どうなったって知らねーからな!って言ってその場を立ち去ればよかったのだが、何かに前を遮られその場から動けなかった。


気になっていたそれに近づいていく。

暗闇の中の為それがなんなのかははっきりとはしない。

ダチたちは、置物か何かと思ったらしい。取ってみろよという。

簡単なわけないじゃん。

ゴーグル越しに見えてるのはモサモサした何かだった。

「え〜、マジかよ。何なんだよ。これ…。」


片側はモサモサしてる。じゃあ反対は?

……これ何だ?

ツルツルしてる。というか粘り気があるなぁ。

匂いを嗅いでみたら…何か嗅いだ事がある臭いだ。

これは…これは…、血だ!血の匂いだ!

じゃあこれは何?

僕はその場でゴーグルを外してしまう。

するとそこにあったのは、人の生首だった。思わず叫んだ。まさか本物があるなんて思いもしなかったからだ。マジかよと思いつつも、仲間に伝える。



初めは冗談だと思っていたダチも、ゴーグルを外してみた時表情が固まった。

どうやらようやく理解したらしい。


「どうすんだよ。俺らが見つけたなんて言ったら事情説明聞かれるぜ!絶対。」

「え〜、俺やだよそんなの。」

「俺もだよ!ならさ、他の奴らに見つけてもらおうぜ。」

「おま、お前ら怖くないのかよ!生首だよ?マジもんじゃん。警察に…あっ、係員に通報しなきゃ。」

僕は仲間達がワーワー言っているのを無視して非常出口から出て係員に連絡を入れた。

係員は信じていなかった。

だってお化け屋敷だよ?本物そっくりの人形かもしれないじゃんって思ってるかも。


急かして連れてきた。

仲間はまだそこにいた。

だからすぐにわかった。

係員の男性は懐中電灯をそれにあてた。その時になってようやくことの重大さに気がついたようで、大声で叫んだ。手に持っていたレシーバーで仲間にことを伝え、中に客が入らないように指示をする。そして警察に連絡を頼んでいた。

仲間は少しずつ足を後ろに下げていく。

逃げるためと気がついていたが、僕はここに残るつもりだったから放っておいた。



その後あれこれと事情を聞かれた僕は素直に答えた。だから解放されるのも早かった。

だって被害者に面識はなかったから。




それから数日後、ダチの一人が事故にあい亡くなった。

その翌日にはもう一人が首をつって自殺した。

もう一人のダチは怯えている。

いったいこの数日の間に何があったのか僕にはわからなかったからあの時一緒にいた逃げた三人のうちの最後の一人に話を聞きに行った。


「オレ、ヤバイよ。アイツらにも取り憑いてやがった。聞いたんだ。亡くなった奴に。生首が俺らを探してるって。何でだよ!オレら何もしてないじゃん。何で…なんでこんなことになるんだよ。わかんねーよ。」

僕はどう言ったらいいのかわからなかった。多分…。

「下半身を見つけて欲しかったんじゃないのかなぁ〜。あの時逃げたじゃないか。だから自分を殺したやつだと思ったんじゃないのか?そもそも亡くなった人が犯人の顔を見てなかったとしたら??」

「そ、そんな…じゃあどうしたら?」

「一緒に犯人を探そう。そして警察に言うんだ。この人が犯人ですーってさ。」

「それは警察の仕事じゃ?」

「でもそれでいいの?生首がくるよ?そしたらどうなる?」

怯えるダチをなだめて僕らは2人で犯人探しを始めた。だけどど素人なので何をどう探したらいいのかわからず途方に暮れていた。

そこに警官が2人やって来た。どうやらどこかで聞き込みをしていた時に僕らのことを知ったらしい。


仕方がないのでこれまでの事を警官に話す事にした。

すると警官は真剣な顔で聞いてくれ、聞き終わった後に再度念をと写真を見せた。そう、亡くなった人の顔写真だ。

だけどダチも僕も知らない人だったので、一言「知らない人です。」と言うしかなかった。


「分かった。君たちの家の見回りをしよう。何かあったら叫んでくれ。そしたらすぐに助けてあげられる。」「う、うん。」「分かりました。ありがとうございます。僕は信じてもらえないとばかり思ってました。」

