振られ男の始まり
初投稿です。どうか許したってください。
「ごめんなさい、私、好きな人がいるの……」
少女はそういうと、走り去っていった。
後に残された少年はそれを呆然と見届けると、静かに座り込んだ。
「まじかー……」
少年の名前は日野 雄太
元々、少女とは幼馴染で、小さい頃からよく遊ぶ仲だった。
いつもは髪を整える事もせず、服にも無頓着だが、今日という日を迎えるにあたって、美容院で髪を整え、服もオシャレな知人に見繕ってもらい、文学部の先輩とラブレターの文面を考え、満を持して告白をした。
しかし、返ってきたのは拒絶の言葉……。
「明日からどんな顔して会えば良いんだよ……」
幼馴染であり、クラスメイトでもある彼女ーー澤野 茜とは嫌でも明日も顔を合わせる事になる。
明日以降の憂鬱を想像し、深いため息をついた。
正直なところ、振られるとは思っていなかった。
小学生の頃からいつも少女は少年の後ろをついてきていたし、思春期にありがちな異性を意識して冷たい態度を取るような事も無かった。
高校生になる頃には周りからもお似合いカップルなんてからかわれる事もあったが、彼女も特に否定する訳でも無く、ただ顔を赤らめるだけであった。
来年、受験を控えている年頃の少年としては忙しくなる前にそろそろ幼馴染から一歩進んだ関係になりたいと思うのは自然であると言えよう。
しかし、少年の知らないところで最愛の幼馴染の心は誰かに奪われてしまっていたのである。
とはいえ、いつまでも打ちひしがれて座り込んでいる訳にはいかない。少年は立ち上がるとズボンについた土を払い、帰路についた。
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いつもは彼女と歩く道が今日は一人のせいかやけに長く感じる。
普段、彼女と話すのに夢中で気付かなかったが、学校から家までは結構距離があったらしい。
その長い時間を少年は自己嫌悪と後悔でいっぱいになりながら歩いていた。
もしかしたら、彼女は何も言わなかったが、一緒に帰るのも嫌だったのかも知れない。
もしかしたら、周囲にカップルだと冷やかされるのも酷く苦痛だったのかも知れない。
そんな考えばかりが頭に浮かんだ。
明日以降、登校する時も一人でこの長い道のりを歩く事になるのだろう。
こんな事なら告白などしなければ良かった。
明日顔合わせたら気まずいなぁなどと勝手に告白しておいて自分の事しか考えていない事にまた自己嫌悪を繰り返す。
そんなループも4週目に入る頃、やっと自宅に着いたのであった。