「う〜ん、正直な所は半分信じてないってことかな。でも私も霊の存在は信じてるんだよ。だからかな。」

「お巡りさん、首から下は見つかったの?」

「いや、まだ見つかったと言う報告は来てないよ。」

「巡査、良いんですか?民間人に教えちゃって。」

「まぁ良くはないだろうな。だからここだけの話ということで宜しく頼むよ。」

「仕方ないですね〜。今回だけですよ?」

「ああ、有能な部下を持って助かるよ。」

「おだてても何も出ませんよ。」

「はっはっはっ。」


【大丈夫かなぁ?】


不安になる僕らだった。でもすがるしかなかった。何せ狙われてるのだから。

この日はありがたい事に土曜だった。

だからなんとか親を丸め込んでダチが僕のところにやってきた。警官にも言われていたからだ。別々の場所にいるよりもかたまっていた方が警護しやすいと。


今夜は徹夜をしようと話し合って懐中電灯やお守りを手に肩を寄せ合っていた。




バチッバチッと突然部屋の明かりが消えた。

慌てて僕らは用意していた蝋燭に火をつけて部屋を明るくした。あちこちに置いてあるから昼間のように明るい。

それでも蝋燭の炎は揺れていた。まるで今にも消えそうなほどに…。、二人ともガタガタと震えており、とても叫べる状態ではなかった。

それでも冷静に対応できたのは僕の方だった。


懐中電灯であちこち照らすと、空中でゆらゆらとゆれる何かを見つけてしまったのは。僕もそれには驚いて大声で叫んでしまった。

そこに叫びを聞きつけてやってきた警官が二人で走ってきた。


「何だ?どうした?」

僕らは言葉を発することができず、ただ指先をそちらに向けるだけだった。その方角を見た警官は真っ青な顔をしていたに違いない。だって首だけの霊が出たんだよ?怖いじゃん。警官だって人間だからね。怖がる人だっているはずだ。

だけど僕らが助けを求めた警官は怯えることなく霊に向かって歩き出していた。

「あ、危ないよ〜。近寄ったらまずいって!」

僕らは小声で警官の一人に話しかける。


「あなたの体はまだ見つかってません。貴女は彼らにどうして欲しかったんですか?全く知らない人間に。貴女の体は我々警官が必ず見つけます。あなたを殺した犯人も捕まえます。だから…。」そこまで言っていたら首だけの霊はその場から消えた。通じたのか?


「さぁ、もうきっと大丈夫だと思いますが、これを持ってなさい。」そう言って渡されたのは御守りだった。「あ、ありがとうございます。僕らは今日はこのままここにいます。お巡りさん、早く犯人捕まえてくださいね。あいつらも成仏できなくなっちまう。」そう、亡くなった二人のことを言っているのだ。

「ああ、分かってるよ。おじさんたちが必ず捕まえて体も見つけるよ。じゃあな。」

そう言って警官二人は去っていった。





それから数日後、新聞の一覧の小さなスペースに記事が載っていた。首だけの遺体の身元が判明し、犯人も捕まった事。体は山に埋めたと供述していると言うことだった。ずっと隠れていたのだが、ある日の夜、彼女の事を思い出していた。別れる別れないで揉めて殺してしまった事。罪悪感で部屋から一歩も出られなかったことも話していた。

彼女の顔が頭から離れず、怖かったと言っていたそうだ。投降する前日の夜に彼女の首だけが現れ、半狂乱になってようやく終わらせたいと思ったと言っていた。




僕らの恐怖体験はこれ以降起こることはなくなっていた。彼女も成仏できたに違いない。亡くなった二人のダチも成仏してくれるように祈った。







残った最後の一人と携帯で写真を撮った。

なぜ撮ったのかは分からない。ななげに撮っただけで意味はないのだ。だけど僕らは気付いてなかった。ダチの肩に二人分の手が写り込んでいる事を。

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